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Data.13 イスエドの村防衛戦

今回はアチル(あと少し婆さん)視点です。

 ◆現在地

 イスエドの村付近


「さぁ! かかってきなさい! この村は私が守る!」


 私は村の門の前に立ち叫ぶ。

 目の前には私を一度私を殺したらしい大きな盾が、地面に突き立てられている。

 ビッグシールドビッグゾンビという変な名前のモンスターが持っていたものだ。

 見てていい気はしないけど、この盾の頑丈さは良く知っている。せいぜい利用させてもらうわ!


 私自身の装備は両手に『クロスガントレット』、右の方には『ロットゥンクロスボウ』という主力武器が合体している。

 腐った矢を生成するスキルが付いていて、矢の調達に困らないのは良いけど、腐っているので威力が低いし脆い。

 なので、雑魚相手にも連射を要求されちゃう。

 でも、これは命を救ってもらったマココさんから貰った武器だし文句は言わない。代わりになる武器もここには無いしね。


 お父さんも言っていた。

 「強者とは与えられた手札で勝利を掴めるものだ」と……。

 もらったものは他にもある。

 お世辞にもオシャレとは言えない『朽ちきったローブ』。

 流石にちょっと臭う『古革のブーツ』。

 そして、新たな防具『ブラックボーンシールド』!


 ◆防具詳細

 ―――基本―――

 名前:ブラックボーンシールド

 種類:盾

 レア:☆18

 所有:アチル

 防御:25

 耐久:20

 ―――技能(スキル)―――

 【腐食耐性】Lv5

 【猛毒耐性】Lv5

 ※残りスキルスロット:2

 ―――解説―――

 『黒い大骨』を並べて接着しただけのシンプルな盾。

 そこまで頑丈ではないが耐性に優れる。


 解説の通り、マココさんが「使っていい」と言っていた『黒い大骨』を『ウッドスパイダーの糸』でくっ付け、『ウッドウルフの皮』を持ち手にした簡単なシールドだ。

 私には創作系のスキルがないし、魔物が来るかどうかでソワソワしながら作ったからかなり苦戦したけど、しっかり防具となっている。


 にしてもレアリティも高いし、耐性も素晴らしいわぁ。

 『黒い大骨』は本来レア素材だったのかもしれない。

 もっと優れた人物が素材として使えば、さらに良い防具になったかも。


 しかし、後悔などしていない。

 いま大事なのはこの村を守り、生き残る事!

 お母さんも言っていた。

 「戦いで出し惜しみはするな」と……。


「……むっ! 来たわね!」


 こちらに向けて、ゴブリンの群れがやってくる。

 まだ遠く、正確な数や編成はわからないけど、油断はしない。

 私は木の枝をそれっぽく削っておいた物をクロスボウに装填する。

 威力だけなら【腐矢】よりは高いだろうし、魔力の節約にもなる。

 考えてるなぁ、私。


「さて、何分で片付くかしら?」


 呟くと同時に、私は先頭のゴブリンに矢を放った。




 > > > > > >




「あの子は意外と現実主義者なのかもしれないねぇ……」


 戦闘開始から20分と言ったところかね?

 初めの群れ10体ほどはものの3分で片付けた。

 両親の戦闘センスはアチルにも受け継がれているようじゃ。


 二番目の群れも5分ほどで終わったが、そこで木の矢を撃ち尽くした。

 そして今は三番目の群れ、20体ほどに苦戦している。

 まぁ……1対20であるわけだから、本来ならば苦戦して当然だろうがね。

 ただ、縄張り争いに負け、逃げてきた小物の相手ならば、そうも言ってられまい。


「どれどれ、どのくらい成長したもんかな?」


 いくつかのスキルを発動させ、アチルのステータスを覗く。

 久々じゃが、うまくいくかの。


 ◆ステータス詳細

 ―――基本―――

 ネーム:アチル

 レベル:11

 レイス:人間

 ジョブ:射手

 ―――装備―――

 ●武器

 ロットゥンクロスボウGT:☆22

 ●防具

 朽ちきったローブ:☆4

 ブラックボーンシールド:☆18

 村人のシャツ:☆1

 村人のスカート:☆1

 古革のブーツ:☆3

 ―――技能(スキル)―――

 【弓術】Lv2

 【クロスボウ術】Lv7

 【視力強化】Lv3


 むむぅ……。

 新スキルは【視力強化】だけか……。

 まぁ、今のアチルの戦闘スタイルからすれば妥当じゃな。

 あの子は戦闘中に「こんな技があれば……」という『もしも』的な思考をあまりしないようじゃ。


 先ほど、通常のゴブリンより巨大なビッグゴブリンを相手にしていた時、魔力を切らすほどの腐矢を使っていた。

 通常のゴブリンより防御力が高いのが原因なのじゃが、そういう相手に次も出会ったとき、例えばマココならば攻撃力の高いスキルを求めるじゃろうな。

 しかし、アチルは急所である頭部と胸だけに矢を集中させ、一度目よりも魔力を節約して倒すことに成功している。


 今あるモノで勝つ方法を探すことに全ての思考を使う……あの子に刻まれた美学が攻撃系のスキルの発現を阻害しておるな。

 とはいってもじゃ……。

 狙いを定め続けた結果、目覚めた【視力強化】も射手ならばぜひとも欲しいスキル。

 これはこれで良い方向に進んでいるのかもしれんわい。


「さて、もうちょっと見守らせてもらうとするかの……」




 > > > > > >




「はぁ……はぁ……」


 ゴブリンどもが落とした各種薬草をむしゃむしゃしながら、私は体力と魔力の回復を図る。

 あいつらも薬草の効果は理解しているようで、いくつか持ち歩いていたのが良かった。

 このドロップがなければ、とうに体力と魔力は尽きていたと思う……。

 薬草の味はあんまり美味しくないと思っていたけれど、もはやこの味に安心感すら覚える様になってきたわ。

 慣れって怖い。


 それにしても敵が多い。

 幸い、途中から慣れてきたし、なんか狙いがつけやすくなったから多少は余裕が出てきている。


 でもやっぱり【腐矢】の威力の低さは考えものね。

 ゴブリンどもの装備はもともとボロボロだから、腐食させる意味もあまりないし、そうなるとただの威力の低い矢だ。

 でもこれで何とか勝たないとね。

 その為には魔力を回復する『マリョク薬草』がもっといる……。


「ん? あそこにも薬草が落ちてる!」


 地面に突き立てられた大盾から少し離れたところに、通常の『タイリョク薬草』よりも深い緑色をした葉が落ちている。

 しかも何やら発光している。これは上位薬草かも!


 私は残った魔力で牽制の矢を放ち、素早く前に(おど)り出る。

 そして、その薬草を拾うと口に入れた。

 ……おっ、味はそんなに悪くない。


「アチルッ!!」


 いきなりおば様の今まで聞いたことのない様な叫びが、耳元で響いた気がした。

 私は驚いて、口に入れていた物を飲み込んでしまった!

 もう、まだ味わってたのにおば様ったら……。


「んぐうっ……!」


 か、体が熱い……!

 まさか、毒!?

 いや、耐性装備があるからそれはないはず……。

 ならばなぜ……ううっ、意識が……。




 > > > > > >




 ……数秒か、数分か、数時間か。

 わからないけど、意識が飛んでたみたい……。

 一度死んだときの感覚に似ている。もしかして二度死んだかな……?


 いや、少しづつ感覚が戻ってきた。

 何とか生きているようね……。

 私は閉じていたまぶたを開く。

 すると、棍棒を持ったゴブリンが跳びかかってきた!


「はあっ!」


 すぐさまクロスボウを構え、対象を撃ち抜く。

 当たりどころが良かったのか、ゴブリンはすぐに倒れた。

 体の感覚はまだ少し鈍いけど、大盾の後ろに急いで引き下がる。


 ふー、状況がつかめない。

 でも、クロスボウは無事でよかった。

 私は右腕をもう一度確認する。


「な、なんじゃこりゃああああああああああああ!!」


 私の右腕には植物のツタが絡まっている!

 衝撃の事実でダルさも吹っ飛んでしまった。

 あれは何らかの状態異常を付与する薬草だったのだろうか。

 とにかくステータスを確認だ……。


 ◆ステータス詳細

 ―――基本―――

 ネーム:アチル

 レベル:13

 レイス:人間

 ジョブ:射手

 ―――装備―――

 ●武器

 ロットゥンクロスボウGT:☆22

 ●防具

 朽ちきったローブ:☆4

 ブラックボーンシールド:☆18

 村人のシャツ:☆1

 村人のスカート:☆1

 古革のブーツ:☆3

 ―――技能(スキル)―――

 ●任意

 【弾丸豆の(バレットビーン)なる木(プラント)】Lv1

 ●常時

 【弓術】Lv2

 【クロスボウ術】Lv8

 【視力強化】Lv4

 【木魔術】Lv1


 木魔術……私が魔法を使ってるの!?

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