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08 幼女の養子

「ようこそアイリス!我がべルネリオス伯爵家へ!」


 六歳の誕生日、私の名前はアイリス・べルネリオスになった。

 うん、養子縁組してデュッケンバルドが養父様になりました。

 まぁ元々武術なんか特に優秀だったのでべルネリオス家としては歓迎でした。

 デュッケンバルドの父親、つまり私の祖父と祖母になるのですかね?話を聞いていてとても喜んでいたとか。

 私にとっても賭けですよ、ゲームと同じ状況になるのを砕く賭け。

 あのゲームの中にお姉様を救う手段が無いのだからゲームの状況とかけ離れれば救う方法が必ずあるはず!

 男爵家から伯爵家にランクアップした事でどう変わるかが予測はつかなくなったが、それでも良い方向に進むと信じたい。


「今日から娘としてよろしくお願いします養父様。」

「そう気張らずともよい!はっはっはっはっはっ!」


 いつも以上に愉快そうに笑ってるなぁ。

 ちなみに私がこの話を受けた理由、もう一つある。

 それは兄の存在だ。

 どうも不安を掻き立てる存在だ・・・。

 あれから前世の記憶をフルに使い調べたが、やはりベルーナの家は一人娘であるが結論だ。

 まぁ100%ゲームと同じとは言いたくはないけど、それでもあの兄だけは何か違和感というか恐怖というかそんなものを感じる。

 距離を置き、観察したいというのが本音だ。

 誰か直属の・・・それも私を裏切らない部下を用意して調べたいけど難しいな・・・。


「さて、カーラはおるか!」

「はい、ここに。」


 すっと前に出てきたのは私より十は上な感じがする女の子だった。

 けど私にはわかる・・・、この子も武門の子だ・・・。


「アイリス。この娘がお前の専属だ。何かあったら言うとよい。」

「カーラ・レストンです。よろしくお願いしますアイリスお嬢様。」


 この子の動き・・・やはり・・・。


「それじゃあ早速ですがカーラ。あなたに覚えて欲しい技術があります。」


 良い子みーつけた・・・!




「まずあなたに覚えて欲しいのはこれです。」

「これは・・・?」


 取り出したのは私が隠型術指南書として作っておいた本。

 無論こちらの世界の言語にして書き記している。

 まぁ出したのは隠型術の中でも重要となる情報収集術について書いてる物だ。

 隠型術の情報収集術は四つの技から成り、それぞれ「変装術」「心理術」「侵入術」「野戦術」に分けられる。

 変装術は読んで字のごとく変装、七化という物だ。

 と言ってもこの世界で忍びと同じ七化が出来るわけではないのでそれぞれ特徴持った職業の仕来りや常識が書かれている。

 まぁこれは本から読み解き、前世でのゲーム知識を混ぜているので重要ではない。

 心理術はわかりやすい心理学だ。

 けどこれ、なんでここまでしっかり覚えているのか不安になるほどしっかりした本が書けた。

 前世の私は何者だったのだろう?

 そして侵入術。

 城や建物に密かに侵入する際の技術が書かれている。

 これは道具が必要なのでそれは用意してある。

 最後に野戦術。

 これは特に教えなくていいかなぁ?

 だって野山での戦闘やサバイバル技術だから、そんなものこの世界では結構必須はとこあるから問題はないし、必要なのは情報収集能力だ。

 そう、私がこのカーラという侍女に見出したのは忍びの才能!

 今はとりあえず知識を頭に詰め込ませ、次に手裏剣術と体術を教えようと思っている。


「私の侍女になるあなたに覚えて欲しい知識です。すぐに全てをとは言いません早めにこの心理術と侵入術を覚えて欲しいのです。あっ野戦術は特に心配してないので放置でもいいですよ。」


 にっこりと笑顔で説得する。

 この子が隠型術をある程度物に出来るようになったら他の武術も学ばせて見ましょう。

 きっと強い子になりますよ!!


「あの・・・お嬢様?なぜこれを私に?」

「あなたの動きに才能を見ましたので、出来ると思ったら徹底的に教え込もうかと。大丈夫です。その分お給料などは優遇するように養父様に伝えておきます。」

「確かに私は長くこの屋敷に仕えていますが・・・平民ですよ?」

「それが何か?」


 平民でも最低限字は読めるように教育はされていると聞いている。

 それに武術を習うのもよくある話、だってこの世界にはよくある冒険者ギルドなんてものも存在する。

 まぁ私には関係ないので興味も無くスルーしてますが。

 けど情報や信頼できる仲間を得るにはちょっと利用を考えておくべきかな?

 ゲーム通りにお姉様が没落・追放された場合、私がお姉様の手助け出来るとしたらそういう面でになるかもしれない・・・。


「お貴族様は・・・平民を蔑むものだと思っていました・・・。」

「養父様にそういう事されたのですか?」


 貴族だからとその権威に酔いしれて平民を弾圧するのは違う!

 けどあの人はそういう事するような人ではないけどなぁ?

 平民の兵士達からも信頼されてるし。


「いえ、違います!そういう事をされた知り合いが多いので・・・。当主様はその、特殊な部類だとも聴きますし・・・。」

「あぁなるほど。確かにそうですね。」


 確かにあの人は良い意味で貴族の規格外。

 ベルーナ家やウィレナー家も基本的に平民軽視はしない。

 けど他の貴族はどうかというと違う。

 地位を持つと傲慢になるのは人の性なのかなぁ?


「私は平民が居ないと貴族も王族も成り立たないと思っています。王や貴族が居るから国があるのでなく、平民が居るからこそ国があり、平民が居るからこそ王や貴族が成り立つのです。」


 ある意味で一番偉いのは平民だよ?

 だって王族や貴族じゃなんにも出来ないんだし。


「けれど王や貴族をいらないとは言えません。なぜなら平民を守る為に存在するのです。この国はある程度平和ですけど、よその国と戦争をしないとは言えませんし、街道の整備など、平民じゃ出来ない事をするのは王や貴族です。互いにそうやって成り立っているのです。」


 そう言ってカーラの手を取ってにっこりほほ笑む。


「ですから、平民だからと自分を卑下しないでください。一人の人間として、誇りをもってください。」

「・・・はい、お嬢様!」


 目をうるうるさせているなんてなんてチョロい子・・・心配だわ!

 まぁしっかりと私に忠誠心植え付けれたけどそれで使い潰すなんて事はしない。

 さっきも言ったように、私は平民だろうと人間としての尊厳を持ってほしいのは本当だし。

 この子が結婚・・・となればしょうがないけどそれ以外であんまり手放したくはない。

 せめてゲームが終わる時、学園卒業までは傍で仕えていてほしい。

 カレンお姉様が平穏無事に学園をご卒業なされれば多分大丈夫だろう。

 攻略対象である第一王子は叩きのめして私に恋心など抱かないだろう。

 第二王子はパーティーの場で寝顔を見せなかったし、第一王子をふるぼっこにしたシーンを見ているのでこいつも恋心など抱かないだろう。

 後の攻略対象は、宰相の息子とセバスチャンか。

 セバスチャンは・・・まぁ大丈夫だろう、第一王子から私の恐怖は聞いてるだろうし近づかないだろう。

 問題は宰相の息子の方か・・・、こいつはちょっとやっかいなんだよな。

 今わかってるだけで大きな問題が一つ出ている。

 それは・・・前に国王と謁見した後、なぜか宰相に気に入られたという事だ。

 まぁ警備兵達からの信頼を五歳児が得ているしそういうのもありそうだけど・・・。

 実は警備隊の経費の記録にものすごい文句を付けてしまったのだ・・・。

 一応簿記についての知識もあったのでその知識フル動員してしっかりとした記録を三年分作ってしまったのだ・・・。

 警備隊の経費に不正は無く、ただの計算間違いなどが多くて飽きれた程度だったのだが、それを見た宰相が偉く興奮して乗り込んできて色々聞いて行ったのだ。

 それで一応私が書いて保存してた前世の知識の書から簿記のを取り出して渡したのが気に入られた始まりだ。

 ちなみに私は他にも前世の知識を本にしてストックしている。

 人に見られたら確かに不味い知識もあるのだが、こうやって記録しておけばいざという時に使えるし、伝授する事も出来る。

 というか前世の名前とか歳とか覚えてないのになんで小難しい知識を覚えているのかが謎だ。

 良いんだけどさ?けど知識量からして前世の私本当に何者だよ?スパイか?007的なスパイか?


 とりあえず私の言った事に感動したカーラは一生懸命に本を見て勉強しだした。

 それを横目にとりあえず養父様の元へ向かう、さっきカーラに約束した特別手当の件だ。

 養父様の部屋の前についたので軽くノックをしてから部屋に入ると、何やら書類にサインをしていた。


「どうしたアイリス。何か用か?」

「えぇ、少しお願いがありまして。」

「ほほう?どんなお願いだ?」


 羽ペンをおいてこちらを見てくるが、真剣な顔ってよりはいたずらっ子の顔だなこれは。


「私専属の侍女カーラの事です。最低でも学園卒業まで外さないでほしいのです。」

「ふむ、その程度なら何の問題も無いが?」


 あたりまえな事をなぜいう?って顔しているけど次の為に必要な確認なのだこれは。


「それと彼女に色々叩き込むので特別手当のようなものをお願いしたく。」

「ほう?それは面白い事か?」


 そう、色々叩き込むって事は面白い事に決まっている。

 警備兵達に教えている事ですら養父様にとって面白い事なのだ。


「えぇ。」

「よかろう!なんなら屋敷に仕える全員を鍛えてもよいぞ!はっはっはっはっはっ!」


 それはご遠慮します。めんどくさいです!

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