Data.19 その闇の先へ
◆現在地
死して蠢く者の洞窟:地下16F
なかなか深いところまで来た。
風景は15Fと変わらないので、敵の種類もそこまで大きく変化してないと思う。
まあ、このゲームは意外とそういうお約束破るの好きそうだから、油断ならないけどね。
警戒を怠らず、私が先頭アチルが後ろの陣形を維持して進む。
パキッ……
……骨が鳴る音?
指の骨を鳴らした時のような音が、ダンジョン内に響いた。
私か、アチルか……いや、この音は上からだ!
ガキィン!
上から落ちてきたモンスターの持つ短剣をブーメランで間一髪受け止めた。
天井に張り付いているとは忍者みたいな奴ね。
そいつは私を仕留め切れなかったとみると、バック転数回で一気に距離をとった。
骨だけだからかなり軽快な身のこなしだ。
名は<スケルトンアサシン:Lv20>。
単独で出てきてくれてありがたいけど、ついにレベル20の敵モンスターが出た。
しかも、潜伏の心得がある。暗いダンジョン内部では厄介すぎる相手だ。
私とアチルはそれぞれ武器を構え、戦闘態勢を整える。
動きは早いけど、こちらもそれなりに武器スキルを鍛えてきた。
十分対応できるはず……と思ったら、そいつは更に後ろへ跳び、闇の中へ消えていった。
姿をさらした以上、これ以上の戦闘は不利とみて退いたのか……。
今までの動く物に襲い掛かるだけのゾンビたちより一枚も二枚も上手ね。
ポジティブに考えると、レベル20のモンスターでも私たちとは正面から戦いたくないという事。
つまり、私たちはこの階層を探索しても問題ないだけ強くなっている。
「マココさんどうします? また、どこかで待ち伏せしてるかもしれませんよ……」
「それでも進むしかない。アチル、頼りにしてるわ」
「は、はいっ! 頑張ります!」
さあ、攻略を詰めていくとしましょう。
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◆現在地
死して蠢く者の洞窟:地下19F
「いやぁ……長い道のりでした……」
レベル20を越えてくる敵モンスターとの戦いを潜り抜け、私たちは20Fへの移動魔法円を視界の中に捉えた。
その移動魔法円は西洋の神殿に使われているような柱に囲まれ、明らかに今までの魔法円と違う雰囲気を醸し出していた。
他と違う点はもう一つ。
割と魔法円の近くにモンスターがいる。
その名も<ブラックスケルトン:Lv26>!
黒い刀を二本持ち、じっと佇んでる。強キャラ感がヤバい。
それに黒い骨と言えばアチルの盾になった『黒い大骨』が思い出される。
うーん、でもブラックスケルトンにそこまで大きい骨は見当たらないなぁ。また別のモンスターが落とす素材なのかもね。
そういえば、スケルトンアサシンは最後まで現れなかった。
モンスターなのに実力を察して本当に戦闘を避けるなんて、面白いわね。
ま、今は目の前の敵に集中しましょう。
「私が先にあいつに仕掛けるから、アチルは適度にサポートお願い」
「了解です。あいつは魔法円の前から動かないみたいですし、無理なら一度ここまで退いて立て直すとしましょう」
「そうね」
アチルと短い作戦会議を終える。
細かいところを話さなくても、なんとなく通じるぐらいには戦闘を重ねてきた。
「じゃ、いきます……か!」
私はブーメランを振りかぶり、投げようとした。
ブラックスケルトンは拠点防衛型で、攻撃されたら動き出すタイプ。
なので、剣の届かない範囲からブーメランを投げれば先手を取れる……そう思っていた。
ブラックスケルトンは剣を構え、一瞬で間合いを詰めてきた。
『すり足』という多くの武道で使われている技だろう。
流石に遠くから攻撃すれば無抵抗で倒せるほど甘くはないか……。
反撃を予想していた私はブーメランを投げるのをやめ、そのまま近接戦用の武器として手に持ったまま振るった。
二本の刀と二つのブーメランが衝突し、火花を散らす。
この刀……他のスケルトンが使うボロボロな武器と違い、何というかまともだ。
高レアリティの『超電磁ブーメラン』は問題ないけど、ダメージの蓄積した『目覚めのブーメラン』は切れ味の良さそうな黒い刀とあまりぶつけたくない。
勝負を決めさせてもらうわ!
「雷の円陣!」
高レベルのモンスターといえど、これを食らえば一瞬ぐらい動きが止まるはず。そこを討ち取る!
が、それを瞬時に察したブラックスケルトンは雷の円から跳び退き、黒い刀を投擲してきた!
不覚。
私が武器を投げらることを予想していないなんて。
とりあえず円陣を狭めて雷の盾を……。
カンッカンッキンッ!
アチルの援護射撃だ。
宙を飛ぶ刀を狙って撃ち落としたみたい。
スゴ技ね……って、見とれてる場合ではない。
今度は私が一気に得物を失ったブラックスケルトンの懐に飛び込む。
「ブーメ乱舞!」
私と二つのブーメランによる舞によって、強敵ブッラクスケルトンは消滅した。
後には大き目の魔石と『黒い骨』が数本残るのみ。
やっぱり『黒い大骨』はこのモンスターが落とす物でないようね。
――レベルアップ!
――スキルレベルアップ!
「やりましたねマココさん!」
「アチルのおかげよ。危ないところをありがとう」
私たちはその後、無言で頷く。
次の階層……20Fが『死して蠢く者の洞窟』の最終階層であろう。
つまり最終ボスがいる……。
スキルのリキャストや薬草による体力魔力回復の間、私たちはステータスを確認し合う。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:24(↑3up)
レイス:人間
ジョブ:戦狩人
▽――装備――▽
―――技能―――
●任意
【塵旋風】Lv6(↑1up)
【ブーメ乱舞】Lv5(↑1up)
【猛牛ブーメラン】Lv3(↑1up)
【回帰する生命】Lv1
●常時
【ブーメラン術】Lv13(↑2up)
【解体】Lv10(↑2up)
【回復魔術】Lv1
【腕力強化】Lv7(↑1up)
装備は変更なし。
なにも壊れなかったから運が良い。
レベルはスキルと共に良く上がったわね。
【塵旋風】は敵を倒すだけでなく、【猛毒の息】【腐食の息】の様な攻撃を防ぎ、相手に返す使い方も出来た。
ほんと応用が利く良スキルね。
他はまあ順当に強敵に放ち、それを撃破してきた。
また【猛牛ブーメラン】の使いどころが勝負を分けるのか……それはわからない。
次にアチルは……。
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:アチル
レベル:21(5↑up)
レイス:人間
ジョブ:X射手
▽――装備――▽
―――技能―――
●任意
【弾丸豆のなる木】Lv7(↑3up)
【高速連続射撃】Lv4(↑2up)
●常時
【弓術】Lv2
【クロスボウ術】Lv11(↑1up)
【視力強化】Lv8(↑2up)
【木魔術】Lv8(↑3up)
確認期間が開いていたので、私よりよく上がって見える。
任意スキルが少ない分、同じものをよく使うのでそれで上がり易いというのもあるかも。
合計レベルは45か。まあいい感じでしょう。
レベル以上にスキル武器防具も鍛えてきたんだ。
自信を持って挑もう。ビクビクするとミスが出るからね。
「よし、行こう!」
「はい!」
私たちは『死して蠢く者の洞窟』最後の先へ進む魔法円を発動させた。
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◆現在地
死して蠢く者の洞窟:地下20F(最終階層)
そこは完全な暗闇だった。
私は恐れず一歩踏み出す。
すると左右に青い炎が灯り、目の前を照らした。
私たちはまた一歩踏み出す。
青い炎はまたその先を示すように左右に灯った。
私たちの移動に対応して、炎がどんどん灯っていく演出……ボスらしくなってきたわ。
アチルもわかっているようで、特に確認もせずに突き進む。
そして、いつもの様に円形の広間に辿り着いた。
先ほどの魔法円のように、広間は西洋の神殿に使われているような柱で囲まれている。
雰囲気は十分。
そんな場所の中央に佇む者が一人。
<腐り堕ちた聖賢者:Lv30>




