97 美の女神と旅館の主
風魔、その他の協力あって少女と美女の救出に成功し、海岸から肉食生物の群れを撃退に成功した。(血の臭いでキリがなく、刹那と忌羅の凄まじい殺気で撃退)
美女の方は魔界神の拳によって目覚めたが、少女の方は一向に目覚める様子がないので、風魔と刹那が旅館に連れて行く事にした。
そして海岸では……………
「いい年して溺れるとかホント阿呆だね。」
「しかも泳げないとかホント阿呆ですねぇ…あ、失礼。間抜けでしたね。」
「いやいや、彼女はいい年して泳げない上に浮き輪に頼った挙げ句溺れたんだよ。間抜け言っても反省しないよ。」
魔界神とシーゼに罵詈雑言を浴びせられていた。これがもう30分続いていた。二人は美女と知り合いなのか遠慮がない。
「ぅぅ………ねぇ、二人ともぉ…。」
「「うるさい。」」
美女の弱々しい抗議を四文字の言葉で圧殺し、二人の罵詈雑言は続く。
「だいたい君は神様のくせに仕事サボってこんな海にまで来た挙げ句溺れて…………山でも言った方が良かったんじゃないか。あ、山行っても阿呆だから迷子だね。」
「貴女みたいな阿呆がいるから、苦労する方がいるんですよ。まったくこのアホが。」
「あの~、ミカエル?テメェが今見ている此方が罵ってるのが羨ましいぐらいの美女はどちら様でございやしょうか?」
Lが苦笑いで会話に入る。魔界神とシーゼは道端の塵を見るような目でLを見つめ、いつもの穏やかな目に戻す。
「君のような偉人に彼女の名を教えてしまうと君の記憶に彼女が記録させてしまい、君の精神が汚れるから言わない。」
「そうです。貴方のような方に知られる程の価値はこの阿呆にはありませんよ。」
「ちょっと!いい加減にしなさい!この変人「「黙れババァ。」」
美女の怒りの抗議すらも二人は叩き潰す。やはり知り合いだろう。
「何、お前らこの人嫌いなの?」
「嫌いだね。むしろ氏ね。」
「嫌いです。死んでください。」
「何よ!貴方達はこの美の女神アフロディーテを侮辱しやがって!テメェらの子孫代々襲って殺ろうか!」
「殺れるモノなら殺ってみろ。この●●●●●。」
「殺れるモノなら、今試しますか?この●●●●。」
美女の怒号すらも二人は叩き潰した。そして、美女が名乗ったアフロディーテとは、とはギリシャ神話の美の女神で元最高神ウラノスの娘にあたる女神である。
しかし、なぜそのアフロディーテがこの場所にいるのだろうか。
「ぅぅ………折角休暇取ってバカンスに来たのに…なんでこいつらと会うのよぉ…………。」
「それは此方の台詞だね。」
「それは此方の台詞です。」
そして日が暮れる約3時間、アフロディーテはずっと二人に罵詈雑言と説教の嵐に見事撃沈されていた。
真田旅館
「あー、思ったより軽かったから楽でした……。」
「そ、そうか…?…最近太った気が……。」
風魔は海岸から旅館まで少女と何故か刹那の二人を背負ってきた。
もちろん、いくら女性とはいえ二人は重い。しかし、風魔は紳士としての心が風魔を持ちこたえさせた。
玄関に少女を下ろす。よく見ると変わった格好をしている。
胸が強調された深紅のコルセットに脚には黄金の防具を着けている。察するに中世辺りの服装だ。
深紅の髪に整った鼻や目、妖艶な唇、まだ幼い顔だがそれでもその美貌を輝かせるには充分だ。
「如何されたでござるか?」
通路から茶髪の和服美人が歩いてきた。しかし、動かない少女を見るとすぐに顔色が険しくなった。
「こ、この方は……。」
「大丈夫です。息はあるんで、気絶しているだけです。」
心配そうな彼女を安心させるため、笑顔で答える。
「そ、それは良かったでござる……。」
一安心した女性は安堵の息を吐いた束の間、風魔に質問する。
「えぇと、貴殿は?」
風魔の事を指しているらしい。
「ふ、風魔十六夜です……。」
風魔、という言葉を口にした瞬間女性の目が大きく見開かれた。
「な、なんと!?まさか風魔殿の御親族様であらせられたか!こ、これは…とんだ無礼を……御許しください。」
突如頭を下げる女性、当然風魔は混乱する。
「風魔殿とは一度刃を交わした敵でござったが…今は某の師でありますっ!」
「えっ、その、あの………。」
混乱している風魔に刹那が面白半分で助け船を出した。
「お前の祖父、つまり月詠の父親こと風魔小太郎は私達妖怪の間でも有名な忍だ。なんでも、風の如き者とか呼ばれているらしい。一部の人間には神扱いらしいぞ。」
「風魔殿と刃交えたあの時は心が奮えましたっ!神風の如き剣筋、目にも写らぬ神速…忍であり、女に優しきあの志っ!!某の軍でも小太郎殿は有名でございますぅっ!!」
熱く語る女性。話から察するに彼女は武の道に生きる人物らしい。
「おぉっ!そう言えば申し遅れました!某はこの真田旅館の館長こと、真田幻導如真と申しますぅっ!!」
「……えっ……真田?」
「はいっ!真田でございます!」
「真田って真田幸村の真田?」
「おぉっ!我が父上に名を御存じとは……歓喜の極みでございます!」
「………真田幸村さんの娘さん?」
「はいっ!某は真田が一番槍真田幸村と越後の軍神、上杉謙信殿の婚姻で生まれし娘でございます!」
風魔絶句。この世界には前にいた世界にはアーサー王やギルガメッシュのように誰もが知っているような既に死んでいる有名人がいることも。だが、流石に戦国武将まで存在しているとは思っていなかった。しかも目の前にいる女性は武田信玄の部下である真田幸村と武田信玄のライバルである上杉謙信との娘だとは…想像もしなかった。
「えぇ……なんで主のライバルと結婚するの………。」
「今、日の元は東側と西側で対立しており、武田と上杉は同じ東軍なのでございます。風魔殿が使える北条殿も東軍であります。」
それから、風魔は少女が目覚めるまで絶句を何度もして、如真の今の日本について聞き入っていた。