Data.2 まずは装備を確認
私の降り立ったところは、森だった。
案の定主要都市スタートは無理だったね。
ガチャガチャでいいものを引きすぎたツケと思っておこう。
「まずは装備を確認してと……」
「あっ、渡すの忘れてたアイテムあったから、送っときますねー」
シロさんの声が聞こえたかと思うと、空間に穴が開き、竹製のカゴと麻袋二つが落ちてきた。
「アイテムを入れたりして使ってくださいねー」
それだけ言って穴は閉じた。
このゲームにはいわゆる『アイテムボックス』の様なものが、初めから用意されてないみたい。
どこかで入手できるとするならば、相当なレアアイテムと化すだろうなぁ。
「改めて装備確認しないと。ステータス!」
◆ステータス詳細
―――基本―――
ネーム:マココ・ストレンジ
レベル:1
レイス:人間
ジョブ:狩人
―――装備―――
●武器
木のブーメラン:☆1
目覚めのブーメラン:☆15
●防具
質素なシャツ:☆1
質素なズボン:☆1
白革のグローブ:☆7
質素な靴:☆1
―――技能―――
【ブーメラン術】Lv1
【解体】Lv1
目の前にステータスウィンドウが現れた。
ちなみに念じるだけでウィンドウは現れるので、本当は掛け声はいらない。
まあ気分ね。他の人は指パッチンで開けたりするそうだ。
「えっと、まずは武器からかな」
装備の武器欄をタッチする。
まずは『木のブーメラン』から。
◆武器詳細
―――基本―――
名前:木のブーメラン
種類:ブーメラン
レア:☆1
所有:マココ・ストレンジ
攻撃:4
耐久:3
―――技能―――
なし
※残りスキルスロット:1
―――解説―――
木製のブーメラン。
軽くて扱いやすいが、その分威力が低く脆い。
でたー!
初期武器なのになんかテンションあがる。
基本情報の『攻撃』はそのまま武器の攻撃力、『耐久』は壊れにくさを表してるようね。
スキルは無いけど、スキルスロットがある。
何らかの方法で一つだけスキルを追加できるということかな。
まあ、初期武器にそこまでする人は少ないと思うけど。
次は他の初期防具をパパッと見よう。
簡易表示で……。
――――――――
質素なシャツ:☆1
防御:2 耐久:1
質素なズボン:☆1
防御:2 耐久:1
質素な靴:☆1
防御:2 耐久:1
――――――――
うむ、弱いね。
ガチャで引いた『白革のグローブ』と比べてどうなんだろう。
今度は普通に表示してと……。
◆防具詳細
―――基本―――
名前:白革のグローブ
種類:グローブ
レア:☆7
所有:マココ・ストレンジ
防御:11
耐久:14
―――技能―――
【猛毒耐性】Lv2
※残りスキルスロット:2
―――解説―――
清らかな革を用いて作られたグローブ。
装備者を毒から守る。
おお! これは!
スキル付きでステータスも悪くないし、序盤で毒を防げるのは確かにありがたい。
やっぱり神引きだったようね。
後は……お待ちかねの『目覚めのブーメラン』!
「オープン!」
◆武器詳細
―――基本―――
名前:目覚めのブーメラン
種類:ブーメラン
レア:☆15
所有:マココ・ストレンジ
攻撃:25
耐久:22
―――技能―――
【魔力の目覚め】Lv3
※残りスキルスロット:3
―――解説―――
中央の宝石に魔法が込められたブーメラン。
使う者の魔力が目覚めるように導く。
な、なんだこのスキル!?
とりあえずタッチ!
◆スキル詳細
【魔力の目覚め】
スキル所有者、もしくはこのスキルを持つアイテムを装備した者の魔法系スキル発現率をアップさせる。
レベルが高いほど発現率がアップする。
シロさんが「開始時はありがたい」といった理由がわかる。
このゲームのスキルは使い込むほどその能力を増す。
だから早めに覚えて使いまくる事が最強への近道だ。
【魔力の目覚め】はまさに序盤の最強スキルと言える……かも。
他の人がどんなスキルを覚えてるのか知らないからね。
後で掲示板でもチェックしとこ。
でも今はゲームを楽しむ。
今まで遊んだMMORPGは攻略サイトや掲示板で最適なプレイをある程度調べてたけど、このゲームは自由度が高いし、まだサービスが開始されたばかりだ。
こういう時は何も気にせず、突き進むのみ!
「最後にスキルを確認しとこ」
私はウィンドウをタッチする。
【ブーメラン術】のスキルは予想通りで、レベルが上がるほど威力や射程がアップし、攻撃系スキルを覚えやすくなるというものだった。
次は【解体】っと。
◆スキル詳細
【解体】
モンスターを倒した際にドロップするアイテムを増やしたり、質をアップさせる。
レベルが上がるほど発動確率がアップする。
つ、強い……。シロさんが(ry
いやぁ、本当に良いスキルを引いた。
この引きを生かすためにとりあえず動き出さないとね。
私はカゴを背負い、麻袋の紐をズボンの腰に結んだ。
「……で、町はどこ?」
とりあえず冒険の拠点となる町を探さないとね。
95%の人間がやらない事をやらねばならぬ。
しかし、このゲームにおいて人と違う行動はプラスにつながる……はずだ。
私は適当に歩き出した
> > > > > >
……ガサガサガサ
歩き始めて十分くらいで、生き物の気配を感じた。
なんどVRを経験してもこのリアルさには驚かされる。
さぁ、来いモンスター!
ぴょんぴょん
飛び出してきたのは兎型のモンスター。
頭上に<トゥースラビット:Lv2>と表示されている。
大きな前歯が特徴的だが、それ以外はかわいい見た目をしてるなぁ。
ゲームとはいえ殺すのが忍びな……。
「グガアァァァ!」
「うぎゃあああ!」
グローブと服の間の腕を噛まれた!
その部分にノイズがはしり、輝く粒子が飛び散る。
ダメージ描写は抑え目にしてるから血や肉は飛びません。
「こいつ!」
私は目覚めのブーメランでそいつを叩き切った。
真っ二つになった敵から粒子が飛び散り、それがアイテムを構築した。
『トゥースラビットの皮』と『トゥースラビットの肉』と表示されている。
「流石に初戦闘からレアドロするほどの運は残ってないよね」
皮をカゴへ、肉を麻袋に入れながら呟いた。
そういえばレベルアップもしてない。
ぜひ狙いたいものだけど、町の位置を把握せずに狩りは怖すぎる。
向かってきたら倒す方針で行こう。そうしよう。
「グルルルル……」
うっ、次のお客さんも来ちゃったか……。
――数十分後。
「ふんっ、なかなか楽しいじゃない!」
私は走りながら叫んだ。
初めの<トゥースラビット:Lv2>が一体。
次に<ウッドウルフ:Lv3>が三体。
さらに<ウッドスパイダー:Lv3>が二体。
合計六体を倒し、【解体】スキルのおかげで素材も大量、レベルもアップでいい調子と思ってた矢先、ヤバいのに出くわした。
出てくる魔物が低レベル雑魚ばかりだから油断してた。
「グオオオォォォーーー!!!」
そいつの頭上には<フォレストベアー:Lv9>の表示。
レベルも高いし足も速いし逃げ切れそうにない。
「こうなったら!」
私は敵に向き直りブーメランを構える。
「なんか目覚めて!」
そのままブーメランを投げた!
――新スキル発現!
脳内に音声が響く。
回転するブーメランの周りにつむじ風が発生し、塵や落ち葉を巻き上げる。
その風はそのまま敵を包み込み、打ち倒した!
――レベルアップ!
――スキルレベルアップ!
さらに音声が響く。
何とか切り抜けたわ……。
ステータス確認を後にし、とりあえず落ちた物を拾い動きだす。
数字で見えなくとも、流石に疲れが出てきたとわかる。
町を……あった!
「やっと辿り着いた……。なんか村っぽいけど」
簡単な木の柵で囲われた小さな村が見える。
しかし人はちゃんといるみたい。
とりあえず入ってから考えよう。
私は村を目指してまっすぐ歩きだした。