71 聖夜の紅白青年
注意事項
・キャラ崩壊かも
・それなりのエロ?
・風魔メイン
・酷い文章
12月25日 夜 妖怪の山 刹那の部屋
月光に照らされた部屋の中で刹那の美貌と青年の顔が照らされる。
刹那に指示され、刹那の隣に座る風魔。
「お前とこうして話すのも二度目か。」
「そうですね、あの時の刹那さんは……ちょっと、アレでしたね。」
風魔がそう言うと刹那が当時の事を思い出したのか少し顔が赤くなる。
「……………。」
黙りこむ刹那を見て更に続ける。
「あの時の刹那さんは可愛いかったですよ?涙目の上目使いが。」
「……忘れてくれ。」
「はいはい、忘れますよ。ところで話ってなんですか?」
「…すまぬが、結晶を使ってくれ。」
真剣な刹那に見つめられ、断れなくなる。まぁあの刹那がこんな真剣な表情なんだから使ってもやましい事はされないだろう。しかし、
「何時もの着物、ないんですけど。着替えは……。」
「あの着物ならあと何着かある。」
刹那はタンスの一番上の引き出しを開け、風魔が女体化の時に着る着物を取り出した。
「月詠はこの着物しか着なかったものでな、月詠の服はこれしかない。着替えは洗面所を使ってくれ。」
綺麗に折り畳んである着物を受け取り、刹那に礼を言って洗面所に入る。
銀色の結晶を握る。月詠結晶発動。
風魔の体が光を発し、今まで着ていた服が裂ける。
月詠結晶を作った本人はきっといやらしい人に違いない、でなければ服が裂けるなどありえない。
まぁそんな事は置いといて、風魔は着物に着替え始めた。
………………下着が無い。
「洗面所、お借りしました。」
裂けた服の残骸を持って、洗面所から出る。残骸をゴミ箱に捨て、刹那の隣に座る。
「さてと、話ってなんですか?」
「少し……目を瞑ってくれ。」
言われた通り目を瞑る。
数秒後、刹那が顔を風魔の胸に埋めた。ちょっと顔が赤くなる風魔。
「すまん、少し…このままで頼む。」
その声に殺気はこめられていなかった。いつもとは違う弱々しい一人の少女の声だった。
「分かりました……。」
「…ありがとう。」
刹那の両手が風魔の腰にまわされる。
それで一気に気が緩んだのか、刹那が泣き始めた。
「…ぅ…………月詠…………月詠ィ……………ごめんなさい………………………………………………………………………ごめんなさい……………私が…私が、愚かだった………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」
言葉が続くと共に声が更に弱々しくなっていく。
この人はずっと後悔してんのか……母さんの事で……………………自分があの時、こうしていれば母さんは死ななかったと、ずっと後悔しているんだな。
「ごめんなさい………十六夜………私が…何も、分かっていなかったから……………貴女の……母親を…………」
「刹那さん………………。」
自分の胸の中で泣いている九尾の女性はずっと泣いていた、自分のせいで最愛の人が死んでその人の子供までをも不幸にしてしまった責任をずっと背負い自らを傷付けている。
彼女は救われない。多分、ずっと、永遠に自分を傷付けるだろう。
でも、彼女の救えるのは最愛の人だけじゃない。
刹那の狐耳を優しく撫で、『声真似の限界』を超え乱季師匠から聞いた母さんの話から声を想像し、真似る。
「もう…いいんじゃない?」
母さんの声真似が成功したのか刹那さんがハッとし、顔をあげる。その目は大量の涙で濡れている。
できる限り母さんの口調を真似る。
そして出来る限りの慰めの言葉を並べる。
「月…詠?」
「貴女はもう…充分すぎるほど傷付いた…だから、もう、自分を傷付けないで。見ている私が泣きそう…私のせいで、私のお母さんが苦しむなんて…………だから、もう止めて。もう良いのよ、お疲れ様…お母さん。」
「でも、でも…私は、母親気取りで何も分かっていなかった!何もできなかった!こんな最低な母親は……死んだ方が、!?」
ガンッ、重々しい打撃音が部屋に響く。刹那さんが額を抑えて、俺を見つめた。
「なんで…なんでそんな事言うんですか!!」
「い…十六夜…?」
俺は声を地声に戻し言葉を吐き出す。
不思議と目は濡れていた。
「俺だって!母さんだって!刹那さんの事は全然恨んでいません!母さんは貴女や俺、皆を守りたかったから死んだんです!貴女が愚かだったとか、何も分かっていなかったとか、そんなんじゃありません!それなのに貴女はずっと自分のせいだと思って傷付いて泣いて、挙げ句の果てに死んだ方がマシ!?ふざけるな!母さんは…母さんは…そんな貴女になってほしくて死んだんじゃないッ!!!!!!」
「…でも、」
「でも、じゃない!貴女はもう救われて良いんだ!傷付かなくて良いんだ!…………もう、止めましょうよ?誰も貴女を責めはしない。誰かが貴女を救うんじゃない、貴女自身が救うんだ!」
「……良いのか?私は…お前の母親を……。」
「もう過ぎてしまった事です…変えようがありません。それに、まだ目の前に母さんが愛した家族がいるから、俺は一人じゃない、貴女も一人じゃない。」
「……十六夜…ごめんなさい。」
刹那さんはん目から大粒の涙を流し始めると、また俺の胸の中で泣いた。
これで、刹那さんは救われたのか?
母さん……………。
数十分後、刹那さんは目尻に残る涙を袖で拭いてまだ赤い目で俺を見つめた。
「すまなかった…十六夜、一番辛かったのはお前だったのに…私は、自分が一番辛いと思っていた……。」
「気にしないでください。俺こそ言い過ぎました…すいません。」
「良いさ、お前に強く言われても別に怒りはしない。」
刹那さんは熱っぽい視線で俺を見つめる。あれ…なんとなく危険を感じ……
そう思った瞬間、俺の額に柔らかい感触。
「せ、せせせせせせせせせせせせせせ刹那さんッ!?」
飛び退く。額にキスされた………。
自分でも分かる、顔が真っ赤だ。
女性にキスされた事が無かったからだろうか…?
あれ?でも刹那さんなら普通唇にするんじゃ……。
「ん?別に唇にしても良いぞ?ただ、初めての相手が私ではいささか不満であろう、だからお前が惚れた女に譲る。二回目からは私もするが。」
「あ……………はい、じゃあ俺はこれで失礼します。」
ベッドから降りて刹那さんに一礼する。
「今日は…ありがとう。お前がいなければ私はずっと救われなかった…。」
去り際に刹那さんの感謝の言葉が耳に残った。
「……寒い。」
部屋から出た後も出る前も寒かったが、刹那さんとの会話に夢中で気にならなかった。
「寒い……。」
身を震わせながら屋上へと向かう時だった。
通路の角で誰かとぶつかった。
俺が尻餅を着く。
「あ、すいません。大丈夫?」
ぶつかった向こうが手を差し伸べてきた。暗いからよく顔が見えない。
だが声から男性だと分かる。
「あ、すいません。」
素直に手を掴み、立ち上がる。
「ん…?月詠?」
「あ、いえ、違います。十六夜です。」
「あ、十六夜か!大きくなったなぁ!………胸、も?」
「あれ?何処かで会いました?」
「……いや、俺の勘違いだ。すまん。」
「そう…ですか?」
この声、何故か懐かしい………。
でも記憶にない……。
「寒そうだね。あ、そうだこれ着な。」
男性は自分が着ていたコートを俺に渡した。
「男の着たやつ着るの嫌かもしんねぇけど、まぁ嫌なら捨ててもいいけど。」
「い、いえ…ありがたく着させてもらいます…ありがとうございます。」
「そうかい、じゃあ俺は用があるからじゃあな、十六夜。」
「あ、お名前は?これ後で帰したいんですけど……。」
「んーと、俺の名前はコタロー。じゃあな。」
コタロー、と名乗った男性は一瞬で俺の前から消えた。
「………寒っ。」
何処かで聞いたことがある声の誰かが呟いた。
早速借りたコートを着て、屋上へと向かう。五階にある刹那さんの部屋から一階の玄関に行くより屋上から飛び下りた方が早い。
白い息を吐き出しつつ、屋上へのドアを開けた。
「ん?誰かと思えば貴様か、十六夜。」
…見慣れた美貌の男性がいた。
「こんな寒い中配達とはご苦労だったな。」
忌羅はこんな寒い中月見酒ですか。
「本当ですよね、まったく。」
俺が愚痴のように呟くと忌羅は月から視線を俺に変えた。何故か熱い視線。
「本当に…似ている。」
小さく忌羅さんが呟いた。
「え?なんか言いました?」
「何でもない。」
忌羅さんは速効俺から視線を月に戻すと、酒瓶に口を付け一気に飲み干す。
忌羅さんの頬が僅かに赤い。
「………良いか、今から言うことは誰にも言うな。言ったら殺す。」
「は…はい………。」
珍しい忌羅さんの真面目な表情に思わず頷いてしまった。
忌羅さんは月を数秒見つめて、言った。
「私は……お前の母親を愛していた。」
「え?」
「月詠の気高き志と意志、いや…月詠の全てに私は惚れていた。月詠と唇を交わしたあの時からずっと、月詠をこの手で抱きたいと願っていた。今はもう叶わぬ願いだがな……………………………………………………………………ククッ、私は月詠みが死ぬ最後まで剣を振るい続けた…私は…私は…何をしていたのだろうな……愛した女が去って行くのをただ呆然と見ていた………止める事もしなかった…お前に恨まれても当然だな。」
「別に恨んでませんよ。誰かが誰かを愛したって良いじゃないですか。忌羅さんが母さんを愛したって別に俺は構いませんよ。」
「そうか………………………。」
ビチャ、俺を見つめる忌羅さんの目から銀色の液体らしき滴が頬を伝って忌羅さんの膝に落ちた。
「え…忌羅、さん?目から、銀色の液体が……。」
「ん…これは人間で言う涙だ。」
「……………は?」
「私は…産まれた時から体が弱かった、だが『神羅万剣』に目覚めた事によって剣を喰らう事で生命力と体の弱さを補っている。私の体は無限の剣でできている、だから喰らった剣の原料である鉛や銀、オリハルコンの涙が流れる。血は赤いが、おそらく血が付いた剣を喰らったからだろう。」
忌羅さんは目尻に浮かぶ銀色の液体を指で拭う。
「………悪いが、この銀色の液体はまだ止まりそうにない。お前に見られるのは少し…その…アレだ。だから、もう言ってよいぞ。」
忌羅さんは顔を反らし、涙を見せない。
「そう…ですか。ではまた、」
声真似の限界を超え、母さんの声を真似する。
「忌羅。」
忌羅さんが俺の方を向いた時には俺はその場にはいなかった。
まったく…俺という奴は……いったい………一晩で二人も泣かせた……。
ま、それに合った報酬は貰えたけどな。
忌羅さんの涙とか秘密とか。
忌羅さんの涙とか秘密とか。
忌羅さんの涙とか秘密とか。
忌羅さんの涙とか秘密とか。
聖夜の夜の任務、完了だな。