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転移先が大魔王城ってどういう事よ?  作者: ゆきんこ
第二章

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合コン 1

 とうとうこの日になった。そう。私とシュヴァルツ主催の合コンの開催日だ。参加してくれるリリー、フランソワーズ、ミーナに喜んでもらう為、今日まで一生懸命計画を練った。


 開催場所は薔薇園にしたし、当初はお茶会の予定だったけど、夕食会に変更をした。だって、こんな見事な薔薇園で夕暮れ時にお食事会とか、良い出会いが無くても大抵の女の子なら喜んでくれそうだと思ったから。ここまで立派な庭園を気づき上げたリーラに感謝だ。ついでに、リーラ亡き後、この薔薇園を守り続けているシュヴァルツにも感謝しておこう。今日は、みんなが楽しめる合コンになると良いな。


 私はリリーとフランソワーズとミーナを先導しながら、ガゼボ脇に用意されたテーブルへと向かった。後ろから付いて来る三人は、普段通りの格好をしてもらっている。敢えてお洒落はさせていない。だって、独身トリオには普段通りの三人を知ってもらいたかったから。同じ理由で、独身トリオも普段通りの格好をしているはずだ。


 三人の普段と違う点を挙げるとしたら、その表情くらいだろうか。竜王城に足を踏み入れた時から緊張しているようで、三人とも顔が強張っている。竜王城に入れる機会も、魔人族とお食事会をする機会もそうそう無いからだろう。


「みんな、そんな顔しなくても大丈夫だよ。私とアイリスもお食事会の間はずっといるし、シュヴァルツもラインヴァイスもいてくれるから」


 立ち止まって後方の三人を振り向く。すると、ミーナが微妙な表情で口を開いた。


「アオイさんとアイリスは置いておいて、竜王様とラインヴァイス様もいらっしゃるとか、逆に緊張するんですけど」


 ああ、そっか。不測の事態に備えてと思っていたけど、国のトップも一緒にいるとか、緊張しない方がおかしいのか。配慮したつもりだったのに、余計なお世話ってヤツだった……。


「じゃ、じゃあさ、シュヴァルツとラインヴァイスには帰ってもらうよ。それなら緊張しないでしょ?」


「アオイ……。流石に、それはお二人に失礼だろう」


 あれ? フランソワーズに呆れられちゃった。でも、緊張しちゃって盛り上がらないより、私はそっちの方が良いと思うんだけどなぁ。シュヴァルツもラインヴァイスも、ちゃんと説明すれば分かってくれると思う。ラインヴァイスがいなくなると、アイリスの仕事が増えて大変だろうけど、私も手伝えば良いだけだし。


「それに、今回、インキュバス族がいるのだろう。お二人にはいてもらった方が良い」


 ん? インキュバス族?  部族名っぽいな。消去法でいくと――。


「インキュバス族って? もしかして――」


「第一連隊長」


 第一連隊長って事は、やっぱりノイモーントか。でも、何でフランソワーズはノイモーントがインキュバス族だって事を知っているのだろう? 私ですら知らなかったのに。


「ねえ? フランソワーズは何でノイモーントの部族、知ってるの? もしかして、どこかで会った事あるの?」


 私の問いに、フランソワーズは眉間に皺を寄せた。あまり触れられたくない話題らしい。ノイモーント絡みで、何か嫌な思いでもしたのかなぁ? ノイモーントがやりそうな事、やりそうな事……。あ! もしかして、痴漢された、とか?


「もしかして、ノイモーントに変な事されたの?」


「変な事?」


「そう。身体触られたりとか! もしそうなら、一発殴って良いよ。私が許す!」


 私が親指を上げ、ニカッと笑うと、フランソワーズが笑みを漏らした。リリーとミーナもつられるように微笑している。


 ノイモーントが痴漢お兄さんだって事は知っていたけど、まさかフランソワーズにまで痴漢行為をしていたなんて! 決めた。後で思いっきりぶん殴ってやろう。女の敵は成敗だ!


「ああ、そうだな。気が向いたら、な」


「その時は、私も手伝うからね! じゃあ、そろそろ行こっか! みんな待ってるから」


 三人の表情が少し柔らかくなったのを見届け、私は再びテーブルを目指して歩を進めた。


 白いクロスが掛けられたテーブルの上には、所狭しと豪華な料理が並べられていた。パーティメニューっぽい、大皿料理ばかりだ。普段はラインヴァイスやアイリスが一皿一皿給仕をしてくれるけど、偶にはこういうのも良いかもしれない。パーティって感じで、ワクワクしちゃう!


 私達がテーブルに到着すると、独身トリオとシュヴァルツ、ラインヴァイスが一斉にこちらを向いた。首を長くして待っていましたと、独身トリオの顔に書いてあるような……。あんまりがっつくと、女の子に逃げられるよ。


「お待たせしましたぁ!」


 私はそう言うと、笑顔でぺこりと頭を下げた。おうっ! 独身トリオの視線がマジすぎて怖い! みんな、肉食系だねぇ。


 一番奥の席に陣取るシュヴァルツの隣に私が進むと、ノイモーントの正面にフランソワーズが、フォーゲルシメーレの正面にリリーが、ヴォルフの正面にミーナが来た。期せずして、何かしらの面識だったり因縁だったりがありそうな人がそれぞれの正面にいる。これはこれで席順は成功なのか? あまり考えず、付いて来た順番に座っちゃったけど、もう少し作戦とかを考えた方が良かったのかな? 合コンなんて主催した事ないし、よく分からん!


「じゃあ、自己紹介から始めようか?」


 合コンと言えば、まず初めに自己紹介だ。相手の第一印象を決める一大イベントだし、皆には気合を入れて自己紹介してもらいたい。


 ぐるっと全員を見回す。すると、ノイモーントは正面のフランソワーズを、フランソワーズはテーブルの上にずらっと並んだ豪華な料理を見つめていた。リリーとフォーゲルシメーレはお互いに微笑みあっている。ミーナはヴォルフを爛々と輝く瞳で見つめているし、ヴォルフはミーナの視線に耐えきれなかったのか、明後日の方を向いて口笛を吹いていた。何、このカオスな感じ……。合コンって、こんな感じだっけ? 特にフランソワーズ。彼女は特に間違っていると思う。それにみんなして、私の話、全く聞いてなくないか?


「あの、すいませーん。自己紹介、しますよー。もしも~し?」


 ああ、やっぱり聞いていない。どうしよう……。この際、シュヴァルツに適当に挨拶させて、ご飯食べ始めちゃおうかなぁ?


「ノイモーント。フォーゲルシメーレ。ヴォルフ」


『はいっ』


 シュヴァルツが腕を組みながら静かな口調で独身トリオを呼ぶ。すると、彼らはピシッと背筋を伸ばし、それはそれは大変良い返事をした。躾がよく行き届いてるねぇ。


「娘たちに名を名乗れ」


『はいっ!』


 シュヴァルツの命令に、独身トリオは青い顔でこくこくと頷いている。私の隣から、半端無い威圧感が漂ってきているんですが……。シュヴァルツさん。これは果し合いじゃないですからね? 和やかなお食事会なんですから。その辺、きちんと分かっていますよね?


「では、私から。第一連隊長のノイモーントと申します。普段の仕事は仕立てを行っております。趣味は、美しい女性に贈るドレスデザインを考える事、でしょうかね。夢は、妻のドレスを作る事です」


 ノイモーントは正面のフランソワーズに流し目をしている。しかし、フランソワーズはそれに気が付いているのかいないのか、ジッと目の前の食事を見つめていた。あの、フランソワーズさん? 一応、出会いの場、ですからね? そんな、今にもよだれが垂れそうな顔でご飯を見つめないで下さい。食い意地が張り過ぎだと思います。


「第二連隊長のフォーゲルシメーレです。普段は薬師をしております。リリー嬢の病の治療を行っていると申し上げれば、他のお嬢様方もお分かりになるでしょうか?」


 そう言い終わると、フォーゲルシメーレはリリーに微笑みかけた。リリーもフォーゲルシメーレに微笑みを返す。あの、お二人さん? 良い雰囲気の所申し訳ないのですが、そんなど真ん中の席で二人の世界を作らないで下さい。他の方への配慮をお願いします。


「第三連隊長のヴォルフ。普段、農園で働いて、ます……」


 そう言ったヴォルフは、ビクビクとしていて怯える子犬のような眼差しをしていた。こんなあからさまに、「貴方の事、狙っていますよ」という目つきで見られた事が無いからだろう。でもさ、ヴォルフさん。貴方、一応狼ですよね? 肉食系ですよね? 逆に喰ってやるくらいの気概、見せて下さいよ。このままじゃ、オオカミじゃなくてヘタレワンコです。


「じゃ、じゃあ、女の子達も自己紹介してね」


 私は引きつった笑みを浮かべつつ、ジッと目の前の食事を見つめているフランソワーズへ腕を伸ばすと、彼女の肩をツンツンと突っついた。フランソワーズはハッとしたように私を見たと思ったら、口元を拭って表情を引き締めた。よだれ、出そうじゃなくて出てたのね……。しっかりしてよ……。


「フランソワーズ。孤児院の世話係兼、用心棒だ」


 フランソワーズの自己紹介、愛想の欠片も無い。それでも、ノイモーントはじめ、男性陣は笑顔で会釈をしている。みんな大人だねぇ。


「フランソワーズって、孤児院の用心棒だったんだね。私、てっきりあそこ出身なのかと思ってたよ」


 話題を広げなければ! 私はフランソワーズの自己紹介で引っ掛かった事を口にした。フランソワーズの眉間に皺が寄る。あれ? もしかして、触れたらいけない話題だった?


「フランソワーズはある日、ボロボロで孤児院にやって来たんですの。丁度、働き盛りの人達が出稼ぎに出てしまった直後でした。冒険者だって事で、小さい子の世話係兼、魔物が出た時の対応係として住み込みで働かせて欲しいって言ってきたのですけれど、働くと言っても、お給金なんてお小遣い程度しか払えませんでしょ? 主に現物支給での報酬になると説明しても、それならそれで全く問題無いって」


 そう答えたのはリリーだ。要するに、フランソワーズは衣食住を保障してもらう代わりに、みんなの面倒を引き受けているって事か。実りが良い仕事じゃないけど、それはそれでありだと思う。冒険者なんて危なそうな仕事より、小さい子達の面倒を見る仕事の方が、私だってしたいと思うもん。


「へえ。そうだったんだ。全然知らなかった」


「彼女、森で行き倒れていたんですよ。雪狼の毛皮を狙って森に入ったは良いが、パーティが全滅。この辺ではよくある話です。偶々、私が通り掛かったから良かったものの、彼女、怪我と空腹で死ぬところだったんですから」


 そう言ったノイモーントはクスクスと笑っている。もしかしなくても、行き倒れのフランソワーズをノイモーントが助けた? にしては、助けられた側のフランソワーズがあまり良い感情を持っていないような……。


「ノイモーントがフランソワーズを助けたって事で合ってる?」


「ええ。その後、孤児院までたどり着いたのでしょう。そうそう。彼女、私が魔人族だと知ると、お礼も言わずに逃げ出したんですよ。酷いと思いません?」


 ノイモーントは肩を竦めて溜め息を吐いた。でも、本気で傷ついているような雰囲気ではない。これは……演技っぽいな。


 ああ、そっか。フランソワーズがノイモーントに対し、あまり良い感情を抱いていないように見える理由が分かった。逃げた事が後ろめたいし、気まずいからだ。それに、私達に逃げた事を知られたくないっていうのもありそう。


「あ、あれは……。あんな風に迫られて……それで……その……」


 フランソワーズは赤くなりながら、もにょもにょと何かを言っている。そんなフランソワーズを、ノイモーントが目を細めて見つめていた。ふむふむ……。ノイモーントはフランソワーズ狙いなのね。彼はなかなかの策士なのかもしれない。さっきの演技で、フランソワーズの気を引くのは大成功したみたいだ。


「じゃあ、次はリリー。自己紹介してね」


 フランソワーズをこのまま追い詰めると、「帰る」とか言い出しそうだし、ここは話題転換だ。唐突だったからか、少し驚いた表情をしていたリリーだったが、こくりと小さく頷くと、おずおずと口を開いた。


「リリーと申します。孤児院では最年長ですので、責任者をさせて頂いておりますが、名ばかり責任者で……。昔から身体が弱く、体調を崩すことが多かったので、家事はあまり得意ではありません。フォーゲルシメーレ様に持病を診て頂いております」


「家事は得意じゃないって言ってもね、料理はとっても上手なんだよ。偶に、リリーの作ったお昼ご飯、ご馳走になるけど、凄く美味しいんだから!」


 私がフォローを入れると、リリーが恥ずかしそうに俯いた。リリーは控えめな性格だから、苦手な事とか、気にしている事とかを前面に押し出してしまう。それはそれで奥ゆかしいのかもしれないけど、こういう場では良くないと思う。絶対に損をする。


「あとね、繕い物も上手なんだよ。穴が開いた洋服はね、リリーが繕っているんだって。手先が器用なんだよ! それに――」


「ア、アオイ……」


 リリーが消え入りそうな声で私の名を呼び、真っ赤な顔で首を横に振った。褒められるのがよっぽど恥ずかしいらしい。リリーみたいな美少女が、今にも泣きそうな顔で何かを訴えかける目をするとか! 何、この胸キュン! 鼻血、出ちゃう!


「リリー。今度、是非とも私に手料理をご馳走して下さい」


 そう言ったフォーゲルシメーレがとろけるような笑みを浮かべると、リリーがはにかみながらこくりと頷いた。う~ん。またしても二人の世界が出来上がってしまった。この二人は放っておいても上手くいきそうな気がする。


「じゃ、じゃあ、ミーナ。自己紹介お願い」


「はい。ミーナと申します。リリーの妹です。家事全般得意です! だから、ヴォルフ様! 私と結婚して下さい!」


 ミーナの突然の逆プロポーズに、その場にいた全員の視線がミーナに集まった。プロポーズされたヴォルフはというと、ギョッとしたようにミーナを見つめたまま、石像のように固まっている。


「私、結婚するならヴォルフ様以外、考えられないんです! 他の男の人なんて嫌なんです! ヴォルフ様、私と結婚して下さい! 絶対に幸せにしてみせますから! ね? お願いします!」


 必死に懇願するミーナと固まるヴォルフに、全員が興味津々といった視線を向けている。ミーナがヴォルフに好意を持っているらしい事は、私は初めから分かっていた。それでもこんな早急に逆プロポーズするとか予想外だ……。

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