8 最近、暇で死にそうだ。誰かサイト内で作者とお友達になりませんか?
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「じゃあね、混沌の英雄さん。」
男の声が頭の中に響いた。
紅汰の視界に刹那の拳が写る。
あたったら確実に死ぬ。首が吹っ飛ぶ。
「死んでたまるか!」
紅汰は刹那の拳を顔を右に動かして避け、カウンターで刹那の頬を殴った。
「何?」
刹那がまともに拳を食らい、よろめく。黒雨を右手から解放する。
刹那は忌羅と同じように殺気を紅汰に放つ。だが、紅汰の瞳を見た瞬間、初めて驚いた顔をした。
「貴様、邪神の寵愛を受けているのか?」
「邪神?」
その時、紅汰の両目に激痛が走った。
右手で両目を覆う。ベチャ、何かが手に付いた。
見てみると血が付いていた。両目から血が流れているのだ。
「まさか邪眼保持者とはな。驚いたぞ。しかしたかが人間、邪眼を使った所で私には勝てない。」
刹那の両手に短刀が出現する。
「貴様の邪眼、私が貰おう!」
刹那が走り出す。しかし紅汰にはゆっくり走っているようにしか見えない。
刹那が右の短刀を紅汰に突き出す。
(なんだ?この感覚。)
短刀を避け、再びカウンターで刹那の頬を殴ろうとしたが刹那が左の短刀を紅汰の腹部に投げた。
いくらゆっくりでもこの短刀は避けられない。
当たる。短刀の切っ先が紅汰の柔らかい腹に触れた瞬間、
短刀が消えた。
「なっ!?」
流石の刹那も驚いている。
隙をついた紅汰の渾身の一撃が刹那をさらによろめかせる。
「人間ごときがっ!!」
刹那の涼しかった顔が怒りへと変わった。
だが紅汰は追撃で拳を今度は刹那の額に放った瞬間、
刹那が消えた。
「「え?」」
何が起きたというのだろうか?
刹那が消えた?少なくともあれだけ感じられた殺気と恐怖はすっかり消えていた。
「一体何が……」
「と、とりあえず逃げよう。また追ってくるかも知れないからな。」
引きずられていた黒雨は立ち上がり、
紅汰と黒雨は暗い森を出た。
ルイナを起こして修羅達と合流するという手もあった。
しかし彼らはこれ以上迷惑はかけまいと、森を出る事にした。
十分後、二人は目の前に広がる広大な平原を歩いていた。だがファンタジーな世界なのにスライムの一匹もいなかった。
その時、
「こんにちは。」
突然後ろから声をかけられた。
振り返ると馬車と馬のたずなを握る銀髪の青年。
そして青年の後ろには巨大な荷車があった。商人だろうか。
「旅の人?それにしては服装が変だな。」
青年は好奇心旺盛な目で二人を見つめる。
「あ、いや。俺たち道に迷って。」
紅汰の説明。しかし説得力皆無。何故なら彼らは平原にいるからだ。ここで道に迷うのは相当の方向音痴だ。
「へぇ。そうなんだ、ならアイルまで送っていくかい?」
「アイル?」
青年が不思議そうな顔をする。
「この平原を北へ真っ直ぐ行くとある小さな町だよ。」
「へぇ。ならお言葉に甘えて乗せて貰おうかな。」
紅汰と黒雨は後ろの荷車に乗って、町アイルへと向かった。