表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/138

Data.15 再探索に向けて

 日が落ち始めてる。

 村への道はあと少しだけど、今日の冒険はこれで終わりそうね。

 夜のフィールドも探索してみたいけど、それはもうちょっと環境が安定してからにしよう。

 必死に集めた装備やもろもろを失うのは怖い。


「あの、何か動きを早くする裏ワザとかないんですか?」


 特にやる事もなく暇なので、雷の守護者と会話試みる。


「……あるにはある」


「え……」


「しかし、今はそれを使う時ではない。後々必要になるのだ……」


 まあ、本人(?)がそう言うならまあいいわ。

 実際、動きの遅さ以外は特に短所が見つからない。

 絡んできた森のモンスターは雷を纏った拳でほぼ一撃だった。

 今はまだステータスも見せてもらってないけど、攻撃スキルも持っているようで、ドラゴンゾンビ討伐までは期待の新戦力だ。


「村が見えてきたぞ。どうやら無事のようだな」


 雷の守護者の言うとおり、木々の間から村が見える。

 でも、まだけっこう遠いような……。

 メカっぽい見た目してるだけあって、ズームして見えるのかな?

 なんにせよ無事帰れそうで良かった。




 > > > > > >




「あっ、マココさん! おかえりなさい!」


 門の前にはアチルが腕を組みながら立っていた。

 出発前には無かった黒い骨の盾とか、右手からうねうねとツタが生えていたりとか、防衛の過酷さを物語っている。

 なんか地面に突き刺さってる盾も増えてるし……。


「あ、アチルも頑張ってたみたいね……」


「そりゃあもう! ここは私の生まれた村ですから、守るのは当然です。そう言うマココさんも、なんかすごいのをお持ち帰りしてるじゃないですか!」


 そう言われればそうだ。

 このでっかい守護者の方が普通の人は驚くだろう。


「我は神殿を守りし雷の守護者(サンダーガーディアン)……。お主の名は『アチル』というのか。ふむ……なかなかお主からも覚悟と強さを感じるな……」


「えっ!? わかるもんですか?」


 アチルはおだてられて満更(まんざら)でもない様子だ。

 あいかわらず人の気持ちがわかる守護者(ガーディアン)だなぁ~。


「わかるとも……お前が疲弊している事もな。防衛は我が変わろう。門の中に入っているといい」


 そう言うと、守護者は私たちを門の内に入れた。

 そして、自らも地面に突き立ててあった四つの盾を四つの腕で持ち、門の中に入ってきた。


「あれぇ、防衛しないんですか? 確かにしばらくモンスターは現れていませんけど、もう来ないとは……」


「待て。答えを急ぐ出ないぞ。今から発動する……電磁包囲網(エレクトロシージ)!」


 雷の守護者は四つの腕を天に掲げて言った。

 すると、腕の一部が分離し四方へと飛び去った。


「よし、これでひとまずは安全だろう」


「何をしたんですか?」


「周りを見てみろ」


 私たちは周りを見渡す。

 目に入ったのは、電気の線に囲まれた村だった。


「我のスキル、電磁包囲網(エレクトロシージ)は指定した地点の周囲を囲むように電気の線を出現させるというものだ。敵を囲って捕えるのはもちろん、このように自らを内に入れ、守ることにも使える」


 攻防一体の良いスキルね。

 村はそこまで大きくないとはいえ、全体をぐるりと囲うほどの電撃を発動させられるなんてすごい。

 魔力とかどのくらい持つのだろうか。


「他にも我はいくつかのスキルを持っているが……口で説明するより、ステータスを見せた方が早いだろう」


 雷の守護者はスッとステータスウィンドウを出現させた。


 ◆ステータス詳細

 ―――基本―――

 ネーム:雷の守護者(サンダーガーディアン)

 レベル:30

 レイス:ゴーレム・独自種(ユニーク)

 ジョブ:雷の守護者(サンダーガーディアン)

 ―――装備―――

 ●武器

 なし

 ●防具

 なし

 ―――技能(スキル)―――

 ●任意

 【電磁包囲網(エレクトロシージ)】Lv7

 【雷属性付与(エンチャントサンダー)】Lv17

 ●常時

 【体力自動回復(ライフリジェネ)】Lv3

 【魔力自動回復(マジックリジェネ)】Lv7

 【雷属性耐性】Lv20

 【腐食耐性】Lv7

 【猛毒無効】


 なんじゃこりゃ……。

 耐性系は知ってるからいいとして、自動回復系もまあ想像通りでしょう。そういえば、掲示板で相当求められてたわね。

 気になるのは【電属性付与(エンチャントサンダー)】。

 まあ、他のゲームでも使われてるからわかるっちゃわかるけど、一応プロの雷使いに聞いておきたい。


「この雷属性付与(エンチャントサンダー)ってスキルはどういうものなんです?」


「肉体や物に雷を纏わせるスキルだ。移動中にモンスターを追い払う時、拳に雷を纏わせていただろう? あれもこのスキルの効果だ。我ほどの高レベルになると、攻撃系のスキルにも劣らぬほど高威力で、魔力の消費も少なく便利なのだ……」


 普通に剣で切ったりする場面でも、おまけに雷が付いてくるのだから便利そうだなぁ。

 通常攻撃を強化できるのだもの。


「ちなみに、他属性の付与スキルも存在するぞ。我は雷が最も優れていると思っているがな。今回の様な場合もそうだ。ゾンビやスケルトンといったアンデッドには、火や聖属性が効くと言われているが、実際は多くの敵の動きを痺れさせ、身を焼くことが出来る雷が最適なのだ」


 語りだした……。

 でも、私も雷という属性はずっと強いと思っている。

 何よりカッコいいのよね~。一瞬はしる閃光とかギザギザ感とかが。


「おっと、我としたことがつい熱くなり、重要なことを忘れるところであった。お主たちよ、魔石を集めておいてほしいのだ。ドラゴンゾンビ討伐のためにな」


 再び落ち着いた雰囲気になった守護者が、私たちに語りかける。

 それに対してアチルが質問を返した。


「魔石ってどうやったら手に入るんですか?」


「大体のモンスターが落とすはずなのだが、高レベルほど落としやすいとは言われているな。ダンジョンならより下層の敵を狩れば確実であろう」


「なんで必要なんです?」


「我の魔力回復手段なのだ。魔力自動回復(マジックリジェネ)は村を守る電磁包囲網(エレクトロシージ)の消費魔力分を補うので精いっぱいだ。ドラゴンゾンビの領域までの高速移動、そして戦闘を続けるには我にも魔力回復手段がいる」


「薬草じゃ駄目なんですか?」


「我は無理だな。ゴーレムでも、ウッドゴーレムの様な木を元にしている者には効くらしいが……」


 魔力の回復はみんな課題だなぁ。

 まあ、魔石が敵から出て来るなら問題なく集まるでしょう。

 ただ死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)は薄暗いから、注意しないとね。

 前も低レベルしか倒していないとはいえ、いくつか見逃してたかも?


「ヒッヒッヒッ……こりゃすごいねぇ。守護者本人を連れてきたのかい」


 この声は婆さん!

 また私の隣にいつの間にか立っている。

 とぼけてる様だけど、全部織り込み済みだろうに。


「まぁ、ありがたいことさ。これで心置きなく死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)に再挑戦できるねぇ。あたしも安心して送り出せるよ」


「はっ、そうでしたねマココさん。私たち、ドラゴンゾンビを倒す前にダンジョンを攻略しなければなりませんね!」


「そうね。レベルを上げながら魔石を集めつつ、使えそうな装備は持って帰るとしましょう」


「その意気さ……。でも、これから暗くなるから、明日早めに出るといい。今日は丸太の壁作りを手伝っておくれ。もういくつか木は切ってあるから、その分を頼むよ」


「その役目、我が引き受けた。力は十分、手先も割と器用だ。お主たちは休んでいるといい」


 そう言うと、婆さんと雷の守護者は去っていった。

 残されたのは私とアチル。


「明日、死して蠢く者の洞窟(アンデッドケイブ)を攻略できたら、ドラゴンゾンビを倒せるぐらいになってるかもしれないです。いよいよですね!」


「うん、早くこの村と街を自由に行き来できるようにしないとね」


 強敵に挑む前に戦略を練って、それを整えている時間が私は好きだ。上手くいくといいな~。

 あと、もうちょっと他プレイヤーの間でドラゴンゾンビの事が知れ渡ってると良いんだけどね。

 倒した時ちょっと騒ぎになるぐらいが好みだ。

 少しだけ目立ちたがりなのよね、私。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ