103 その日の夜
更新です。いつも通り短いです。 ツイッターで更新お知らせの垢作りました。『@senden__aka』です
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真田旅館
とある一室に紅汰や風魔達は集まっていた。紅汰とルーシャが笑顔で話をしていると、藍が間に入った。
「紅汰さんとルーシャさんは仲が良いようですが、何か特別な関係なんですか?」
藍が聞いた。
「あぁ、二人は永遠の愛を誓った恋人だ。」
紅汰が口を開く前に風魔が紅茶の注がれたカップを掲げて答えた。
「ふ、風魔!」
「だって、そうだろ?この前だって、紅汰の部屋で桃色空間作ってたじゃん。」
風魔はニヤニヤと笑い、紅茶を飲む。流石に二人は何も言えず顔が真っ赤になる。
「安心しろ、結婚式には祝辞読んでやる。」
「止めろっ!」
羞恥に耐え切れなくなった紅汰は手元にあった枕を風魔に投げつけた。しかし、風魔は首を動かして簡単に避けた。
さらにもう一つ。しかし、狙いが外れ隣のグングニルの顔面にヒット!と言うところで、風魔の手が枕を掴んだ。
風魔は微笑を浮かべて、紅茶のカップに口をつける。枕を置いてグングニルの頭を撫でる。
「今更恥ずかしがるなよ。」
紅茶を飲み干した風魔はカップに湯を注ぎ、大量の砂糖を入れる。
「ネロだってそう思うだろ?」
「そうだな、むしろ微笑ましい。良いではないか、男女二人が永遠の愛を誓う。全世界の少女達が夢見ることではないか。誇るべきだ。」
「そうだよなっ!」
「そうであるっ!」
「……お前ら意気投合すんな。」
風魔とネロは深く頷きあい、紅茶を飲む。グングニルも息を吹きかけて熱い紅茶を冷ます。
「なんだか、お前ら家族みたいだな。」
「あ、そうですね!風魔さんとネロさんが夫婦でグングニルちゃんは娘みたいですっ!」
「なっ………。」
流石の風魔も顔が少し赤い。赤面しているのを隠す為に紅茶のカップに口をつけて、顔を隠す風魔。横目でネロの反応を伺うと、
「おぉ!その発想はなかったな!風魔、早速余と婚姻を結ぶが良いっ!」
「ぶっ!!!!?ちょっ、ね、ネロ!?何言ってんの!?」
ネロの突然の告白に紅茶を盛大に噴いた風魔。
「恥じることはない風魔!余は一向に構わぬっ!むしろ、良いっ!!」
「良くねぇ!速すぎるだろっ!俺17歳!!ネロいくつ!?」
「15だっ!安心しろっ!式場は我が黄金劇場がある!」
「違う!15歳とか法律を考えなさい!いい年した女の子が会って半日の俺に結婚しろとか言うんじゃない!」
「なんだ、余が嫌いなのか!?」
「嫌いになる理由はねぇけど、速いって言ってるんだ!もっと良い人いるでしょ!?」
「会ってからの時間など関係ない!余はそなたが好きだっ!!!!」
「「「「「……………え?」」」」」
ネロ以外の全員が固まった。風魔とグングニルはカップを落とし、紅汰、ルーシャ、藍は見事に凍結状態。
「だから余はそなたが好きだ。その勇猛なる心と余を理解できる考えが気に入った!このネロ・クラウディウス・カサエル・アウグストゥス・ゲルマニクスの婿となるが良いっ!」
「ますたーはわたしのよめですよっ!!?」
「むぅ、ではそなたも風魔と婚姻せよっ!そうすれば余もそなたも風魔も幸せだ!」
「おいっ!?重婚かよっ!?」
「いやですよっ!ますたーがあいしてくれるのはこのわたしだけですよっ!!」
「何っ!?えぇい、風魔は余の嫁だ!相容れぬそなたには譲らぬ!」
「譲るも何も俺ネロの物じゃねぇぞ!?」
「なんか…いいですね。」
「あぁ、そうだな…。」
ぎゃーぎゃー騒ぐ風魔達を他所にルーシャは康太の肩に頭を乗せ、微笑む。
「私達もあんな風になれたらいいですね……。」
「もうなってるだろ?」
ルーシャの金髪を撫でる。くすぐったいのか、ルーシャの口から笑いが漏れる
「私も貴方と永遠に、愛し合いたいです……。」
「お、俺もだよ……。」
ルーシャの意外な告白に紅汰は一瞬だけ返答に迷い、答えた。
「ふふふっ、安心しました。浮気したら許しませんよ?」
「あ、あぁ…任せろ。」
何が任せろなのか言っている自分でも分からなかった紅汰だった。
「いやだからさぁ!ネロは箱入りお嬢様だから知らないと思うけどこの世には俺よりカッコイイィィ男はいっぱいいるんだよ!俺より他当たれ!」
「嫌だ!余はそなたがいい!」
「子供の泣き言かっ!」
「子供でもいいから余はそなたがいい!」
「ますたーはわたしのですっ!」
「お前ら、止めな……さ、い?」
風魔の表情が凍りついた。その視線は紅汰と藍の背後に向けられている。同じ場所を見たグングニルは何故か倒れて気絶し、ネロも驚愕で動かない。
「どうした?」
「う、後ろ……。」
風魔が指差すは紅汰と藍の後ろ。
「ん?」
紅汰と藍が後ろを振り向いた瞬間、風魔はルーシャを引き寄せて脇に抱えグングニルをネロに抱えさせ、そのネロも脇に抱えて部屋から飛び出した。その時間わずか0.8秒!!
紅汰と藍が見たのは顔が鮮血で染まっている真っ赤な着物の女性だった。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
二人の断末魔が夜の星空に響き渡った。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
風魔全力で走る。その速度秒速およそ3m!!
「ふ、風魔!?紅汰は!?」
「あいつなら問題ないっ!!」
ルーシャの問いに叫んで答える。
まずい、あれは。あれは無理。流石の風魔も敵意のない女性は殴れなかった。
あれは殺気や敵意が一切感じられない。怨念だけが渦巻いているように見えた。
「とにかく無理ッ!」
「風魔よ!逃げるのだ!あの男なら問題あるまい!」
ネロの言うとおり紅汰なら問題ない。 多分。
その時、先ほど出た部屋から爆炎が噴き上がった。急停止。
「紅汰!?」
爆炎は何事もなかったかのように消えると、部屋から紅汰と藍が出てきた。
「置いてくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
紅汰は一世一代の叫びと共に紅汰が炎のブースターと共に風魔に突進してきた。
風魔はネロとルーシャを下ろして紅汰を迎え討つ。
「おらぁっ!」
「なんのぉっ!」
紅汰が風魔に殴りかかった。風魔も能力を使って応戦。拳に拳で防御する。
バギィッ!!紅汰の拳から何かひび割れる音がした。
「折れたぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「はっはっはっは!!」
風魔は一時的に拳の硬さの限界を超えて紅汰の拳を向かえ討った。見事折れた。
「俺の限界突破は世界一ィィィィィィィッ!!!」
高らかに宣言する風魔だった。
こうして長い夜と過ぎていった。




