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アルヴァンティア1





本作品を読むにあたって…


①この作品は物事に独自の解釈をしている事があります。


②現実に存在する物の名前も出ていますが、

批判や中傷の意図はありません。


③ 主人公は多少間違えた日本語や話し方を使う場合があります。


④作品の完成度は…そうですね。部屋での目撃が多発するGレベルです。

ご容赦を。



ここまで読んでもまだ突き進む方はどうぞ。



癒柚 礼香の新しい物語を、



どうかお楽しみください。


橙色の絵の具に白い絵の具を溶かしたように染まった太陽がアスファルトを照らしつけ、100m先の路面がゆらゆらと揺れる。

その揺れはまるでその場所の時間さえも歪めているように見えた。


都心ではあまり実感できないかもしれないが、よく砂漠で起こる蜃気楼のエピソードとして一般人でも知っているもの。

それは、砂漠のど真ん中で遭難したときに数キロ先にオアシスを見た彼は、水を求めて死に物狂いで走った。

だが辿り着いてみたらそこは、

鈍い土色の砂が広がる先ほどと変わらぬ砂漠の風景だった。

というような話だろう。


蜃気楼とは一般的に、下層大気の温度差のために空気の密度に急激な差が生じて異常屈折をし、遠くのオアシスが砂漠の上に見えたり、船などが海上に浮き上がって見える現象と言われている。


だが、それの幾つかが本当に歪みであったら?

蜃気楼の奥に見える風景が…別の次元に存在するとしたら。

揺らぎに囚われ不確定な座標にゆらゆらと現れるそれに辿り着く事が出来たなら、

そこは地球とはまた違った幻想的な風景と、それと対をなすように存在する絶対的な絶望を貴方の網膜に焼き付けてくれるだろう。


桐矢(キリヤ) 礼奈(レイナ)という少女はある日、偶然に偶然を重ねた、それこそ天文学的な確率を潜り抜けてそれに辿り着いた。

それは例えるなら針の穴にミサイルを通す様な事であり、要するにほぼ不可能だと言う事だ。

本来、説明の通りの現象であればたどり着くことなど到底かなわない蜃気楼の先に踏み入れてしまったのだから。


このような事例は人類の最初が始まってからおよそ七千万年が経つが、報告例は無かっただろう。

あったとしても、文献に記述がみられない時点で帰還する事が困難(・・・・・・・・)、又は帰還できても誰も口を開いていないと容易に推測できた。


そして、桐矢 礼奈は辺り一面が地球に現存するどのような種とも根源的な遺伝子構造から違うと、感覚的に断言せざるを得ない状況に落とされる。

だが、そこからファンタジー小説のように新たな物語が綴られることはなく、

彼女は数日程で息絶えた。と彼の記憶にはある。


桐矢 礼奈の魂は、その世界の輪廻に混じる事が出来ず地球の輪廻へと返還されたのだろうか。

魂はリセットされ、魂という画用紙に描かれていた人生と言う作品は消し去られたのかもしれない。

そして真っ白な画用紙に戻された魂は次の人生を描き始めるのだろう。

なんの因果か神の悪戯か、

画用紙がリセットされていればこの不思議な物語が紡がれる事はなかったのかもしれない。


そしてこのナレーションさえも、


仮説であるとここに記す。



20××年.05月01日.月曜日.朝



僕は鷹梅(タカウミ) 春哉(ハルヤ)

生まれてから数年は自身の事を桐矢礼奈という少女だと認識していた男子で、

顔が中性的であったのも何かがおかしいと気がつかせるのを遅めた要因のひとつだと思う。


髪の毛は少し茶色っぽくてほんの僅かに癖っ毛になっている。

朝起きるともわっとしているので毎日ドライヤーを当てながら櫛でとかしてから学校に登校するのだ。


あ、言い送れましたが、僕は都立秋春高等学校の2年生。

きょうはいつも舐めているチュッパチャプスの中でもお気に入りのフォアグラ味を咥えながら自宅の玄関を出て車庫の横に立てかけてある自転車にまたがる。


「ハールー?朝ごはんは食べないのー?」


車庫の横にある窓からお母さんが顔を出して聞いてきた。

僕は咥えていたチュッパチャプスを手に取りお母さんに向かって掲げる。


「今日はフォアグラだから大丈夫!」


「まぁ、学校ついたらなんか食べなさいよー」


お母さんは笑いながら500円玉を弾いて渡してくれた。


「うわっとっと……はーい。行ってきまーす」


手の上で数回暴れた500円玉はなんとか手の中に収まり、僕はそれを灰色の制服のズボンのポケットにしまいこんで自転車に乗った。


深い青色のママチャリは秋春高校のステッカーを後ろの泥除けに貼ってある。

秋春高校No.333と書かれた水色のステッカーは起きたての太陽の光を受けて眩しかった。

僕の脳に浮かび上がる桐矢礼奈としての記憶の情景の事はよく分からないけれども、

僕はこうして概ね平和に16年間を過ごしている。


僕は蜃気楼に歩み寄った事も無いし、

蜃気楼の先に辿り着いた事も無い。

その先の景色を視界に収めた事もない一介の高校生だ。


生まれてきてから時折考えるその事はループのように頭に浮かんでくるけれどそれは半ば無意識のうちに考えている事なので気にしていない。

それはただ単に前世の記憶があるだけで、その前世が少しだけ珍しかっただけ。

いつからかそう考えるようになっていた。

しかも残っている記憶は日常を過ごした十数年間の記憶と迷い込んだ記憶、そして最後に死んだと認識した記憶だけ。

日常以外はとても断片的だった。

そんな今までに考え尽くされたなんてことのない事を考えながら青色の自転車を漕いで登校する毎日。

そんな退屈だけどゆっくりと流れる時間が好きだった。


「あ、じゃいあんだ。おはよー」


緑色が都会に華を添えるようにしてポツンと茂っている。

そこにいるだけで心が洗われるような感覚になり、葉っぱ同士が音を立てて耳を癒す音色を届けてくれる。公園。


学校に行く途中、僕はいつも公園を横切る。

そこにいつもいる黒猫、名前はじゃいあんと言うのだが、じゃいあんに挨拶するのは既に日課となっていた。


「に"ゃぁ〜…」


じゃいあんはまるで僕の言葉を理解しているように鳴き声を返してくれる。

これも僕とじゃいあんの日課だ。


「じゃあねー」


自転車に乗っていると語尾が伸びるのはなんでだろうか。

もしかしたら僕だけなのかもしれないし、他にも共感してくれる人がいるのかもしれない。

僕の家から秋春高校までは自転車で10分程度と近く、幼稚園から秋春高校までずっと地元の学校に通いながら過ごしてきた。

僕の住んでいる場所は都立の高校から自転車で10分程度と言った事からも分かるとおり東京だが、東京といっても端っこの方はとてものどかでゆったりとした雰囲気を残している所は多い。

下町は時間が止まったような場所もあるし、所々には畑だってある。

所謂、東京の田舎と呼べる場所に僕はずっと住んでいる。


公園を横切り、左右を畑に挟まれたアスファルトの道路をすすむ。

ここを右に曲がって数分進めば秋春高校の校舎が見えてくる。

校舎は5階建てで、少しだけ年季の入った校舎だけどつくりはしっかりしているのか未だに綺麗な外観を維持していた。

内装も丁寧につかっている事が分かり目立つ汚れは見当たらない。

校長が校舎を自慢する気持ちは全校生徒も同じだった。


そんな秋春高校の校門の手前で僕はちょうどチュッパチャプスフォアグラ味を舐め終え、秋春高校の向かいにあるコンビニのゴミ箱に飴の消えた棒を捨てる。


「ふぁぁぁっ……」


そこでひとつ伸びをしながらあくびが出たけれど、これは眠いのではなくただ単にあくびが出てしまっただけで、

もう一度いうけれど眠い訳じゃない。

眠い訳じゃ…

コンビニのゴミ箱の前で朝からそんなくだらない時間を1人で楽しんでいると、後ろから声がかかった。


「よぉ、ハル。朝からなにやってるんだ?」


「ん?…あぁ、トモおはよう。ちょっと伸びを…」


伸びをしたまま振り返ってみればそこにいたのは制服を着崩し、髪を明るい茶色に染めた青年。


僕の友達の井之(イノ) 友平(トモヒラ)だった。


ワイシャツのボタンとネクタイをしっかりと閉めていないので赤いシャツが首元から覗いている。

濃い灰色のズボンは明らかに腰よりも下げられていて、今時の男子高校生という雰囲気を彷彿とさせる。

髪はワックスとスプレーでしっかりと整えられていて、僕みたいななんもしていない髪型とは一味違った。

一見ちゃらちゃらしているように見えるのだが、実際は人の悩み事や相談事に親身に接してくれるとてもいいやつだったりする。

ときどき僕の反応に対して「…っ…なんて破壊力…」と謎の言葉を言うのだが基本的にとてもいい人だ。

トモはスポーツをやっていないが身体つきが良く、一度聞いて見たところ毎日筋肉トレをしていると言っていた。

僕は身体も細身だし、鍛えてもあまり筋肉がつかないからトモの男らしいがっちりとした身体が羨ましかった。

身長も高く、スタイルもいい。

僕は168cmか169cmしかないけれど、トモは179cmはある。


近くで会話をする時はいつも上を向かなければならないし、こっそり話す時もトモに軽くしゃがんでもらって、僕も背伸びをしなければいけない。

いい人なんだけど、日常の絡みでさえ大変だ。


「そ、そうか。ハルは朝からいつも通りだな。…なぁ、ちょっと寄っていかないか?」


いつも通りとはまぁ自分の事なので客観的に見ないと分からないから置いておいて、寄るとはコンビニの事だろう。


「いいよ。僕も軽く何か食べたかったし」


お母さんに言われていた言葉を思い出しながら自転車を降り、トモとコンビニの自動ドアを潜った。


ビロビロビローン♪


ビビビビビーン♪


やけに頭にのこる音色を店内に響かせるこのコンビニ独特の音を聞きながら店内に足を踏み入れ、

遅刻しないようにはぱっと目当ての食品売り場へと駆けていく。


(苺、苺、おっ、あった。後はチュッパチャプスも…)


取り敢えず真っ先に見つけた苺牛乳を掴み、

チュッパチャプスを探す過程で見つけた新作のシールが貼られた米粉で作ったと書いてあるドーナツも手に取る。

後は今日消費したチュッパチャプスを補充するのだ。


「おおっ!しっかり補充されてるね」


レジの横にあるチュッパチャプスがハリネズミの針のように刺さっているコーナーの前でどれにしようか、どれにしようかと悩む。


女性定員さんはジロジロと見てくるけれども今はそれどころではない。

これは僕の人生を左右するかもしれない選択なのだから。


「コーラ味、ヨーグルト味、抹茶味、ポテトチップス味、ハンバーグ味、唐辛子味、キムチ味、アジのフライ味……」


ぶつぶつとチュッパチャプスの名前を呟く中性的な制服男子はお好きですか?

視界の端でそんな事をいいながら女性店員に声をかけるトモが見えた気がしたのだが気にしない…


トモはいい奴なのだ。

ちょっと僕の恋路を応援するところまで全力なのは控えて欲しいんだけどな…

いくら彼女いない歴=年齢だとしてもだ。

なんでだろうか、よく分からないけれど僕の周りには不思議と女の子が少ない。

トモは普通に会話しているけど僕が近寄ろうとするとなぜか逃げる。

それも追いつけそうで追いつけない絶妙なスピードで…

嫌がらせとしか思えない…


(でもいじめられているんだったらもっと嫌な事されそうだよね)


その後落ち込んでいると僕が追いかけていた女の子がチュッパチャプスをくれる。

なんだか分からないけど嫌われているわけでは無いと分かるのでいつも許してしまうのだが問い詰めても逃げられるだけ。

そして落ちこんでいると…のループとなってしまう……

おかげで僕のポケットは常にチュッパチャプスが大量に蓄積されている。

今日は月曜なので土日の消費によって減ったチュッパチャプスを補充するためにコンビニによった次第だった。


なんだろう。僕には分からないけど怖い…


そうこうしているうちに気がつけば手には米粉ドーナツと苺牛乳の他にチュッパチャプスが5本握られていた。

どうやら無意識のうちに選定してしまったようだ。


(ま、いっか。全部僕の好きな味だし)


なんやかんやでチュッパチャプスは決まったのでアジのフライ味、ハンバーグ味、キムチ味、コーラ味、抹茶味を店員に差し出して会計を済ませた。

なぜかレシートの裏に電話番号を書かれたけれど、よく分からないので取り敢えずケータイのアドレス帳に登録しておく。

店員さんはアキさんという名前で黒いポニーテールが可愛くて、年齢は22歳と随分と年上だなと思った。


「よかったな!会員が増えたぜ!」


「会員…?……おめでとう?」


理由は分からないけどトモもはしゃいでいる事からトモも電話番号をもらったのかもしれない。

トモもあまり女の子との噂は聞かないのでこれは友達として素直に喜べる事だった。


ビロビロビローン♪


ビビビビビーン♪


コンビニにこれ以上いると流石にまずいので店員のアキさんのありがとうございましたの声を背に受けながら頭に残る音色を脳に刻みつつコンビニをでて自転車に乗る。

トモはバスなのでそのまま道路を横断して校門にはいればいい。

時間はまだ数分残っているから先生に怒られることは無いと思う。


「なぁ、ハルは今日部活あるのか?」


不意に頭に声がかかる。横を見ながら顔をあげればトモが隣を歩いていた。

自転車をゆっくりと漕ぎながら僕の所属している部活の日程を思い出していた。


「【漫画同好会】は部活じゃないけどね。月曜日は活動してるよ。平日のOFFは水曜日だよー」


運動部のように精力的な活動をしていない【漫画同好会】は土日の活動は無い。

基本的に平日の水曜日以外の放課後に2時間程度の活動している。

活動と言っても内容は漫画を読んだり寝たりチュッパチャプス舐めたり漫画描いたり…そんな部活とは言えないまさに同じ事が好きな人達が集まる会だった。

でも、僕の所属する【漫画同好会】は実は今言った活動だけではなかった。

もう一つの名前は【オカルト研究会】。

漫画を読んでいるうちに変な趣味に目覚めた【漫画同好会】の裏の顔だった。

もちろんそんな事な知らずに入部した僕はこの事を知ってしまった為に退部出来ないし、

まぁ正直いえば変な趣味以外は普通の人たちの集まりだったので居心地もよかったからずっと居座っていた。


「まじか。なら良いんだけど」


「どうかしたのー?」


駐輪場につき、No.333と書かれた場所に自転車を起きながら律儀に駐輪場までついてきてくれた友人に問いかける。

教えてくれなくても構わないのだが、

僕にも好奇心と言うものはある。


「いや、まぁ先週の月曜はOFFだったからな。今日も暇なのかと思っただけさ」


あぁ、そういえば先週の月曜日は【漫画同好会】は外に調査に出かけていたらしく僕は買い物があったのでトモと一緒に近くのショッピングモールに行っていた。

だからトモは今週の月曜日もOFFなのかと勘違いしたかも。


僕達は下駄箱で2年生を示す先っちょの青い上履きに履き替え、教室のある3階に続く階段を登った。


3階の1番突き当たりに僕の教室の2年6組がある。

廊下を歩きながらズボンのポケットに入っていたチュッパチャプスのDr.ペッパー味の包み紙を解いて本体を口に咥えながらトモの横を歩く。

最近チュッパチャプスはいろいろな企業とコラボしているようで僕の舌を数年の間虜にしている罪な企業なのだ。


2年1組と書かれたプレートが貼られている教室の前をトモと雑談しながら通り過ぎる。

今はまだ春ごろなので2年6組のクラスにはあまり馴染みが無いし、校門で見かける生徒の3分の1は真新しい制服に身を包む新入生だった。

僕も入学したての頃は大変だったな。

そう感慨深げにチュッパチャプスを咥えているといきなり2年1組の教室から飛び出してきた女の子とぶつかった。


「…いたっ……だ、大丈夫?」


女の子は当たった事で僕の目の前で女の子座りのような態勢で倒れこんでいた。

片手は地面につけられていて、もう片方は逆の肩にのせられていた。


(た、大変だっ!…怪我してるかも…)


僕は慌ててその女の子が地手を取った。


「大丈夫ですか?怪我はない?」


取った手を両手で抱え込みながら女の子の顔を覗く。

その女の子は黒い髪をおさげにして眼鏡をかけた女の子で、身長は僕くらいだった。

都立の不思議な魔法によりこの女の子のスカートもそれなりに短かったが僕は女の子が怪我をしていないかが心配でそれどころじゃない。


「…………ぁ……」


おさげで眼鏡をかけた女の子と目が合う。

茶色くて透き通った綺麗な瞳。

触れ合いそうになったとき、ガシッと肩を掴まれた。


「……ん?」


「ハル、周りをよく見た方が…」


おさげで眼鏡をかけた女の子から視線を外して周囲を見るとこれはまた…

すべての教室の窓から女子生徒が顔を覗かせていた。

男子生徒は押しつぶされたのか教室の入り口や端で震えている。


(まさか…また流された……)


ここで僕の弱点を述べたいと思う。

一つの事に集中すると周りが見えなくなる。

まずこれが一つ目で、女の子が怪我をしていないかでとても心配になっていつしか集まっていた人に気がつかなかった。

まぁこれは気持ちを抑えるか外部からの接触で案外簡単に正気にもどるんだけど…

正直もう一つの弱点が酷い。


その場の雰囲気にノってしまうのだ。

簡単にいえば流されやすいとも言うのかもしれない。

これが二つ目で、女の子が近づけてきた顔から目を離す事が出来ず、しかも僕からも顔を近づけてしまったのだ。

気がつけば口からはチュッパチャプスがなくなっていて、おさげの女の子も消えていた。


(ん?…おさげで眼鏡をかけた女の子は…?)


だけど気にしていてもHRに間に合わなくなってしまう。

朝からアクシデントがあったけど直ぐに頭を切り替え、別の言葉で表せば忘れるともいうが特に気にする事なく新しいチュッパチャプス、サバの味噌煮味を咥えると溜息の絶えないトモを引き連れて歩き出した。


そのころ2年1組では女の子達がはしゃいでいた。


「やったぁぁぁぁ!!やったわ!!やったわぁ!」


机に足をかけ、椅子に立つのは1人の女の子。おさげを解いて伊達眼鏡を外したその女の子は先ほどの数十倍は可愛くなっていた。

今思えば先ほどの格好は変装していたのだろう。

そして今日は彼女の番(・・・・)だったのだ。


「くぅぅぅ!羨ましい!」


「ま、まさかあんなあざとい作戦で…カキカキ」


次々に言葉の嵐が様々な席から飛び出し、机に片足をかけて椅子に立つ女の子に突き刺さるが、女の子は何食わぬ顔で、むしろどやっとした顔で言い放った。


「このチュッパチャプスは頂くわ!」


「ぁぁっ!!」


「だめっ!!」


はむっ…


ちーん。


「ものども!でーあーえーであえー!」


「萌がたおれたぞー」


そうして今日もゲテモノを食べた女の子が1人、保健室に幸せそうな顔をして運ばれて行くのだった。



そんな事が起きているなど知らないハルの一日はこうして今日もなんの問題もなく進んで行く。


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