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アルヴァンティア12


20××年.05月08日.火曜日.10時09分.王城の地下


巨大な空間が、バリアテレスト王国王城の地下に存在した。

バスケットボールコート1面分ほどの大きさのその空間の中心には巨大な石像が置いてあり、その石像は機会的なフォルムを象られていた。

全高12mを超えるその石の巨人は、アルヴァンティアによく似ていたが何処か違う風に見えた。


その石像の前に両膝を地面について佇むのは、バリアテレスト王国の第一王女リリア・ウェラム・バリアテレストその人だった。


公開処刑の告知が早朝に告げられ、処刑の執行日は明日に迫っていた。

本来は投獄される筈なのだが王女という肩書きにより、監視の兵を数人つけることで最後の時間を自由に過ごすことが許されていた。



数時間前、彼女は最後に国王である父に進言した。

最後にアルヴァンティアの駆り手を召還する事。

周りに貴族もいなかったことから反論こそされなかったが、周囲の目を鑑みて彼女の周りには屈強な近衛兵が数人追加された。


だが彼女は内心、自分に疑問を感じていた。

自分は王国の為にアルヴァンティアの駆り手を召喚しているのだろうかと。

彼女が召喚の儀の存在に気がついたのは10歳を迎えた頃

マナの暴走の結果、異空間から一冊の本を呼び出した事が全ての始まりだった。

何かの古びた皮を使ったと思われる黒ずんだ表紙には剥がれかけた金箔で何か文字が書かれていた。

背表紙にも同じ文字が書かれていた筈なのだが、どういった物なのかは彼女の記憶にはなかった。


そうして自らの素質に気がついた彼女は、11歳から独学で魔法の練習を重ねた。


そしてある時、部屋の一角に保管されていた古びたその本を手にした。

何時記憶を掘り返しても名前は思い出せない。

いつ手にしたのかも思いだせないけれど、その本が彼女が召喚の儀を極めようと思った理由だったと記憶している。


その事に彼女は首を傾げたが、すぐに目の前の石像に意識を集中する。

時間が残されていないのだ


半歩下がったところに居るのは2人の兵士。

王国を護る近衛の精鋭部隊だ。

純白の全身鎧に身を包んでいる2人の兵士は相当の筋肉を鎧の内側に隠し持っていることが分かった。


その2人を後ろに従えるようにして膝立ちになる彼女の足元には、石像を中心として石畳の間に走る窪みが広がっている。


それは高いところから見れば、幾何学的に編み込まれた魔法陣であると理解できた。

その魔法陣の周りには5つの魔法陣が寄り添うように描かれていた。

それは現代日本でも占いやその他様々な場所で使われている単純な魔法陣とは違う物だった。


「我は…『召喚術師リリア・ウェラム・バリアテレスト』


言葉はマナを練り上げると同時に意味を持ち始める。

背後に控える屈強な純白の近衛兵ですら後ずさるほどの威圧感が石像から漏れ出した。


『大陸唯一の召喚術師として、召喚の儀を執り行う。我が儀式を侵す者に大地の戒めを』


『…選ばれし真なる歪みに引き寄せられる運命の神子よ』


石像が僅かに身震いしたのを感じ取ったのか、2人の近衛兵は洗練された手つきで剣を抜き放ったが、不可思議な力場が生まれた事によって金属の重量が数倍になるのか、地面に剣が叩きつけられた。


ガァァン!!


「ぐっ…な、何だこれは!?」


純白の金属の鎧ごと地面に押し潰された近衛兵の2人は葉を食いしばりながらも苦悶の声を上げた。

だが、全てが植物性の生地で造られた正装を身に纏う彼女にはその力場は効果をもたらさない。


『深淵の暗き森のマナを道標に』


機械的なフォルムを精巧に再現された石像の周りに彫られた一つの巨大な魔法陣と、それに寄り添うようにして描かれている5つの魔法陣が光だす。


『舞い戻れ彼の地に!アルヴァンティアの駆り手よ!』


それは電子回路のように光が走り、始点と終点が繋がり全てが光った時。


魔法陣が上空に浮かび上がり、回転しながら石像に収束して消えた。


「お、終わったのか………」


「はい。終わりました。…ですが、金属を持ち込んだ事が無く、このような事態が引き起こされるとは思っていませんでした…すみません」


「いえ!姫様!謝ることではございません!

お顔をあげてください!」


儀式中であった為に言えなかったのだろう、多少の驚愕と罪悪感を滲ませた顔で彼女は頭を下げた。


それに慌てたのは近衛の2人だ。

いくら処刑が決まった罪人と言えど彼女はこの国の象徴だから。


「それでは、急いで最後の確認に参りましょう」


「はっ、では我々はこれで。後ほどはランドワール侯爵の私兵が護衛に回るとの事で…お気をつけください」


「やはり…ありがとうございます。ご忠告感謝します」


バリアテレスト王国第一王女様。

リリア・ウェラム・バリアテレストは、最後に召喚地を訪れる事にした。

アレクォーズに殺される前にアルヴァンティアの駆り手を見つける為に。


そして【ランドワール侯爵家】は【四大貴族】の一角であり、


【反召喚派】の急先鋒である。



■□■□■



20××年.05月08日.火曜日.10時09分.



リリア姫が召喚の儀を執り行っていたのと同時刻。

場所は山手線○○駅の2番線ホーム。


ぽぽぽぽーん


『2番線に電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください…』


独特な電子音の後に、無機質な機械的な音声によるアナウンスが被さる。


そのホームを、40代前半の男性がホームを歩いていた。

男性は片手に最新モデルのアイプォンを握り、画面から目を逸らそうとしなかった。


ホームから顔を動かせば、雲一つない真っ青な大空に、上り始めた太陽が頂点を目指してゆっくりと駆け上がっていた。


だがそのような景色には目もくれず、男性はアイプォンから目を離そうとしない。

それは必然的に、現代の人間にありがちな視野の狭さを助長してしまう。


一点を見つめ続ける男性は、目の前から迫る若者の存在に気がつかなかった。


目の前の若者は、鏡写しのようにアイプォンを弄っていた。


そして男性は正面から現れた若者にぶつかり、必然のようにホームから線路へと落下した。


「えっ…」


「あっ…」


男性と若者はバランスを崩して落下した後、幸運にも頭を撃って気絶することなくホーム下に避難した。


上に上がろうとも、既に電車がホームに入りかけていた為に、誰も手を差し伸べてくれなかったからだ。


だが。そこで男性と若者は目にする。

ホームの下の暗闇が揺らぎ、本来コンクリートに塗り固められた壁が見える筈の場所に、鬱蒼とした森のような物が見え隠れするのを。


「これは…」


「お、おい…おっさん!やめた方が良いって!」


男性は完全に、その揺らぎの雰囲気に呑まれていた。

若者こそ、瞳には僅かに疑惑の色を浮かべていたが、蜃気楼(アルヴァージュ)の揺らぎの変遷に合わせるように瞳から力を無くしていった。



『……舞い……の地…!ア…ヴァ……の駆り………!』



男性と若者の耳に届いた誰かの声が、彼らの脳内で言語に変換される前に揺らぎの収束が終わり、その場には何事もなかったかのように真っ黒く汚れたホームしたの壁だけが、意識無き証言者として佇んでいた。



■□■□■



20××年.05月08日.火曜日.10時09分.異界の暗い森



またまた場所は変われど同時刻。

物語が動き出す時とはいつしも、どの空間でさえも騒がしいのだろうか。


5体を割り切っていたアレクォーズを撤退させた後、僕はアルヴァンティアの権限をメイに任せて休息。

もといチュッパチャプスのナメコ味を舌の上で転がしていた。


『…森全体の面積は現時点で測定不能。森内部のマッピングは4割にも満たないと思われます』


メイはさっきから何かしらの機能を使っているのか、ゆっくりとした口調で演算の結果を淡々と並べている。


「この世界って、なんか懐かしい感じがする」


僕はナメコ味のチュッパチャプスを噛み砕きながら、無意識に前々から思っていた事を言った。


『残念ながらアルヴァンティアのデータベース内に地球時間で20××年.05月03日.木曜日.13時55分.仮称地域名称【異界の赤い荒野】より以前のハル様の記録はありません。推測の域を出ませんが既視感(デジャヴ)の一種だと思われます』


「そうなんだ…」


考えにふけったのは一瞬。

数秒後、僕は既に次の考えに移っていた。


「僕が魔法を使う事は出来るのかな」


『可能。とお答えします』


その一人言に近い言葉に帰ってきた言葉、それに僕はかなり驚いた。


「え、ほんと!?僕でも魔法とか使えちゃうの!?カメ○メ波撃てたり?魔○光殺法撃てたり!?スターバース○スト○ーム放てたり!?メ○オ落とせたりするの!?」


『そのような魔法はアルヴァンティアのデータベースには確認されていませんが、メテオという魔法はデータベースの中に記述があります。ですが使用となると不可能に近いです」


「え、そ、そうなんだ…じゃあ何なら使えるの?」


すると、機械越しに話している筈のメイが僅かに意地悪そうな顔つきになった。

気がしなくもなかった。


駆操者(リアクター)である者は、体内のマナがアルヴァンティアを起動させるために最適化されて行きます。その過程で自らでマナを練り上げ精製することが困難となる例がデータベースの記録に数件あります。それにより魔法を使う事を諦める駆操者(リアクター)も多いようです』


「で、でも、諦める人が多いだけでっ」


必死に縋り付く僕をメイはどう思ったのか。

たっぷりと焦らされた後、メイはアルヴァンティアのコックピット内部の小型スピーカーを震わせた。


『エルヴィスには【増幅器(ブースター)】という装置が内臓されています。そして、変換器もスラスターに使用する為に背部に設置されています』


「え、だからなんなの?それを使うと、僕のマナが増えるの?変換器は、空気中のマナをスラスターを動かす魔力に無理矢理変換する機械って…」


変換器には他の使い方があるのだろうか。僕には分からない。


『変換器は、変換器です。スラスターを点火していなければハル様の魔力を魔法に適したマナに変換する事も可能です。ですが、効率が悪いので、ハル様のマナを増幅器によって増加させる事で効率を上げます』


「つまり、僕はマナを出して魔法を唱えるだけで、後の精製する所はエルヴィスに任せるの?」


『その認識で構いません』


「なら、魔法の唱え方教えて」


思い立ったら即行動。

僕は早速メイに魔法の呪文を聞いて、

アルヴァンティアをエルヴィスに展開し直す為に、エルヴィスのかっこいいあの形を強く頭の中に浮かべた。


「エルヴィス!【外装適応(アダプテーション)】!」


青白い光とともにアルヴァンティアが粒子となって虚空に消え去り、

空中に取り残された僕を包み込むようにアルヴァンティアが最適化される。


その形態がエルヴィス。

遠中近距離に及ぶ攻撃手段をもつ万能タイプの強化外骨格(パワードスーツ)であり、僕を外敵から守る全長2.2mの小さな巨人だ。


機械的なアルヴァンティアとは僅かに違った人に近い姿形で、頭部は小型で鋭角なヘルメットのような形をしている。

手首から肘にかけては内部にアンカーが収納されているらしくすこし膨らんでいるけれど、今はまだ使い所を見つけていない。

手足は少し長くなっていて、全体的に大柄だけども特に違和感は感じない。


一言で表すなら、騎士甲冑を複雑に機械化して、現代的なフォルムを取り入れた様な外見だ。


『ハル様のマナを感知。増幅器(ブースター)作動。異常無し』



『変換器作動。異常無し。スラスターとの接続(コネクト)を一時的に解除。駆操者(リアクター)ハル様のマナを変換器を通して魔法使用の用途に最適化させます』


メイの機械的な声に合わせて、僕は体内に感じるマナを少しずつ絞り出す。

まるで水道の蛇口の様に身体の中心から漏れ出すマナを、メイが上手くエルヴィスを操作することでエルヴィスの(コア)を通じて増幅器へと流れる。

そして数倍になったマナが更に変換器を通過することで魔法を使用する為に適したマナに変換された。

そしてそれは再び僕の身体の中心に戻ってくる。

僕はその変換されたマナと変換前のマナの違いを感じ取っていた。


『分かりますかハル様。それが魔法用のマナです。アルヴァンティアを起動させるマナとは別種のものと考えてもらっても構いません』


「凄い。じゃあ、このマナに意味を与えれば魔法に?」


『その認識で構いません。魔法は法律の抜け道。世界が決めた法にマナを滑り込ませ、世界の法の裏をかく術。故に世界の決めた事象の限界を一時的に超える事もできます。』


「それが、魔法?世界の法律にマナを割り込ませて悪い事をする?」


『私もデータベースを参照して説明している為に詳しい事は分かりませんが、その認識で間違ってはいないと思われます』


「じゃあ、まずは、僕の得意な属性を調べればいいの?」


『はい。全ての属性を召喚できる魔法の詠唱を教えます。ですが素質がないと出てこない属性もあります。それによって適性を測るそうです』


そして僕は、メイに教えて貰った簡単なその魔法の詠唱を唱えてみることにした。

エルヴィスに乗っている僕は、手を前に突き出して手のひらを上に向ける。




「じゃあ…『集え、眷属達!』…うぉおぉっ!?」




僕は詠唱を始めた途端に声が重なる様にして周りに響いたことと、詠唱の終わりにエルヴィスの手のひらに現れたその色に二度驚いた。


『青と水色ですね…』


「疑いもなく青と水色だね」


僕の手に光っていたのは、逆巻く青い光と、凍えるような水色の光だった。


『水と氷のアルヴァンティアの駆り手…』


「水と氷の?」


メイは何か知っているのかもしれない。

僕は何時ものように投げやりな会話ではなく、しっかりそのことについて聞いた。



『まったく…こういう時だけしつこいのですね。ハル様は。分かりました。データベースの中にあった資料から判明した部分をご説明いたします』


そこから始まったメイの説明は、かなりの量にだった。


『まず、この世界に残る伝承と呼ばれる文献がアルヴァンティアのデータベースの中に不自然に残されていました。アルヴァンティア関係の資料が多い中で、それはこの世界の創世に違い時代の話を綴ったものだからです』


「ふむふむ…」


『その資料を読み取ると、アルヴァンティアには各々で属性が存在したようです。火.緑.風.土.雷.岩.炎.鉄.銅.金.闇.光.そしてハル様の水と氷の様に。他にも数え切れないほどの属性があったとされています』


「…へ、へぇ…」


『そしてハル様のアルヴァンティアに宿る属性は色彩が青いことによってまず、水の属性は確実です。本来ならばこれだけのはずのアルヴァンティアの属性ですが、ハル様の装備には…』


僕の装備は、水を使う能力はなかった筈。あるとしてもビーム兵器や刀。

そこで僕はまだ一度も使っていない刀の事を思い出す。

確か、アルヴァンティアの平気選択画面をスクロールしいた時に…


僕はエルヴィスのデータベースからアルヴァンティアのデータベースに接続を変えて、エルヴィスに乗りながらアルヴァンティアの平気選択画面を参照していた。


「あ、あった……【凍氷壱型】…」


『その通りです。【凍氷壱型】の付与属性は氷。斬った対象を僅かに凍らせる特殊能力を持つ魔剣の類です。それにより、ハル様のアルヴァンティアが水と氷と言う、相互性がある属性とは言え2属性を併せ持つ稀有なアルヴァンティアであると私は推測します』


「僕のアルヴァンティアが特別?」


僕は意識してこなかったし水と言うのはアルヴァンティアの色だけなんだから実際はどうか分からないだろうけれど、2属性を持っていると言う事がかなり貴重なことなら、どうにかして確かめたいと思う。


僕は単純で、そういう特別とかいう言葉に弱いけれど、でも異世界に放り出された後は前よりも思慮深くなっている気がするからだ。


だから確認しないといけない。

僕はあまり自惚れすぎるのは良くないと思うからね。


『一概にそうとは言えませんが、現時点ではそれが有力な説でしょう。それに王国に存在した騎士のような人型の兵器ですが、あれから属性は感じませんでした。恐らくアルヴァンティアの技術を模倣したイミテーションであると思われます。開発の途中で技術力と文明の差を見せつけられたのか、あの兵器はかなりの劣化版と言えますが』


つまり、あのロボット達はアルヴァンティアのコピーみたいなやつなのかな。


「そうなると、昔にもアルヴァンティアはいたんだね」


『データベースに残る文献から読み取ると、そうなります』


なんか、夢が広がるね。

大昔のアルヴァンティアとかなんかかっこいいしね。


「あ、そうだ。忘れてたけど、僕が使える魔法は水と氷なんでしょ?」


『はい。その2属性に連なる魔法を行使することが可能です。魔法行使をエルヴィスの補助の下に行えば、いずれは魔法を行使する事も可能でしょう』


「そうすれば僕は自分の身体で色んなところに行けるね!」


『さらにエルヴィスで飛行中にも魔法を行使することが可能となります。戦術の幅を広げる為にも、魔法の習得、行使は必須だと思います』


飛行中はスラスターを動かすために変換器を使うから、僕はエルヴィスに乗って飛行している時には魔法を使えない。

でも、僕が自力で魔法を撃てるようになればエルヴィスに乗って飛行している時でも魔法を撃てる。


そうすれば空中で戦いながら魔法を撃てるんだ。


『データベースには初歩の水魔法と氷魔法の詠唱があります。先程の詠唱によって現れた現象をイメージしながら詠唱を行ってみましょう。詠唱は…』






「エルヴィスお願い!はぁぁぁぁ!『根源の水よ!』…ゔぁっ!冷たい!」


頭を露出させていた僕の顔に水がかかり、息が出来なくなる。


『詠唱に集中しすぎです。何処に水を出すかまで考えてください。まずは手のひらの上にです』


「わ、分かった…『根源の水よ!』


『そこでキープです!手のひらの上で水球を維持するように水の中にマナの流れを維持させて固定させてください!』


「わ、分かった!……なにこれ…水に魔法を書き込んでるみたい…」


僕は手のひらの上に出来た水球を固定させようとした瞬間不思議な感覚を味わった。

念じた思いが詠唱のようにマナで文字列を成して水に書き込まれたような。


『ハル様!』


メイの声が耳に響いた時、僕の手のひらに乗っていた水は弾け飛んでしまった。


「うわっ!」


『気を散らしてはいけません。魔法を行使する時は集中しなければ今のように制御を失ってしまいます。今のは水を生み出す魔法ですので、それを維持するには詠唱ではなく、ハル様の集中力とコントロールと維持するためのマナが必要となります』


「そ、そっか!今の魔法は水を出す魔法なんだね!じ、じゃあ…」


『そうです。ハル様は初めてにして、無意識に魔法を維持させようと水に固定の魔法を組み込もうとしたのです。水球を継続的に作り出す魔法はありますが、それを詠唱なしでするのは大変難しいのですよ』


つまり、僕はメイに騙されたのか。

でも、さっきの感覚。

まるで新しい魔法を自分で作っている様だった。

実際にはもうある魔法らしいけどね。


『それでは次に、氷を生み出す魔法の詠唱を…』




「よし…『根源の氷よ!』…はう!?冷たっ!!」


『ハル様、何故ご自分の顔に…』


「いや、今のは詠唱に集中しすぎてて、何処に出せばいいとか忘れてた…』


僕は意味もなく2度目の顔面召喚を成していた。

詠唱を唱えて何かを生み出すのは結構簡単に行くことが分かった。

でも、生み出すだけで後は僕がどうにかしないといけない。

それが難しかった。



■□■□■



現在は魔法機械文明であるが、それ以前に発展し切っていた洗練された魔法文明が作り上げた魔法が、コントロールを自力でさせるような魔法だったのだろうか。


洗練されれば、そのコントロールを司る魔法式を詠唱に組み込むだろう。




メイも、ハルも知らない。


アルヴァンティアのデータベースに乗っている資料が、過去の文献であることの意味を。



魔法操作効率化。

それが自らのアドバンテージとなることもだ。


現代地球の様に機会に全てを頼り切り、自ら動くことが減ったことによって起こる弊害のように、詠唱に全てを頼り切った魔法文明の弱点を、ハルは無意識に克服しようとしていた。





世界を超えたものに与えられる、

次元の揺らぎから現れる謎に包まれた最強の人型兵器アルヴァンティア。


それは駆操者(リアクター)の心の内側を表すように、外敵から身を守るために駆操者(リアクター)の魔法属性を身に纏い、武器を手にする。


そして、そのアルヴァンティアに搭乗する駆操者(リアクター)も、アルヴァンティアに接する内に強くなっていく。



■□■□■





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