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看板娘(人間とは言っていない)



「とりあえずそこ座れ」


「はい」


「私はどこ座ればいい?」


「何で玄翁さんまで……」


「マクラギが不当な労働を強いるかも知れないでしょ? その監視」


「アンタはオカンか」


 ロボットを中にいれ、居住スペースにあるダイニングテーブルに座らせる。

 ホントに何故だか知らないが玄翁さんまで着いてきたのでいないこととする。俺はとりあえずそれらしいことをしようと思う。


 ダイニングテーブルに座るロボットはどことなく嬉しそうで、少し緊張している面達だった。

 機械も緊張するんだな。どんなプログラムをすればそんな感情を作れるんだろうか。


「えぇっと、名前は?」


「名前は……製造ナンバーならありますが、その個体を示す名は御座いません」


「そ。なら、今からロボ娘な」


「ちょ、ちょっと! 幾らなんでも安直すぎない!?」


 これから仕事をするにあたって名前を知らないのはいかがなものかと思い、名前を訊ねるが名前は無いと言う。

 しょうがないので寛容な心を持つ俺が直々に名前を付けてやると、それに異を唱えるも玄翁さん。

 玄翁さんは何故か俺の隣に座っている。傍らに木槌を置いているのを見ると、どうやら俺をそれで殴ろうとしているらしい。

 俺は暴力は好まない(自分からしないと言っていない)。


「そうカッカするな。見てみろよ」


「え?」


「……ー! 感激です。居場所までだけではなく、名まで与えてもらえるなんて……」


「な?」


「納得いかない!」


 というわけで名前はロボ娘で決定。

 本人が喜んでいるんだから良いんだよ。


 ロボ娘は自分に名前を付けてもらったのがそんなに嬉しいのか、目に見えてご機嫌になっている。

 随分と感情と表情が豊かなロボットだこと。


 そう言えば気にならなかったが、人間が造ったから当たり前なような気がするがかなり整った顔立ちをしている。傍から見たらレベルの高い美少女だ。

 しかし、長年放置されていたためにところどころにヒビや亀裂が見える。左目は長い前髪で見えにくいが瞼の機能が停止しているらしく開きっぱなしだ。


「受け付けやっていたくらいなんだから名前ぐらい付けてもらえなかったのか? 今日日、ペットにも名前が付いているぞ」


「そうですね。私以外のロボットには名前が付けられているのも多くいましたが、数が多過ぎて把握できないという理由で製造ナンバーで管理されるようになりました」


「そうか」


「ですので、その……名前を付けてもらうことが、一つの夢でした」


「それはよござんした」


 夢が叶ってよかったなー。


「んでさ、さっきから気になってたけどよ、糞……玄翁の爺さんに直してもらったんじゃないのか? ところどころ欠陥が見えるけど」


「あ、それは私が説明するよ」


 玄翁さんが口を挟む。

 詳しく説明できるなら何も文句はない。もしかしたら修理された本人じゃなくて周りで見ていた人の方がよく分かっているかもしれないし。


「まぁ、早い話、一晩じゃ直しきれなかったのよ」


「ジェバンニの様にはいかないか」


 確かにこのテクノロジーの塊を一晩出直すなんて人間業じゃないな。

 糞ジジイからしたら似ているようで全く別の者に触れたものだからな。


 よく見てみればロボ娘の銀髪もところどころ抜けているらしく、地肌が見え隠れしている。

 なんとも犯罪臭がする。俺にそんな性癖は無い。


「あー……それじゃあ自己アピールしてくれ。自分はこんなことが出来ますーとか」


「はい。それでは……私はご存知の通りロボットです。ですので、脳でいうところに使われているPCは計算が得意です。また、力も成人男性よりも発揮できるので力仕事も可能です。また、目から光線を出せるので戦闘面でも役に立てると私は思います」


「戦闘面では使うつもりはないから光線の下りはいらないな。後、その光線の機能をアンインストールしておけ」


「かしこまりました」


 困った時の自己アピールだ。

 どういう質問をして良いのか分からないため、全て丸投げしてみたが上手く誤魔化せたようだ。

 鍛冶屋で力仕事が出来るのは良いな。計算能力は要らない、帳簿とか簿記は俺がする。

 幾らロボットだからと言って欲求が無いわけではない。さっき、夢が叶ったと言っていたから欲求はあるはず。

 簿記を任せて店の金を持っていかれたら俺が困る。せいぜい、つけさせると言ったら何が売れたのかくらいだな。


「後は……そうですね。一応、人間の男性と性行為は出来るよう造られています。子供は出来ませんが……」


「俺は異種姦には興味ない。それもアンインストールしておけ」


「……これは昨日ではなくパーツがそのように出来ていますので、アンインストールは不可能です」


「んじゃ、壊れるまで使うな」


「かしこまりました」


 俺は至ってノーマルな性癖だ。人外とはする気になれん。

 いや、待てよ……それを使って男を陥れる……もといそういう商売で稼ぐことも出来るな。

 金の匂いがする。


 しかし、それを良く思わない人物が一人。


「ロボ娘ちゃん。マクラギに、枕営業しろって言われてもしちゃダメだからね」


「それは……お約束できません。御主人様の御意向に背くことは……」


「残念だったな、玄翁さん」


 残念、ロボ娘は玄翁さんのではなく俺の所有物だからな。

 俺のなら何に使っても文句は言わせない。


 隣から凄まじい殺気を感じるが、無視して次に移る。


「そんで? そっちからは何か要望はあるのか?」


「要望?」


「ほら、休日は週何回欲しいのかとか、給与はどれだけ欲しいのかとか」


 幾らロボットだからと言って休日や給与は与えないというわけにはいかない。

 さっきの通り、コレにだって心はあるんだから欲望もある。それを抑圧して働かせたらいつか爆発してしまう。

 職員のことも視野に入れなくては良い経営者にはなれない。俺は頭ごなしに怒鳴るバカとは違う。


「へぇ、さっきの口振りとは思えない程良心的ね」


「働くからにはそれ相応の対価を与えるのが労働だ。それで不当な労働を強いるのは経営者の風上にも置けん」


「ちょっと見直した」


 玄翁さん、ちょろいぞ。


「私は基本的に食物を摂取せずとも定期的にオイルを摂取すれば十分です」


「オイル? 機械油で良いのか? 具体的にはどれくらいの量さ」


「機械油で構いません。量はコップ一杯を月に一回で稼働できます」


 このロボ娘、月にコップ一杯の機械油で稼働できるそうだ。

 低燃費なのかは知らないが、機械油なら似たようなものが簡単に手に入るから問題ない。

 俺だって鍛冶で使うし、切らすことは無いだろう。


「それは賄いで良いか。玄翁さん、ここの最低賃金でどれくらい?」


「最低賃金? 確か一月銅貨七十五枚だったかなぁ」


「なら、当面の給与は一月銅貨七十五枚と機械油な。あと、一年ごとに銅貨十枚を昇給とする」


「い、いいのですか? 私が他の方たちと同じ扱いで……」


「奴隷だって給与はもらえるさ。俺の扱いがこうなだけで」


 どんどんと決まっていくことに少し焦りを感じたのかロボ娘が声を上げる。

 俺は何も働かねぇ奴に何もするつもりはないが、働く意思のある者に何故ケチケチした扱いはしない。

 サーカスで働く動物たちだってそれ相応の給与はもらっている。それと何ら変わらない。


 後は……こんなものか。

 よほど酷いものではない限り雇うつもりだったからな。人手は追々雇うつもりだったわけだし、それまでの代わりとしては問題ないだろう。

 一生遊んで暮らせる金を払ってコレを雇ったと思えば何も問題は……ありすぎるな。やっぱり売り払えるなら売り払いたい。


「よし、とりあえず採用な。これからよろしくお願いします」


「お、お願いします」


「玄翁さんからは何かあるか?」


 面接の終わりとして玄翁さんに話を振る。

 最初、玄翁さんは俺のことを親の仇を見るような眼で監視していたが、何も問題ないと判断したのか途中からはそのさっきは無くなっていた。

 当の玄翁さんは腕を組んで俺を見ている。なんか後ろめたいことでもあったか?


「ねぇ、マクラギ。マクラギってさ、何か自分ルールみたいなものってある?」


「そりゃあるさ」


「でさ、それは自分で守る?」


「自分ルールだからな。自分で守らないなら誰が守るんだ?」


「それならいいの。マクラギ、ロボ娘ちゃんに酷いことしたら承知しないからね」


「へいへい」


 何か意図の読めない質問をされたが、玄翁さんからは何も言うことは無いみたいだ。

 これで面接は終わり。この鍛冶屋にもとうとう従業員が出来たか。バイトだけども。


 これで留守番を任せれるところまでいければ、俺は好きな時に炭鉱へ採掘しに行くことが出来る。

 そうなれば生産性も上がるし、裏で鍛冶をすることも出来る。


「早速だが仕事の説明に移るぞ」


「はいっ」


 表情が少し豊かすぎるような気もするが、なんだかなぁ……これから身内になるのか。

 まぁ、扱き使ってやることにする。

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