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アルヴァンティア8

■□■□■




20××年.05月03日.木曜日.15時45分.



時は遡り、漫画同好会の部室。

その部室は明らかに開き扉なのに実はそれはフェイクでスライドしなければ空かない扉、という悪戯の産物や幾何学的な模様や謎の資料が貼られたボード、やけに豪華な椅子など、正直言うと訳のわからないものがひしめいていた。


曰く、それは彼女の城。

だが、その城の主は今、目の前の椅子に腰掛けてガン見してくる一人の女生徒の眼光に気圧されていた。


「…今日もオカルト研究会です…よね?」


美波(ミナミ) 莉緒(リオ)は真っ白な肌と肩口で切りそろえられた黒い髪、そして無口。

なのだが、椅子からやや乗り出す彼女をみるとなかなかその無口なイメージには辿り着かなかった。


「うっ……わ、分かった!分かったから!」


これには自称城の主である真枝(サナエダ) 希咲(キサキ)もタジタジだった。

無口な人の本気とは思ったよりも迫力があって怖いのだ。


「じゃあ議題…ゾ「却下ぁぁぁ!!」…分かった…」


だが、お決まりの却下は忘れない。

まぁ今回は数日の間の活動が全てゾンビだったので美波も強くは出れなかった。

希咲もそれは分かっていたのか、今日はゾンビとは違う話題を持ち出した。


「本日の議題は…【行方不明事件】!!!」


「行方不明…?」


どうやら美波は知らなかったらしく、首を可愛らしく横に倒した。

表情はあまり変わっていないが、付き合いの長さから希咲には分かるのだろう。

一度首肯すると話を続けた。


「最近どうやら我がテリトリーである○○区で学生が行方不明になる事件が散発的に起きているらしい」


希咲は真剣な表情になり、美波は椅子から立ち上がりボードのほうに歩き出した。


キュ、キュキュュュー。


美波はボードの前に立ち、ペンで乱雑に書き始めた。


「○○区での行方不明多発事件…ふむ。上出来だ。そして無駄に字がうまい…」


「習字やってた…」


「ぬぬ…自慢か…まぁいい。傍聴人のハルがいないのは残念だが、話を続けよう」


そう言って、ハルのいないオカルト研究会の活動は始まった。


「先日、エージェント1の調査により、近隣の都立岸坂総合高校の生徒が行方不明になっている事が判明した」


「思ったより近い……名前は…」


「名前は赤根(アカネ) 千尋(チヒロ)、5月1日の部活動後に行方不明、警察には2日に届け出があったらしい」


「…希咲さんはどう見る?…」


「この件、それは神隠しだと私は推測する。見ろ。これが我が精鋭。エージェント1の撮影した不可解な現象の跡だ」


希咲はまたも真面目な表情で胸のポケットから一枚の写真を取り出した。


それは公園に残された青い自転車と、一点に吸い込まれそうになったのか、固定されていた場所よりも数mも離れた場所で不自然なほどに壊れていたブランコが写されている写真だった。


「…鷹梅春哉は行方不明になった」


その言葉を聞いた美波は椅子を吹き飛ばすような勢いで立ち上がり、顔面を蒼白とさせた。

まさかこの前まで隣で笑っていた仲間がいなくなるとは思ってもいなかったのだろう。


その時、部室のスライド扉が酷く強く開かれようとして、扉が外れた。

スライド扉と知らずに開けたのだろう。

強い負荷で下と上の金具から外されたようだった。


「「え?」」


いきなりの暴挙に二人の女性陣は固まるが、希咲は煙から現れた生徒を見て笑った。


「成る程。ようこそ、エージェント…3()


「エージェント…3…?」


「あぁ、美波には言っていなかったな。校外任務を主とする1、2に次ぐ3番目のエージェント。名前は…」


「自己紹介はあたしがするよ。1年2組、木原(キハラ) 麗華(レイカ)だよ。よろしく美波先輩っ」


その女生徒は私服だった。

ラフなパーカーを身に纏い、

短パンから覗く健康的な脚は魅力的でさえあり、そしてその先の足にはカラフルなスニーカーを履いている。

帽子をかぶっているが、かぶりは浅いようで綺麗な顔がしっかりと美波の目にも届いていた。

麗華となのる女生徒はウインクをするような軽さで美波に挨拶をした。

どうやら外した扉については無視するようだ。


「それでは麗華は扉を直しておけ。我々は会議を続ける」


「わ、分かりましたぁー」


「では美波、始めようか。行方不明事件を、前例から議論していく」


そうして今まで以上に真剣な希咲と、麗華の登場により僅かに落ち着いた様子の美波は行方不明事件について話し出すのだった。


「このためだけにあたしを呼ぶなんて…よっぽど美波先輩が大事なんだねぇ…」


麗華はケータイを取り出して、メールの画面を閉じた。

その声は麗華自身の耳以外には届かなかった。


そのころ…


「警察!ハルを探してくれ!今すぐに!」


「鷹梅春哉くんのご両親から行方不明の届け出は出ています!心配な気持ちは分かりますが暫くお待ちください!!お願いです!」


「…本当ですか…?」


警察署のまえで堂々と騒ぎまくる彼。

それは都立秋春高校の制服をだらしなく身に纏い、明るい茶髪をワックスとスプレーで固めた一見チャラそうな生徒。

ハルの友人、井之(イノ) 友平(トモヒラ)だった。


その真剣な表情と声色に、警察も無理に彼を捕らえる事はできず、今に至る。

警察は捜索を早めるといい、彼をなだめた。

流石にそれ以上騒ぐのは無駄だと感じたのか、友平は落ち着きを取り戻して警察に謝罪した。


「あ、ハルの部活は確か…」


そこで友平は思い出す。

ハルが話していた漫画同好会の裏の顔を。


「あ、待ちなさい君!!」


友平は警察の事など目にもくれず秋春高校に引き返した。


そして…


「ここまで賑やかになったのは創立してから初めてかもしれないな」


「………」


「あーあたしは大人数苦手なのに…」


「ハルの事を知らないか!」


ザ・協調性がない人達がオカルト研究会に集まっていた。

希咲は不適に笑い、美波は小説を片手に黙り込んでしまった。

麗華はもともと大人数が苦手らしくわーわー騒いでいる。

友平にいたっては部室にきてからそれしか言っていないし、さらに麗華を不機嫌にさせる出来事も起こしていた。


「あーぁ。せっかく直したのに…」


という訳だ。

麗華が扉を嵌め直した後、その扉を見事に破壊してみせたのが友平だった。

流石にそれに唖然としたメンバーだったが、

要件がハルの事だと知り、処罰は後回しにして今に至る。


「取り敢えず、赤根 千尋が発見される可能性はゼロじゃない…」


「…いまなんて…?」


美波が希咲のその言葉に小説から目を話して問いかける。

話は聞いていたようだ。


「赤根 千尋?誰なんだ?」


「あたし達が調べた所だと都立岸坂総合高校の2年生で今月1日に行方不明になった」


麗華が話の流れの分からない友平をサポートしながら話は進んでいく。


「なぜだか分かるか?」


「前例…?」


「ご名答。我がエージェント達の調査により、○○区での行方不明者の中に1人だけ発見された人物がいる」


「それは…ハルじゃないのか…」


友平は焦りを隠せない様子だ。

友平でも最近多発する行方不明事件は知っていた。

そして誰も見つかっていないと聞いていた。

1人が助かったと聞いても安心などできない。


「名前は…桐矢 礼奈。数日前に他県で身柄を確保され、いまは○○区の病院にいる」


「なら!その人に聞けば!」


友平の我慢は限界を迎えようとしていた。

大切な友人が消えた事に疲れ果てていたのだろう。


「待って…桐矢 礼奈って確か…」


麗華は恐る恐る言った。

情報通の彼女は思い出したのだろう。


「あぁ、桐矢 礼奈は記憶喪失だ」


「………そんな…」


友平は崩れ落ち、それから何も言わなくなる。

美波は小説を床に落とし、微動だにしなかった。

希咲は歯を食いしばりながら言葉を続けた。


「警察も動いている。それに今はエージェントも桐矢 礼奈への接触を試みている所だ…」


ハルが居たらこういっただろう。

「え?そんな事までできるの?」と。

だが、この部室にはツッコミ役はいなかった。

そこに立ち上がった友平が決意の炎を瞳に宿して言う。


「俺達で探せないか?ハルの事を」


美波が希望を見つけたようにゆっくりと顔を上げる。

だが、希咲はそれを止めた。


「危険だ。何があるか分からないんだ。被害者との接触までは許可するが、自らで捜査するのは危なすぎる…」


だが、友平は納得できなかった。

それは美波も同じであり、呼ばれただけの麗華も顔を合わせた事はないけれど同じ同好会の仲間が行方不明になったのだから…と思っているようだった。


「…ハルを見つけなきゃ…」


友平は想像以上に追い詰められていた。


「分かった。なら、ハルが消えた所に行くぞ」


「……公園…?」


美波が先ほどの写真を思い出しながら恐る恐ると言った風に話す。


「なら、あたしは赤根 千尋についての情報を集めるわ!」


「頼んだぞ麗華。では、美波とトモヘラだったか?行くぞ」


「お、おう!!後俺の名前は友平だ!!」


そうしてオカルト研究会と友平は、ハルの痕跡を探すために公園に向かった。


だが、公園には既に警察の手が入ったのかブランコにはテープが張られて侵入出来ず、ハルの青い自転車も消えていた。

そして公園のブランコには黒い猫が寄り添うようにして寝ている。

それだけだった。


「やはり警察の手が入った後だと何もない…か」


「でも、何かあるはずだ!」


「….私もそう思う…」


希咲も口では諦めたような事を言っているが、既に制服の腕をまくり臨戦体制だった。


「お前、案外良いやつだな」


「先輩には敬語を使え。それに…私も心配だからな…」


最後の言葉は、希咲からげんこつを食らった友平と早速証拠を探しに入った美波には聞こえなかった。


それから数日。


行方不明だった赤根 千尋が、何事もなかったかのように自宅に帰宅来たことが報道される。


本人は、5月1日から帰宅までの間、記憶が抜け落ちていた。

しかも本人にその自覚は無く、親と接触するまで当日が5月1日の夜であると認識していたとされる。



■□■□■


20××年.05月06日.日曜日.13時08分.異界の街道



「あー暇だなー空飛んでみたいなー」


『人目につく可能性がありますのでお控えください…』


「ん、面倒な事は嫌だからねー」


でも、最近やけにメイが人間臭くなっている気がしなくもない。

勘違いだとは思うんだけど。

いや、愛着が湧いているからそう思うのかな…


「前から何かきてない?」


『前方に生体反応確認、解析。馬と思われます。馬車のようですね』


よく見ると、数キロ先に白い布を被された箱のようなものが見えた。

多分あれが馬車で、その前に見える茶色の何かが馬だろう。

でも、馬車って…普通車とかじゃないのかな。

あ、この前メイがこの世界は中世がなんたらって。

でもロボットあるらしいのに移動手段は馬車なの?

よく分からないなぁ…ロボット作るのに頑張りすぎたとか?


『馬車に魔力を感じる事から魔道具で改良された馬車だと思われます』


あ、成る程ね。

魔法を使えば馬車でも十分なのか、それともまだ文明の初期だから馬車なのか。

多分文明の初期だから馬車なんだろうね。


「あれ、馬車なのに人はいないの?」


『確認できません…』


だとしたらなんか変じゃないかな。

僕はそう思うと同時にエルヴィスを草むらに沈めた。

身体が隠れ切る事はないけれど、取り敢えず道から外れた草原に身を伏せる。


馬車が僕の居た場所を通り過ぎると同時に僕は立ち上がり、馬車の後ろに近づいていく。


「中に生体反応は?…」


『やはりありません』


僕は馬車にかかっている布をおそるおそる開けた。

まず目に入ってきたのは馬車の中にぶちまけられたようにしてこびりつく赤い液体で、

床には胸に剣を突き立てられた血塗れの人が倒れていた。

やはりというべきか、僕はすぐさま頭部の装甲を開いて胃の中のものを全部吐いた。


「うっ……おぇぇぇ…」


数分後、何とか気を取り直した僕は「最近吐きすぎ…」なんて関係の無いことを考えつつ目の前の死体を観察してみた。

血は緑の鹿や巨大亀で慣れていたけれど、人の死体というのはやっぱり嫌だな。あまり見たいとは思わない。

そこで何と無くフユとみたバイト・ハザードを思い出してしまうのだから僕はまだ余裕があるのだろう。


よく見ると、その死体は40代くらいの男性で、全身の身ぐるみを剥がれていた。

他にも馬車の中に荷物は殆どなくて、荒らされたように散らかっていた。


「泥棒に入られたみたいだね…」


『この場合盗賊では…?』


盗賊。


「え?…この世界は盗賊なんているの?」


『いるようですね』


「何で分かるの?データベースにあるの?』


『前方を見れば分かります』


「あーーー本当だ。沢山いる」


馬に乗った汚らしい人が沢山、馬車の来た方向から追っかけて来ていた。

どうやら本当に盗賊はいたらしい。

40代くらいの男性のかたきをとってやる!

なんて思ってはいないけれど、取り敢えずこのままこの場所にいたら襲われると思う。


そしてこの40代くらいの男性、もうおじさんでいいか。

おじさんの二の舞になりそうだ。


『殲滅しますか?』


「ちょっとまてーい」


それは出会い頭に知らない人にラリアットするようなもんだよ…


「取り敢えず話してみてダメそうなら倒そうよ」


『了解しました』


そして近づいてくる馬に乗った盗賊の集団。

僕は既に馬車を引く馬をなだめて停止させている。

すぐに追いついた盗賊達は僕の事をみて驚いたのか少し距離をおいて止まっている。


この世界の人には大きな全身鎧の迫力に気圧されているのかもしれない。

中に入っているのはこんなに小さな男子高校生ですけどね。

すると盗賊の乗った馬が左右に割れて、後ろの方から一際身体の大きなおじさんその2が出てきた。


「俺の名前はリンダール。お前は誰だ!」


答えようとして、ふと思い出す。

声はどうしようか。

ここで声を出したら若い子供の声だとバレる気がする。


「おい気いてるのか!!」


だとしてもエルヴィスに声を変える機能なんて無いし…

「メイ…声を変える機能ってある?」

『残念ながら搭載されていません』

という事でどうするか…


「おい!無視するな!!俺はこの盗賊団の団長だぞ!!」


でも、話し合いをしなきゃ問題は解決しないし、まずおじさんを殺したのがこの盗賊団かも分からないしな。


「何度いえばわかるんだ!!って…こいつは本当に人が入っているのか?…おい!ジョン!確かめて来い!」


「へっ?………本当っすか?……」


「つべこべ言わずにさっさといけ!!」


うーん…うん?なんか近づいてくるぞ?

僕が考え事をしているうちに汚らしいけれど若い男が1人近づいてきた。

この人はお兄さんでいいか。


「団長!むりっすよ!怖いっす!」


「うるせぇ!俺たちに得体の知れない奴を触らせる気か!」


「えぇー……分かりましたっすよ…」


どうやら僕が考え事をしていて動かなかったから不思議に思ってあのおじさんその2がお兄さんをよこしたんだろう。


「どうする?僕、こういう交渉事分からないよ?」


『なら殲滅した方が早いのでは?』


「うーん。どうしよう…この盗賊団が悪い人たちなら仕方ないと思うけど〜うん。めんどくさい。もう聞いてしまおう!」


なんかもう声がバレるとかは気にしているだけ無駄だと思ったからスピーカーをONにして盗賊団に向かって話しかける。


『貴方達がこの馬車を襲ったんですか?』


それは不自然なほどに周囲に響き渡り、

目の前に迫ってきていたお兄さんはかなり驚いていた。


「こ、こども!?」


「油断するな!へへっ。当たり前だろ。俺たちが殺したんだよ。随分と金を溜め込んでいたみたいだからな!」


あ、犯人確定じゃん…


『【ブルーアロー】展開します』


スピーカーをOFFにしてメイに問いかける。


「やっちゃう?」


『悪人は成敗すべきです。ですが、存在を消滅させてしまうと彼らのもつ金をも消滅してしまう可能性があります』


「あ、なるほど!だったらしっかりと形を残して倒せば良いのかな!」


『頭部、もしくは心臓部を打ち抜けば被害は最小限で済むと思われます』


「わ、分かった…ぶ、ブルーアロー展開!」


僕はメイの勢いに流されてブルーアローを展開する。

目の前に現れるのは真っ白な弓。

蒼いラインが際立ち、機械的なそのフォルムは神秘的でさえある。

背中には同色の矢筒が現れ、背部に装着された。

矢筒には何も入って居なく、筒の中には揺らぎが見えた。


「なんだあれは!!」


「見た事ねぇ…」


「怯むな!!俺たちも弓を構えろ!!」


盗賊団が僕の弓を見て騒ぎ出す。

そして遅れながらもそれぞれで弓を構えて僕に向かって打ち出そうとする。


『矢は揺らぎから取り出します。当分矢が切れる心配はありませんので存分に撃ってください』


「了解!!」


盗賊の弓が放たれるよりも早く、僕は背中の矢筒に手を伸ばし、矢筒の中の揺らぎから真っ白な矢を取り出して弓につがえ、引き絞る。


盗賊の弓が放たれるのと同時に、僕も矢を触る手の力を緩めた。

放たれる純白の矢は、蒼い空を裂きながら進み、正確に盗賊の頭に華を咲かせた。


さっきおじさんの血と死体を見ていなければ吐いただろう。

だけど、胃をせり上がってくる物がある。

でも、今は我慢してひたすらに弓をつがえて盗賊の頭や心臓を撃ち抜く。


「矢がきかねえ!!硬すぎる!!」


「近寄れ!剣で戦え!」


「近寄れません!!」


「ぐえっ!!」


盗賊が胸と頭に華を咲かせる中で、僕はホロサイトに盗賊の頭や胸を定めながらひたすらに弓をつがえ、引き絞り、放つのルーチンを繰り返していた。


気がつけば戦場と化した街道は真っ赤に染まっていた。


『お疲れ様でした』


僕は無意識に頭部の装甲を上げる。

そこで思い出した。

緑の鹿の時も…


「うっ……ぅぇぇぇ………」


似たような状況で吐いたという事を。

鼻腔を破壊するような強烈な死臭が立ち込めていたので僕はひたすらに吐いた。

胃の内容物が完全になくなったところで、僕は盗賊の死体を平原に運び、お金を探した。

その結果、数十枚の銀色の硬貨と宝石のあしらわれたペンダントを数個手に入れた。

おじさんその2がいっていた大量のお金はすでに基地のような場所に持っていかれた後なのだろう。

少し残念な気持ちもあったけれど、無いものは仕方ないと思い断念した。


盗賊の死体をあさる間に数回吐いたけれど、もう胃の中身は空っぽだった。

口の中をゆすぎたかったけれど、マナを沢山含んだ水を使うのは持ったいなかったので、チュッパチャプスの抹茶味を舐めた後にマナ水を飲み込む事で無理やり解決させた。


盗賊の墓を作り終え、おじさんも埋める。

盗賊の墓と近い場所に埋めるのはどうかと思ったので、おじさんは道の反対側に埋めておいた。


「僕って、人殺ししたんだよね…」


『間違えた判断ではありませんでした。あの場ではあの判断が最善です。この世界で何も無いハル様がエルヴィスやアルヴァンティアの情報を狙う敵に襲われ、殺されるよりは、目の前の可能性を殺すのは仕方の無いことと言えます。それが他人から見て非常識、非道徳的だと言われようとも、生き残るためにやった事であれば仕方の無いことです』


「そうなの?」


『戦場で兵士は兵隊を殺しますが、それは仕方の無いことと言われ、罪にはならないのと同じです』


「そ…っか……ありがとう。少し気持ちが楽になったよ」


僕はそうして城の見える方向にむかって歩き出した。


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