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02 幼女の奮闘

 すくすく育っていますアイリスです。

 今3歳です。え?前回生まれたばかりだろうって?

 あんたあーうーしか言えない幼女に何を期待しています?

 まぁそこは良いんですよ。

 前に言った通り、ここが「優しさだけでは生きられない」の世界であることは概ね確定です。

 だから今は主人公わたしのスペックについて色々試しています。

 この「優しさだけでは生きられない」は貴族社会最底辺の少女が雲の上の方々と恋をするありきたりな恋愛乙女ゲームです。

 けどそれが始まるのは今じゃない。

 15歳から通う事になる王都の学園で始まるのです。

 そして主人公に設定されている武術・魔術・知識・礼節の四パラメータなのですがね。

 これ多分ね、今からある程度育てれば最初からパーフェクトとか軽いと思うのです。

 意味、わかります?

 パーフェクトな男装令嬢として学園に通う予定なのですよ私は!!!

 「優しさだけでは生きられない」で主人公の顔を見た事あるけど不可能じゃない。

 まぁ単純な話、男装令嬢となってカレンお姉様とイチャイチャしようという計画です。


 けどなよなよした男装令嬢じゃぁダメ!

 だから今のうちから体を鍛えているのです!

 前世で武術習っていたなぁと思い出し、それを練習しています。

 流派とか思い出せないけど確か古武術。

 他にもこの世界の知識ももちろんコソリと集めていますよ?

 バレたらどうなるかわかりませんし?

 神童だなんだともてはやされて入学時期早まっても嫌ですしね。

 そんなわけで今、庭にこっそり作った鍛錬場で古武術の練習中です。

 ここを知っているのは私とお父様と庭師の爺ちゃん!


 なぜお父様も知っているかって?

 庭師の爺ちゃんに頼んでいる時にお父様に見つかったからだよ?

 まぁ内容聞いたお父様が興味を持って、庭師の爺ちゃんとこっそり作ったらしいです。

 うちの庭結構広いけど、お母様にバレたら怖いものね?

 ちなみにお父様も体を動かすのは好きらしく、たまにこっそり使っているらしい。


「アイリス!!」


 あっ・・・ここの事知っているもう一人忘れていた・・・。

 実は設定で一切出てこなかったから知らなかったのだけど、主人公アイリスには兄が一人居る。

 ヨハネス・ウィレナー、8歳上の私のお兄ちゃんだ。


「おにいさま。」

「一人でここに来たらダメだと言ったじゃないか!お母様にここの事言いつけるよ?」

「ごめんなさい・・・。」

「しっかり反省したなら許してあげよう。」


 優しくなでてくれる兄・・・。

 しかしゲームでなぜ彼は登場しなかったのか?

 こんな優しい兄が居たなら登場させない方が不思議だ。

 多少年齢は離れているとはいえ、お父様もお母様もシルエットだが一応出る。

 兄が話にすら登らないという事があるのだろうか?


 慕ってはいるが一応警戒を怠らない。

 ここまでゲームと状況がそっくりな世界なのだ、知識がない相手には気を付けないと・・・!


「それで何の練習をしていたんだい?」

「ぶじゅつです!」

「その変な踊りがかい?」


 武術において究極の基礎にして究極の奥義であるのがなにかご存知ですか?

 それは足捌き。

 足捌きは最初に型として叩き込まれ、完璧にこなせばもはや武術において師範代と言ってもよいレベル。

 原点にして頂点!それが足捌き!!

 なんでそんな事知っているのかあんまり覚えてないんだよねぇ・・・。

 しっかりはっきり覚えている事は「乙女ゲーム『優しさだけでは生きられない』」「古武術」「日用生活品の作り方」「DIY」「前世の死因」。

 本当にそれくらい。

 あぁちなみに死因は食中毒、いやぁ・・・まさか食中毒で死ぬとは本当に驚きだよ・・・。


「ぶじゅつのきそはあしさばきです!だからこれでいいのですよおにいさま。」

「キミは本当に三歳なのかいアイリス・・・。」


 ・・・お兄様の視線が冷たい。

 本当にいつも優しい雰囲気のある兄だが、私が歳以上の行動をするとこうやって冷たい感じになる。

 いや感情があるって風じゃなく、感情が欠落したみたいな・・・?

 うちは一応爵位持ち。

 けどまぁなんていうの?男爵なので下っ端ですわ。

 ぎりぎり世襲制の範囲なので、私にその立場を盗られるじゃないかと危惧している可能性はある。

 このままじゃあなんか怖いなぁと思っていたらちょうどいい助け船が来た。


「おやヨハネス様、お嬢様。またここに来ているのですかい?」

「レネじい!おにいさまがひどいのよ!わたしがさんさいなのかうたがっているの!」


 ここは3歳らしく表現しておこう・・・。

 今はこの場をCoolに治める!


「お嬢様のすることは私にはよーわからんですが、まだまだお嬢様は可愛い三歳の女の子ですよ。」


 そういって優しく撫でてくれるレネ爺さん。

 こうやって年相応に甘えられるって良いねぇ・・・。

 感覚的に前世でそんな記憶は無いって事は覚えているから結構冷めた家庭だったのかも?


「まったくアイリスはすぐレネゲード様に甘えて・・・。申し訳ありませんレネゲード様。」

「良いのですよ、お嬢様は私にとっても可愛い孫みたいなものですから。それに今はただの使用人ですよヨハネス様?」


 そうやって撫でてくれるレネ爺・・・実は平民じゃない。

 実は引退した元公爵様。

 庭作りが趣味というちょっと貴族としては変わっている。

 それもただの男爵家の使用人になるなんて・・・。

 元々公爵をしていた時も変わった事をする人物だったらしい。

 農民が困っていると聞けば農民の恰好をして密かに助けたり、街道で魔獣が出て商隊が困っていると聞けば単身で魔獣退治したり。

 とにかく貴族の型破りとして有名な方なのだ。

 今は落ち着いて男爵家の庭師をしている。

 本当に変わった人だけどとても優しいので私はとても好いている。


「さぁお二人共。そろそろ戻らないと奥様にここがバレますよ?」

「はーい!」

「本当にすいませんレネゲード様。」


 上機嫌でレネ爺の手を取って歩きだす。

 この態度は年相応に見えるだろうけど一応この兄には用心しておかないと・・・。

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