Data.21 戦狩人とX射手と雷の守護者
休憩と掲示板での情報収集を終えた後、私は再び『フェアルード』の世界へ降り立った。
場所はもちろんイスエドの村。
村から西の方の空は相変わらず濃い紫色の雲に覆われている。
あの雲の下にドラゴンゾンビ……いや、名を冠するモンスター『【腐食再生】ドラゴンゾンビ』がいるはずだ。
腐食再生ねぇ……嫌な予感しかしない。
再生で粘ろうとしてくる奴と最近戦ったばかりだし。
でもドラゴンゾンビは死して蠢く者の洞窟から出てきた訳だからこの予感は当たるんだろうなぁ……。
「あっ、マココさん! 来てくれたんですね!」
左腕に新たなクロスボウを装備したアチルが近づいてきた。
新たなクロスボウは、私がさっきまで思い浮かべていた敵『腐り堕ちた聖賢者』が落とした武器『セイントクロスボウ』だ。
◆武器詳細
―――基本―――
名前:セイントクロスボウ
種類:クロスボウ
レア:☆30
所有:アチル
攻撃:38
耐久:32
―――技能―――
【聖矢】Lv5
【腐食耐性】Lv3
【猛毒耐性】Lv3
※残りスキルスロット:3
―――解説―――
十字架を模した形状の白銀のクロスボウ。
聖なる力を宿した矢を放ち、持ち主を邪悪なる力から守る。
攻守ともに素晴らしい武器であると同時に、デザインもカッコいい。
無機質で冷たい感じの銀と水色を基調にしつつ、その隙のない完成された造形は力強さを感じさせる。
今は『クロスガントレット』と合体しているので、ガントレットの方もどんな邪悪な力も握りつぶせてしまえそうな頑丈なデザインになっている。
あと【聖矢】のスキルも見逃せない。
◆スキル詳細
【聖矢】
装備者の魔力を消費して聖なる矢を生成する。
レベルが上がるほど、威力やアンデッド系へのダメージ倍率がアップする。
また、生成に消費する魔力がダウンする。
リキャストタイム:0秒
そう、これがアンデッド特効スキルを持つ武器だ。
腐矢と方向性は同じだけど、属性は正反対。
アチルは今、聖なる力と邪なる力を宿した武器を装備しているのだ。
「このセイントクロスボウがあれば、私の火力不足も解消できますよ。ただ少し生成に使う魔力が多いので、高速連続射撃で撃ち出せるかは不安です……」
「よーく狙って一体一体倒せば高速連続射撃を使わなくても問題ないわ。威力でカバーできるって」
私はアチルを精一杯励ます。
彼女遠距離攻撃力、目の良さ、戦闘センスは頼りにしている。
「お主たち、準備はできているか? ドラゴンゾンビ討伐は早いほど良い。だが、焦ってもいけないぞ」
ゆっくりとこちらに雷の守護者が近寄ってくる。
その巨体と頑丈さ、圧倒的な雷関係のスキルを持ち、更に高レベル。
しかし、脚が遅いという割と致命的になりかねない弱点も抱えている。
その弱点は魔石を消費することで一時的に克服できるようだ。
「腐り竜の渓谷までの高速移動に使う魔石、そこから更に戦闘に使う魔石も十分な量を確保できている。お主たちに感謝する。これならばこの村を囲う電磁包囲網を維持しつつ戦うことが出来そうだ」
雷の守護者はすっかり気に入った四つの大盾を掲げて言う。
彼(?)の電磁包囲網は敵の領域内で安全な場所を確保するのに絶対必要なスキルだ。
敵はおそらくドラゴンゾンビだけではない。
多くのアンデッドどもが腐り竜の渓谷に湧いている事だろう。
薬草を食べたり、スキルのリキャストを待つ隙を作るのはとても大事だ。
「私たちもタイリョク薬草とマリョク薬草をたくさん集めてきましたよ! これで準備は万端です! いくらでも戦い続けられます!」
「ふむ、心意気は良し。しかし、出来る限り素早く倒す事を心がけるのだ。それも一番の目標であるドラゴンゾンビをだ。いくら雑魚を倒したところで、根源を断たぬ限り終わりはない。ドラゴンゾンビさえ討伐出来れば、最悪一度村に退いても良いと考えておくのだ」
「えー、でもそれじゃあ渓谷を通れるようにはなりませんよ?」
「欲張るものではない。一番の目的を果たす事を優先するのだ。それほどドラゴンゾンビは危険だ」
「雷の守護者の言う通りよ、アチル。まずドラゴンゾンビを倒す。余裕があるなら雑魚も片付ける。無理なら逃げる。これくらいシンプルにいった方がいいわ」
「んー、マココさんがそう言うならそうします」
アチルは不満そうだが、心配はしていない。
いざ危険になったら真っ先に逃げる判断を下せる性格だとわかっている。
「じゃあ、行くとしますか」
「そうですね! 善は急げです!」
「急がば回れという言葉もあるが……今は真っ直ぐに進むべきであろう」
私とアチルは雷の守護者の肩に乗る。
守護者の腕には薬草や魔石の入った袋に、アチルの魔力節約用の木の矢の束がひっかけられている。
目的地まで荷物を持って歩かなくていいというだけでありがたいものね。
「行くのかい。まあ、ここらが勝負どころだろうさ……ヒッヒッヒッ」
準備が完了した私たちのもとへ、婆さんがやってきた。
あいかわらず神出鬼没だ。
「上手くいきますかね?」
私は思わず尋ねた。
この婆さんはいろいろ知ってそうだし。
「それはあんたが一番わかってると思うけどねぇ……。ただ、無理はしない方が良いよ。使命感とか感じない事さ。せっかくの命……いや、集めた装備を無くすのはもったいないからね。あとは役割の確認は今のうちにしとくと良い」
そうだそうだ。
ステータスも確認しといた方がいいわね。
お互い何が出来て、何が苦手かしっかり把握しないと。
まずはアチル。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:アチル
レベル:23(↑2up)
レイス:人間
ジョブ:X射手
―――装備―――
●武器
ロットゥンクロスボウGT:☆22
セイントクロスボウGT:☆42
●防具
朽ちきったローブ:☆4
ブラックボーンシールド:☆18
白銀の装甲片:☆15
村人のシャツ:☆1
村人のスカート:☆1
古革のブーツ:☆3
―――技能―――
●任意
【弾丸豆のなる木】Lv8(↑1up)
【高速連続射撃】Lv5(↑1up)
●常時
【弓術】Lv2
【クロスボウ術】Lv12(↑1up)
【視力強化】Lv9(↑1up)
【木魔術】Lv9(↑1up)
おっ、腐り堕ちた聖賢者の経験値もちゃんと反映されてるみたいね。
アチルは遠距離からバンバン雑魚を狩るのが役目だ。
自身のスキルだけでなく、豊富な武器のスキルも駆使しつつ戦ってほしい。
たくさんある薬草も私より彼女が大半を食べることになるだろう。
最近美味しいと言い始めたけど、なんか悪い気がしてきた……。
気を取り直して、次は雷の守護者。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:雷の守護者
レベル:31(↑1up)
レイス:ゴーレム・独自種
ジョブ:雷の守護者
―――装備―――
●武器
なし
●防具
黒鉄の大盾:☆22
黒鉄の大盾:☆22
灰鉄の大盾:☆20
灰鉄の大盾:☆20
―――技能―――
●任意
【電磁包囲網】Lv8(↑1up)
【雷属性付与】Lv17
●常時
【体力自動回復】Lv3
【魔力自動回復】Lv7
【雷属性耐性】Lv10
【腐食耐性】Lv5
【猛毒無効】
私たちが死して蠢く者の洞窟を探索している間、村に寄ってきたモンスターを狩ってレベルが上がったみたい。
「わずかだが成長は嬉しい」と上機嫌だった。
四つの大盾は灰色と黒色で締まった色合い。
防具でありながら、武器にもなりそうな重量も特徴。
彼にはさっきも考えた通り、村とパーティを守る二つの電磁包囲網を維持してもらう。
そして、余裕があったら雷属性付与で私たちの武器の威力底上げかな。
そして最後はもちろん……。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:26(↑2up)
レイス:人間
ジョブ:戦狩人
―――装備―――
●武器
超電磁ブーメラン:☆30
目覚めのブーメラン:☆15+1
●防具
牛角のカチューシャ:☆2
鉄包帯のはちまき:☆6
質素なシャツ:☆1
鉄包帯のはらまき:☆10
質素なズボン:☆1
白革のグローブ:☆7
蜘蛛の腕輪:☆8
村人のクツ:☆1
●装飾
聖なる首飾り:☆25
―――技能―――
●任意
【塵旋風】Lv6
【ブーメ乱舞】Lv6(↑1up)
【猛牛ブーメラン】Lv4(↑1up)
【回帰する生命】Lv1
●常時
【ブーメラン術】Lv14(↑1up)
【解体】Lv10
【回復魔術】Lv1
【腕力強化】Lv8(↑1up)
遠近両用、万能武器ブーメランを使い状況に応じて動きを変えるオールラウンダー。
火力も一番高いので、自慢とかではなく討伐のカギは私になると思う。
そういえば私の新装備の再確認を忘れていた。
◆装飾詳細
―――基本―――
名前:聖なる首飾り
種類:首飾り
レア:☆25
所有:マココ・ストレンジ
耐久:20
―――技能―――
【聖属性付与】Lv5
【魔力自動回復】Lv3
※残りスキルスロット:2
―――解説―――
十字架を模した形状の白銀の首飾り。
聖なる力と魔力を持ち主に与える。
アンデッド特効を持った聖属性を付与する事が出来るようになる装備だ。
雷もアンデッドに強いけど、聖もあるならそれに越したことはない。
『装飾』なので攻撃や防御に影響はなく、完全に付いているスキルで価値が決まるみたいね。
こっそりある【魔力自動回復】も今の状況に合う最高のスキルだ。
苦労して死して蠢く者の洞窟を攻略した甲斐があるというものね。
一通り自分の中で考えをまとめると、それをみんなに話して確認を行った。
それぞれ「もうわかっている」といった感じで非常に頼もしい。
「ヒッヒッヒッ……話はまとまったようだね……。んまぁ、あんたたちなら勝てるよ。油断せずに行って戻ってきな」
「頑張ります! ばあ様!」
「無論そのつもりだ」
「いろいろありがとうございます。行ってきます」
婆さんに見送られ、私たちパーティは『腐り竜の渓谷』へと向かった。
遂にドラゴンゾンビの領域に挑めそうです。




