表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移先が大魔王城ってどういう事よ?  作者: ゆきんこ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/114

御前試合本戦 1

 本戦開始までの間、暫し休憩を挟む事となった。原因は――。ま、まあ、あれは勝つ為に仕方なかったんだ。観客の皆さんには、馬に蹴られたとでも思って諦めてもらおう。うん、そうだ。そうしよう。


「いやぁ~、前代未聞だよね。まさか、観客に被害が出て、御前試合が一時中断になるなんて!」


 そう言ったブロイエさんの声色は明るく、嫌みっぽさは全く無かった。純粋に、この前代未聞な状況を面白がっているらしい。御前試合の企画、運営担当者のはずなのに。私が言うのもなんだけど、こういうイベント事でトラブルが起きると、運営担当者が責任を取らされるものじゃないの? 面白がっていて大丈夫なの?


「確かに、今までには無い状況になりましたね」


 答えたラインヴァイスは苦笑を漏らしていた。流石のラインヴァイスでも、まさか観客の皆さんに被害が及ぶような魔術を私が使うなんて思っていなかったのだろう。もしかしたら、少し呆れているのかもしれない。


「そうだな」


 短く同意の言葉を述べたシュヴァルツはと言うと、腕を組んで闘技場を睨んでいた。もしかして……怒ってる?


「あの……えっと……シュヴァルツ?」


「何だ」


「こんな事になったの、怒ってる?」


「いや」


 シュヴァルツが素っ気無い。でも、不機嫌オーラは出ていないし、言葉通り怒ってはいないのだろう。でも、何で素っ気無いの? はっ! まさか! ラインヴァイスみたいに呆れている?


「じゃ、じゃあ、呆れてる?」


「いや」


「じゃあ、どうしてそんな――」


「アオイ。この後も、あれを使う気でいるか」


「あれ?」


「リヒトによる目潰し」


「うん、まあ……。使うかもしれないし、使わないかもしれないし……」


「そうか」


 シュヴァルツは顎に手を当て、尚も闘技場を睨んでいる。この顔、思案顔しているだけなのかもしれない。でも、なんつー怖い顔だ。もう少しマイルドな表情は出来ないものだろうか? せっかくの綺麗な顔が勿体ない。


「観客席には万が一に備え、厳重に結界を施している。しかし、リヒトを防ぐ事は出来ぬ」


 そっか。観客席には結界が張ってあるのか。よくよく考えてみると、魔術も使用可の試合だし、それくらいは準備していて当たり前なのかもしれない。あまり気にしていなかったけど。にしても、リヒトって結界で消せないものなのか。魔術の光なのに。知らなかった。


「そうだったんだ」


「ああ。故に、本戦ではあの様な大規模展開のリヒトは使用を禁ずる」


 リヒトは魔法陣の展開が早く出来るから、とっても使い勝手が良いんだけどなぁ。得意な魔術の一つなのに。……いや、待てよ。大規模展開しなきゃ良いんじゃないか? リヒトの使用を禁止されたんじゃなくて、大規模展開のリヒトの使用を禁止されただけなんだし!


「分かった。大規模展開のリヒトはもう使わない」


 私が頷くと、シュヴァルツが横目でこちらを見た。口元が僅かに笑みの形に歪んでいる。懸念事項が晴れたからか、少し機嫌が良いみたいだ。にしても、ブロイエさんよりシュヴァルツの方が、御前試合の運営担当者みたいになっている。良いのか、それで。


「じゃあ、そろそろ本戦始めよっか~? 観客もだいぶ落ち着いたみたいだし」


 ブロイエさんに言われ、観客席に目を向ける。すると、観客の大半がソワソワとした様子で何かを待っているようだった。言わずもがな、本戦開始を待っているのだろう。私の試合終了直後とは違い、落ち着いていると言えば落ち着いているのかな?


「では、私はこれで」


 ラインヴァイスは椅子から立ち上がると、ぺこりと頭を下げ、転移魔法陣の上に乗った。私が手を振ると、姿が掻き消える瞬間、ラインヴァイスが柔らかく微笑んでくれる。余裕ありそうな表情だ。近衛師団長だし、流石に一回戦で負けたりはしないよね? 大丈夫だよね?


「ラインヴァイス、勝てるよね? 何か、私がドキドキしてきたんだけど」


「心配無用だ」


 私の呟きに、シュヴァルツが短く答える。彼は腕を組み、椅子にふんぞり返って闘技場を見下ろしていた。


「シュヴァルツはどちらかと言うとさ、イェガーがラインヴァイス相手にどこまで健闘するか見たいんでしょ?」


「ああ」


 ブロイエさんの問いに、シュヴァルツが短く返事をする。イェガーさんって、あの火の魔術師の厳ついおっさんかぁ。見た目だけならおっさんの方が強そうだけど、シュヴァルツもブロイエさんも、ラインヴァイスの方が強いと思っているらしい。


「ラインヴァイスってそんなに強いの?」


「強い」


 シュヴァルツがこういう風にきっぱりと断言するの、なかなか珍しい。いつもは「ああ」か「いや」のイエスかノーで答えるのに……。ラインヴァイスの実力を認めている証拠なのかな? 少しだけラインヴァイスが羨ましい。私も実力を認めてもらえるようになりたいな。


「この国で、ラインヴァイスと互角に渡り合えるのは、シュヴァルツと僕、それに、ノイモーントくらいなものじゃない?」


「だろうな」


 シュヴァルツとブロイエさんは分かる。ラインヴァイスに魔術だったり剣術だったりを教えた師匠だから。でも、ノイモーントって……。強いの? 呪術師なのに。


「ノイモーントも?」


「あれ? アオイさん、呪術の最高位魔術、知らない?」


 呪術の最高位魔術? アイリスが今日の実況の為に、色々な種類の魔法陣をブロイエさんに描いてもらって暗記していたけど、その中にあったような……。うーんと……。


「……あ。即死と石化!」


「そう。魔法陣展開に時間が掛かるのがネックだけど、あれを防ぐには、ラインヴァイスだって相応の結界を使わないといけない。それにさ、ノイモーントはかなり小さい頃から、兄さんに剣術を叩き込まれたんだ。剣の腕も超一流なんだよ。そうは見えないだろうけど」


「兄さんって……。シュヴァルツのお父さん? 先代の竜王?」


「そ。ノイモーントは小さい頃、シュヴァルツの遊び相手兼従者だったから」


「へ~。じゃあ、シュヴァルツとノイモーントって幼馴染ってヤツなんですか?」


「うん。まあ、それに近いね。シュヴァルツが魔術や剣術を学んでいる時も、ず~っと一緒に過ごしてたんだよ。僕も兄さんもノイモーントの事、可愛がっていたしさ、シュヴァルツに教えるついでに魔術や剣術なんかを色々教えたんだよね」


 ブロイエさんは昔を懐かしむように目を細めた。それにしても、シュヴァルツとノイモーントが幼馴染ねぇ。何か、あんまりイメージじゃないな。でも、考えてみると、ラインヴァイスが怪我をした時、私の世話係をノイモーントに任せた辺り、彼の事をある程度以上に信頼しているのかもしれない。


「フォーゲルシメーレとヴォルフも、ノイモーント程小さい頃からじゃないけど、シュヴァルツの遊び相手兼従者だったんだよ。もう、僕、三人が不憫で不憫で……。柱の陰で何度涙を流した事か」


「……え?」


「シュヴァルツが無理難題押し付けるから、あの三人、いつも生傷だらけでさぁ。フォーゲルシメーレが薬師なったのだって、傷薬を自作し始めたのがきっかけだったし」


 そ、そっか。小さい頃のシュヴァルツって暴君だったのか。イメージ通りと言えばイメージ通りだけど、イメージじゃないと言えばイメージじゃない。


 小さい頃のシュヴァルツかぁ。ちょっと見てみたいな。今みたいにでっかくなくて、ちんまりしてて……。目つきが悪くて生意気な感じ、かな? ……おや? ちょっと可愛いんじゃないだろうか?


「ブロイエ。昔話は良い。そろそろ始めろ」


 そう言ったシュヴァルツから不機嫌なオーラが……。小さい頃の事、あまり知られたくないらしい。不機嫌なのはきっと照れ隠しだ。くくく。今のシュヴァルツ、ちょっと可愛い。


「はいはい」


 ブロイエさんはこくりと頷き、手にした杖を掲げた。とうとう本戦開始だ。ドキドキ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ