104 運命の夜
久しぶり?の投稿です。今回も短いですが、重要な部分です。
黄金に輝く月を眺め、青年は杯に口をつける。彼の周りには一面の桜が咲き誇っていた。千本桜、まさにそう呼ぶに相応しい光景が目の前にあったことに青年は笑みを浮かべずにはいられなかった。
「どうした?」
笑う青年に声が掛けられる。声の主は隣から。横目で見るとそこには忍装束に身を包んだ男性が座っていた。彼もまた青年と共に桜を眺めていた。
「良くここまで咲いたモノだね。」
「月詠が手入れしていた庭だ。腐らせる訳にはいかないからな。」
「……………。」
月詠、その名前が出た途端、青年の表情が一気に沈んだ。男性は何か失言したのかと首をかしげた。
「わかっていると思うけど…戦争が始まる。もう時間がない。」
「例えるなら、『神々の黄昏』か?」
「いや、ちょっと違う。確かに彼らが負ければ世界はある意味で終わってしまうだろう。破滅ではない。支配だよ。」
青年は杯の酒を一気に飲み干し、真剣な表情で男性を見る。男性は無表情で月を眺めていた。男性の杯に桜の花びらが落ちて、浮いた。
「君は…どうするつもりだい。小太郎。」
小太郎、と呼ばれた男性は杯に落ちた桜の花びらを眺め、言葉を紡いだ。
「俺も行くべきだろう。そろそろ、決着を着けないと…月詠が安心して眠れないからな。」
小太郎は杯を飲み干し、置いた。立ち上がり、夜天を眺めた。その表情には哀しみが満ちていた。
「ウィル、もし…この戦争が終わっ「待ってくれ。それは死亡フラグだ。わかってるよ。君の言いたいことは。」
小太郎は口を閉じて、一歩踏み出したかと思うと、風となって消えた。
その場には千本の桜と青年、桜の花びらが残った杯2つが残っていた。
青年は携帯電話をとりだし、呼び出す。
「あぁ、アーサー?僕だよ…………始まった。第二次人妖戦争が。」
「……………本当ですか?」
紅汰は重々しい空気の中、ウィルに訪ねた。
「うん、たった今連絡が来た。『人間が妖怪の山に向けて進軍している』とね。理由は不明だけど、おそらく戦争だろうね。僕は理由を探る。Lに忌羅や修羅、刹那、シーゼは妖怪の山に戻ってくれ。他の皆はペンドラゴン王国で待っててくれ。」
「待ってください!俺も行きます!」
風魔が立ち上がる。
「妖怪の山は母さんの故郷。刹那さん達の居場所。俺は刹那さんの家族だ、家族を守るために俺は行きます。」
「……止めてもいくだろうね。」
ウィルはため息を吐いて刹那達を見た。
「私は反対だ…もしも十六夜が……」
「勝手にするがよい。私は知らぬ。」
「私もあまり賛成はしないが……止めてもいくだろうな。」
「待て!貴様等は十六夜を殺すつもりか!?」
「ではどうする?姉上に十六夜が止められるなら良いが、能力を使われてしまってはここにいる全員でも手こずるぞ?」
修羅の言葉に刹那は言い返せなくなる。
「決まりだね。じゃっ、行こうか。真実へ。」