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Data.24 VS.ドラゴンゾンビ

 時間的にも回復アイテム的にも猶予はない。

 雷の守護者が与えてくれた雷の輝きにも少しずつ(かげ)りが見え始め、薬草の数もかなり減った。

 雑魚もどんどん迫ってくるし、危険な状況ね……。


 確実に頭部を破壊できそうな【猛牛(ブル)ブーメラン】のリキャストには3分かかる。

 しかし、3分持たせるのもキツそうだし他の方法で倒したいところね。

 さて、まずはドラゴンゾンビの動きを見極めて攻撃タイミングを掴もう。


「ググ……グオァァァァァァ!!」


 ドラゴンゾンビは動いた。

 大きな口を開け、そこから強烈な瘴気を噴射してきた。


塵旋風(ジンセンプウ)!」


 その瘴気を遮る様に正面に旋風を発生させる。

 渦巻く風は瘴気を巻き取り、さらに巨大化する。


「これはっ……なかなか強烈ね……!」


 流石ネームドボスだ。

 瘴気噴射の勢いで旋風が崩壊しかけた。


「でも、なんとか……なった!」


 ドラゴンゾンビの瘴気噴射が終わると同時に、私も旋風の軌道を変え、周りに群がる雑魚ゾンビ共を薙ぎ払う。

 瘴気旋風をドラゴンゾンビ自体にぶつけても大したダメージにならなそうだから、せめて雑魚を蹴散らして戦いに集中できるようにしないと!


「聖矢の高速連続射撃(ガトリングショット)!!」


 私が敵の攻撃と雑魚を抑えている間に、アチルも最大威力のスキルを放つ。

 白く光り輝く矢が左手に装填され、どんどん発射されていく。

 狙いはドラゴンゾンビの巨大な左目周辺。

 標的の動きが鈍いこともあり、撃ち出された矢はザクザクと命中している。


「グオッ……ググオォォォーーーーッ!!」


 痛みにもだえ苦しむドラゴンゾンビは、その痛みを生み出すアチルを標的にしたようだ。

 大きな右腕を振って、その爪でアチルを引き裂こうとする。


「ハッ!」


 アチルは素早くそれに反応し、後ろに跳び下がる。

 これでドラゴンゾンビの手は届かない……はずだった。


 ブチッ……ブチブチ……グチ……


 何かが千切れる音。肉の繊維……?

 それはドラゴンゾンビの右腕だった。

 先ほどまであったはずの物が、肩のあたりから無くなっている。


 ズシッッ!


 千切れ飛んだ腕は数メートル先のやせ細った木にぶつかった。

 腕と木の間からは三つ編みにされた髪が見える。


「アチル!」


 腕が千切れたせいで攻撃の軌道が変わり、避けきれなかったみたい。

 そのうえ、聖矢と高速連続射撃(ガトリングショット)を同時使用したせいで魔力も切れていた。

 だから、飛んでくる腕を攻撃して勢いを軽減することも出来なかった。

 早く無事を確認しないと!


「ググオォォォーーーーッ!!」


 アチルのもとへ駆けだそうとする私にドラゴンゾンビの左腕が迫る。

 やはり体へのダメージは相当なようで、こちらの腕も嫌な音を立てて千切れ飛ぶ。


聖属性付与(エンチャントホーリー)! ブーメ乱舞(ランブ)!」


 私は飛んできた腕に向けてスキルを発動する。

 舞う様に振るわれた聖なる斬撃により、邪悪な竜の腕はバラバラになった。


「グガァァァーーーーッ!!!」


 両腕を潰して安心する間もなく、ドラゴンゾンビがその牙で私を噛み砕こうと突撃してきた。

 ボロボロの翼と残った脚の力で、なかなか勢いのある突進になっている。

 これを避けながらアチルのもとに近づいても、彼女ごと食われるのがオチだ。


「……不本意だけど、先にこいつを倒してからアチルを助けた方が良さそうね」


 【猛牛(ブル)ブーメラン】のリキャストはもうじき終わる。

 しかし、心配なのは上手く頭部にクリーンヒットさせられるかだ。

 ドラゴンゾンビは巨大な両腕を切り離し、体を軽くしたことでスピードや飛行高度を上げてきている。

 次の一撃を外したら、また次の3分間を耐えられる気はしない。


「なにか……確実に仕留める方法は……」


 そんな方法はどこにも書いていない。

 自分で考えないといけないんだ……。

 そう思っていた時、脳内に声が響いた。

 これは……システムボイス?


 ――SES! SES! SES!

 ――スキルを次なる段階へ進化させる可能性を確認!

 ――Skill Evolution Systemを起動させますか?


 す、Skill(スキル) Evolution(エヴォリューション) System(システム)!?

 私は攻撃を避け、群がるゾンビを狩りながら驚愕する。

 よ、要するに強くなれるって事よね?

 なら拒む理由はないというか、今は悩んでる場合じゃない!


「システム起動!」


 ――SES認証!

 ――Skill Evolution System起動!

 ――【ブーメラン術】を次なる段階へ!


 ――SKILL EVOLUTION!


 ――進化(エヴォル)スキル【(シン)回帰刃(ブーメラン)術】EVOLv1:発現!


 まさか【ブーメラン術】が進化するなんて……。

 任意スキルの方が進化すると思ってたわ。

 この状況で基礎的な武器スキルを底上げされてもどうすればいいのかわからない……。


 それに『回帰する刃』でブーメランと読ませるのね。

 ……これは嫌いじゃないかな。

 もう一つ気になるのは『EVOLv』。

 進化した(エヴォル)スキルはレベル表記も通常スキルと違うって事かしら?


「……もしかしたら、ブーメランのスキル性能が全部底上げされてたり?」


 そうだとするならば、【猛牛(ブル)ブーメラン】の軌道を自在に操れたりするかも!

 もうそう思うしかない。


「でも怖いから十分に狙って……」


 私はドラゴンゾンビの突撃を避け、相手が体勢を立て直してる瞬間を狙って、リキャストを終えたばかりのスキルを放った。


猛牛(ブル)ブーメラン!」


 側面からの攻撃になるけど、狙いはもちろん頭!

 突撃する猛牛のスピードは確かに上がってるように見える。

 これは【(シン)回帰刃(ブーメラン)術】の効果が表れてるとみていいわね。


「グググ…………ッ!」


 ドラゴンゾンビは千切れんばかりに翼をはためかせ(わず)かに前進する。

 こうなるのは予想できていた。


猛牛(ブル)ブーメラン、曲がれぇ!」


 ……曲がらない!

 ブーメランはドラゴンゾンビの喉をかすめて、その半分ほどを消し飛ばしながら後ろに抜けていく。

 その際に他のゾンビたちを多数ぶった切ってから、手元まで戻ってきた。


(シン)回帰刃(ブーメラン)術のおかげで猛牛(ブル)ブーメランの威力や射程は確実に向上している。でも、スキルの性質である直進力は他のスキルでどうこう出来るものではないみたいね」


 冷静に分析しつつ、私は聖属性を纏わせたブーメランを普通に投げる。

 首の傷は深い。

 流石のドラゴンゾンビも頭と体が離れれば生きてはいられまい。

 今ならば通常攻撃でも切り離せる!


 グシャ!


 むっ、ビッグゾンビがブーメランの軌道に割って入ってきたせいで威力が減衰してしまった。運が悪いわね……。

 私は気を取り直してもう一度投げる。


 グシャ!


 またゾンビに軌道に割って入られた。

 それも何体にも!

 どうして急に……。


「ま、まさか!」


 ゾンビたちがドラゴンゾンビのもとに集結している!

 あいつ自身が【腐食再生】する気だ!

 味方を食らい、その魔石を糧に体を作り直している!


「何とか止めないと!」


 私は何回もブーメランを投げた。

 しかし、焼け石に水だ。

 こうなったら潔く退くか、また【猛牛(ブル)ブーメラン】のリキャストを待つか……。


「そうだ。今のうちにアチルを」


 ドラゴンゾンビの左腕の下敷きになっているアチルのもとに駆け寄り、その腕をどけた。


「良かった……。気を失ってるだけね」


 外傷はあまりない。

 盾を二つ装備して守備固めしておいて良かったわ。

 ただ気絶を回復させる手段がない。

 【回帰する生命ブーメラン・オブ・ライフ】はあくまで蘇生なんだ。

 こうなった背負って逃げようか……。


「ええーい! なんか回復魔法でも目覚めろ!」


 私はダメもとでブーメランを虚空へ投げた。

 と、思ったら【(シン)回帰刃(ブーメラン)術】で射程が伸びていたので、少し遠くを歩いていたゾンビに当たって倒してしまった。


 ――レベルアップ!


 今まではワクワクしていたレベルアップアナウンスも今は虚しいもんね……。


 ――スーパージョブへの転職条件を満たしました。

 ――『回帰刃狩人(ブーメランハンター)』にクラスチェンジしますか?


 いろいろ一気にくるわね。もう驚く体力もないわ。

 条件を満たしたって……なんだろう。

 進化(エヴォル)スキルの発現かな?

 でも、レベルが上がってからアナウンスが来たし……。


 ん、そういえば心当たりがもう一つある。

 ……やっぱり今の私30だ。もちろんレベルがね。

 おそらく一定レベルと進化(エヴォル)スキルがスーパージョブチェンジへの条件とみた。

 まあ、条件考察を今する必要はないか。


 それよりジョブチェンジには特典がある!

 ここで起死回生の何かが起こらなかったら、私はアチルを背負って逃げるからね!


「ジョブチェンジするわ! 頼んだわよ!」


 ――ジョブチェンジ認証完了!

 ――特典として『Skill Evolution System』を起動します!

 ――【猛牛(ブル)ブーメラン】を次なる段階へ!

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