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俺と神様の異世界冒険記  作者: サイトゥー
第一部 始まりに至る物語
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86 南への出発

妖怪の山 麓




「そろそろか。」

「嬉しそうですね。刹那様。」

「嬉しそうで逆に怖い。」


草木が茂る妖怪の山の山で刹那、天魔、忌羅は迎えを待つ。


「風魔は私達を何で迎えに来るのだろうな。」

「白馬ではないでしょうか?お姫様を迎えに。」

「お姫様?さて。この妖怪の山の何処にお姫様と呼べる女がいるの」


言い掛けた忌羅の頬を両側から刹那と天魔の拳が貫いた。


「私も行きたかったのですが、仕事の都合上無理で…残念です………。」

「乱季も忙しいと言うしな。仕方あるまい。」

「姉上は仕事をしないひきこも」


言い掛けた忌羅の頬に刹那の拳が打ち抜く。天魔の目が遠くを見据える。


「あら?あれではないでしょうか?」

「ん?そのようだ……………な…?」


遥か向こうの平原から何かに跨がって来たのは風魔十六夜だったが、跨がっていたのは巨大な三つの頭がある犬だった。

犬は地面を削り、刹那達の前に停止した。


「どうもどうも。迎えに来ましたよ。」

「………ケルベロス、ですかね?」

「天魔さん!紅汰の爺さんから借りてきました!」

「ふむ。姉上、いくぞ。」

「あ、あぁ……。」


忌羅と刹那はジャンプしてケルベロスの背に着地した。二人が座ったのを見ると、風魔はケルベロスの首を優しく撫でた。


「じゃあ、行きますよ!」

「行ってらっしゃい。」


天魔が手を振るとケルベロスは三人を乗せ、地面を蹴って駆け出した。その速度は凄まじいほど速く、あっという間にケルベロスの姿は見えなくなった。







「しかし、魔王の奴も良い乗り物を持っているな。」

「の、乗り物…………。」


忌羅が呟くと突然風魔が口を抑えた。


「どうした、気分でも悪いのか?」

「き、気持ち悪い………一回下ります!」


風魔は一旦、ケルベロスの首から飛び下りて地面に着地し胃の中のモノ全てを吐き出した。ケルベロスは急停止し、風魔を心配そうな目で見つめる。


「う……全部吐いた…すいません、俺乗り物酔いが酷くて……。」

「この前バイクに乗ったと聞いたが?」

「あの時は丁度薬飲んでたんで……気持ちわりぃ………ルーを乗り物と思った瞬間吐き気が………。」

「ルー?」

「このケルベロスの名前ですよ………。」


風魔は吐き出したモノを律儀に土に埋め紳士的に口元をハンカチで拭いて再びケルベロスの首に乗った。同時にケルベロスが走り出す。やはり気持ち悪そうだった。

その時、刹那が風魔の襟を引っ張る。


「気持ち悪いのならば私が抱えようか?」

「あ、いや…その。それは刹那さんに迷惑かと……。」

「大丈夫だ、私を久しぶりにお前に抱き付きたい。」

「でも……………。」

「家族に遠慮してどうする。ほら、来い。」

「……では、失礼します……。」


また気持ち悪くなってケルベロスを止めるより、寝た方が良いだろう。

風魔は遠慮しながらも、刹那の前に座り一礼し、頭を膝の上に乗せた。

刹那の細い指が風魔の髪を撫でる。風魔は恥ずかしそうに顔を逸らすと、そのまま眠ってしまった。


「フフ、こうしていると昔を思い出す………。」

「十六夜がまだ幼かった頃か?」

「あぁ、幼い月詠そっくりに良く私の元で寝たものだ…。」

「子供は大人の邪悪さが感じとれんのか。」

「私は貴様よりも邪悪ではないぞ?」

「さて、どうだか。夜になれば十六夜を求める欲情狐、」


言い掛けた忌羅が見えない何かに吹っ飛ばされ、ケルベロスから転げ落ちる。幸い尻尾を掴み、復帰する。


「欲情狐は貴様だ、女たらしが。」

「たらしではない。暇潰しだ。」


忌羅は淡々と話し、ケルベロスの背中に腰を下ろす。刹那は風魔の頬に触り、体温を感じる。今度は耳を甘く噛む。風魔がくすぐったそうに笑う。

それを見て刹那も笑う。


忌羅は誰かと連絡を取っていた。


















ペンドラゴン王国 入口門前


「お、来たか。」


紅汰が平原の向こうから立つ砂煙を見て、風魔達が来たと思った。

さらに数秒経って見ると明らかにケルベロスだと分かる。ケルベロスは周囲に砂煙を巻き起こし、紅汰達の前で停止した。ケルベロスの背中から寝惚けの風魔と刹那、忌羅が下りてきた。


「皆揃ったかな?」


ウィルが確認する。今この場で旅行に行くのは紅汰、風魔、ルーシャ、レーヴァテイン、グングニル、藍、グラム、刹那、忌羅、修羅、ウィル、シーゼ、シーゼ助手の計13人だった。

ウィルは全員いると確認すると、指をパチンと鳴らした。全員が一瞬でその場から消えた。











一瞬で移動した一行がいたのは何処かの港だった。ウィルが歩き出す。


「此処は南の島への港さ。船旅をしてみたいと思ってね。二日で着くよ。」


一行が荷物を持ってウィルに付いていく。ウィルは歩きながら辺りを見回し、周囲にある一番巨大な船に向かって歩き出した。


「え、あれ乗るのんですか?」

「そうだよ。知り合いの船だからね……やぁ、フランシス。」


ウィルは巨大船の前で仁王立ちする女性に話し掛けた。女性が振り向くと、険しい顔が一気に和らいだ。


「よぉ、ウィル。待ってたよ、そちらがお友達かい?」

「あぁ、悪いね。わざわざ一番でかい船を用意してもらって。」

「良いんだよ。アンタはあたしの恩人なんだから。さ、乗った乗った。」


フランシス、と呼ばれた女性ははっきり言って海賊っぽかった。

昔の船長が被るような黒い帽子に大きく開いた胸元。そして真っ黒で豪華な彩飾が施されたコートを着ていた。そして何よりも、彼女の頬に斬られたような大きな傷があったことだ。


「皆、乗るよ。」


ウィルが先導して船に乗り込む。続いて一行が船に乗り込んだ。


「彼女はフランシス・ドレイクって言う僕の友人でね。海を渡って貿易会社を経営しているんだ。この船も彼女の貿易商品を運ぶ貿易武装型客船なんだよね。」


ウィルが簡単に説明し、次は船について説明し始めた。


「この船は僕達で貸し切りだから部屋は自由に選んでもらって構わないよ。一応報告はしてもらうけどね。」


ウィルが全員に船の地図を渡す。


「僕達の他にL、僕の幼馴染みがいるからその辺はよろしくね。じゃあ解散。」


ウィルは一人で奥の通路へと進み、一行の前から消えた。一行はそれぞれ部屋分けをする。


「なるべく皆近い方が良いだろうと思うがこの船に私達以外いないのだから勝手に決めるとしよう。ではな。」


修羅も部屋を探しに奥の方へと歩いて行った。


「紅汰、私と隣部屋になりませんか?」

「あぁ、良いよ。」


紅汰とルーシャが肩を並べて歩いて行く後を藍が追っていった。


「では僕達も勝手に決めさせていただきます。行きましょうか。」


シーゼも助手の女性を連れて紅汰達が行った別の方向に歩いていった。


「さてと、俺も……決めるか。」


風魔は気持ち悪いのか足下をふらふらした足取りで紅汰達と同じ方へと歩いていった。刹那がその後を追っていった。

忌羅は面倒そうにすぐ右にあった階段を上っていった。








ウィルの部屋


「流石に…良い部屋だね。」

「えぇ。本当に良い部屋ですよ。」


ウィルと一人の小柄な女性は椅子に座り、お茶をすする。


「ウィルって以外と凄い友人を持っているのですね…。」

「あのね、人様を一般人と思わないでくれ。こうみえて有名人とはそれなりに親しいよ。原祖のアルクェイドとか串刺し公のヴラド・ツエペシュとか邪皇帝フェルナンド・ロマノフとか傲慢王ギルガメッシュとか聖剣王アーサー・ペンドラゴンとか数えれば百は下らないね。」

「以外ですね、中学生の時は私以外友人と呼べる人がいなかった貴方が今は百人以上の有名人が友人ですか。」

「ま、これも僕の人望さ。今回もフランシスが快く船貸してくれたし。」

「彼女とは親しいのですか?」

「奴隷だった彼女を助けて天界の知恵と会社を立ち上げる為の資金を出したりね。結果大成功で今では世界経済を支える柱の一つだね。」

「あの頬の傷は……。」

「彼女が昔傷つけられた時の痕だよ。僕が治してあげようと思ったんだけど彼女は治さなくて良いって。自分の過去を忘れないようにするからって。」

「強いのですね。」

「そうだね、さてと今夜の打ち合わせでもしようかな。」

「打ち合わせ?」

「うん、僕の世界一の名探偵の友人が素晴らしい推理を披露する打ち合わせだよ。」

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