81 それぞれの思い
次回からクライマックスに入りますよ!
「ヤバい……いや、待てよ?………………………………逆に考えろ、わざわざこんな所で戦う必要などないと。つまり、俺の炎ブースターで城の上まで行けば良いんじゃね?あ、俺頭冴えてる!」
道に迷った挙げ句の果てに紅汰が思いついた結果だった。能力で足下に炎を発生させブースター代わりにして一気に飛び上がる。そして紅汰は黒炎を散らせながら城方面へと向かった。
「ルーシャ、今行くぞ……!」
同時刻の風魔と修羅
「さてと、歩き回るのも疲れた。そろそろ王に会いに行くか。」
「それが目的と言うか俺はルーシャを助けに来たんですがね。」
「ふむ、なら城に入るぞ。精鋭部隊とやらはその内来るだろう。」
「はい。いきますか…!」
九尾の男性と赤黒い髪の青年は迫り来る敵を凪ぎ払い、城へと入っていった。
「ルーシャ………無事でいろよ!」
同時刻 ガウェインとランスロット
「「姫ぇぇぇぇぇっ!!」」
「「王ぅぅぅぅぅぅ!!」」
雄叫びと共に剣が振るわれた。四つの剣が光の線を引いて交差した。
「くっ……王、御許しを…………。」
「流石、円卓の騎士見事で…あった…………。」
ガウェインとランスロットはトイレで対峙した二人の精鋭部隊を倒した。二人共、自分達とよく似た騎士の格好をした者だった。だがお互い、尽くすモノは同じだった。
「ガウェイン、大丈夫か?」
「あぁ……く、我等も早く紅汰殿達をお助けに行かなければ………。」
「紅汰殿は大丈夫だ。あの御方こそ、姫を一番良く大切にしている。絶対の信念は強欲な王には負けん。………くっ、私も早く行かなければ………ぐぁっ……。」
剣を鞘に収めたランスロットの口から微量の血が流れる。
「ランスロット!?大丈夫か!」
ガウェインが肩を貸そうとするが、ランスロットは無理矢理立ち上がる。その瞳にはガウェインにも勝る主を救おうとする一人の男の思いが宿っている。
「ランスロット………。」
「ガウェイン、覚えいるか?私達がアーサー様に反乱を起こした時の事を。」
突然の問いに惑うガウェイン、だがしっかりと頷く。
「私は、その事を紅汰殿と風魔殿に話した。」
口から漏れる血を拭い、騎士は語り始めた。
あれは、まだ姫が拐われる前……私はお二人を呼んで私の過去をお話しました。場所はペンドラゴン城の後ろにある花畑でした。
「風魔殿はもう御存知でしょう?私がなんと呼ばれているか?」
私が問うと、風魔殿は答えづらそうに言いました。
「はい、『裏切りの騎士』…ですか?」
「えぇ…私はペンドラゴン王国を姫のお父様、アーサー様が治めていた時、父と共に反乱を起こしました。自分を弁護してしまうでしょうが、私は妻と子供を父に誘拐され言うことを聞くしかありませんでした。父はアーサー様の奥様が目当てで反乱を起こしました。次第に私達が優勢になっていく内についに私達は城を包囲しました。すると父がこの、花畑を剣で刈り始めたのです。この花畑は姫が好きな場所でいつもお兄様と私の三人でよく遊びました。あの時の姫の笑顔は一生忘れていません。私はこの花畑が刈られていくのが姫の全てを奪う事だと思いました、どんな事があってもあの笑顔を、あの、純粋無垢な笑顔が二度と見られなくなると思った私は無我夢中で父に殴り掛かりました。私は父と組み合いになり、向こうの小川を越えた丘で父の首を絞めて、殺してしまいました。あの時の感覚はまだこの両手に残っています…………結局、私が父を殺した事で軍の統率が乱れ私は降伏しました。
私は自分のやったことを全て認め騎士達の前で死ぬ覚悟をしてアーサー様に謝罪しました。すると、姫が私の前に出てきてこう言ったのです。『ありがとう』、と。私には理解できませんでした。なぜ私が感謝されるのだと、そしてもう一度、姫は私に『ありがとう』と言いました。今度はアーサー様や円卓の騎士達、お兄様まで…私に『ありがとう』と言いました。私は意味が分からず必死に言いました。『私は反乱をしました、殺してください』と。でも誰も私を責めません。姫は泣いた笑顔で私を抱きしめました。小さな体でしたが姫の体温が伝わりました。姫はその時私に『ランスロット、貴方を赦します』と、皆に聞こえるようにはっきりと言いました。私は無意識に涙が溢れました…この人は『私を赦してくれる』のだと。私は誰からも責められる事無く過ごしました。きっと姫やアーサー様が言ってくれたのでしょう。その内、私は決心しました。この命続く限り姫を、御守りしようと。ですがいずれ私も死ぬでしょう。だからお二人には、姫を、姫をよろしくお願いしたいのです……どうか…姫をよろしくお願いします。」
私が頭を下げると二人は約束してくれました。「絶対姫を守る」と。
「行くぞ、ガウェイン。皆様に遅れは取れぬ。」
「ランスロット……あぁ!行くぞっ!」
同時刻、バビロニア王国の遥か彼方上空。
空に尾を引いて戦闘機が飛んでいた。戦闘機の操縦士は無線から後方に座る人物二人に話し掛ける。
「あーあー、聞きやがれ。もうすぐバビロニア王国領土へと侵入する。突撃準備は出来てるか?」
後方の人物がビクッと肩を震わせ、驚くように無線機を取る。
「急ぐのだ!L。雑種の好き放題にはさせぬ!」
「そうだ!急げ。俺の妹に手出した輩を八つ裂きに…」
「あーあー、これより突撃準備に入る。作戦名『神風特攻隊』作戦開始まで十分前。」
バビロニア王国 バビロニア城 最上階
「ルーシャ!!」
「ルーシャ!」
「落ち着け。」
「姫ぇぇ!!」
「姫っ!!」
「皆さん元気ですね。」
六人はそれぞれ別方向から扉を蹴っ飛ばし、部屋に侵入した。その部屋は広かった。凄く広い。例えるなら東京ドームぐらいに。ルーシャはその広い部屋の奥で縄に縛られていた。その隣には王と黄緑の髪の少女と小柄な老人と豪華なアクセサリを身に付けた中年男性。
「紅汰!風魔!ランスロットにガウェインも!皆……来てくれたのですね………。」
部屋でルーシャの声が響く。すぐさま駆け出そうとする紅汰、ランスロット、ガウェインを風魔、修羅、シーゼが手で制す。
「待て。罠だ。四方八方から気配を感じる。」
「同感だ。」
「ざっと2000人ぐらいいますよ?」
三人の意見に三人が反対する。
「良いから突っ込む!」
「同じく!」
「同じく!」
「……………止めろ馬鹿。」
「…………止めろ愚か者。」
「とんだ馬鹿ですね、あ、いや失礼。訂正します。超馬鹿ですね。」
三人の言葉を無視して、三人は突っ込んで行った。三人は剣を鞘から抜き放つ。部屋の四方八方から剣や槍を持った敵が出現する。
「風魔さん修羅さん、雑魚兵は僕がなんとかします。三人の援護を。」
「……すいません!」
「任せた。」
風魔と修羅はシーゼを信用し、三人の後を追って飛び出す。瞬間、シーゼの表情にドス黒い笑み。そして赤い唇がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「死ね。」
瞬間、2000人程いたはずの敵が一斉に倒れた。誰も何が起きたか分かっていない。ただ医者の青年が「死ね」と口にしただけで敵が死んだ。
だが気にせず紅汰達は突っ込む。邪魔者は消えた、あとはあいつらを倒せばいい話。レーヴァテインを構え、紅汰は王へと突っ込んだ。
「ロリガメッシュュュュュュっ!!」
間違って覚えていた。
さて、シーゼに関しては「チート過ぎね?」と思う方も多いでしょう。でも彼はそこが良い!シーゼの能力は後々明かしていきます。お楽しみに!バビロニア王国編はあと二、三話ぐらいで終了して楽しい楽しい新章が始まりますよ!今回もご視聴ありがとうございました。感想等をマジでお待ちしております、何せ感想が来なくて………。