62 事後整理
前回の話がカオスだと言われたので今回の事件のまとめをします。
シーゼ診療所
「さてと、今回の事件のまとめをしましょう。」
紅汰と風魔から一連の事件を聞いたシーゼが茶をすすって説明する。
この場にいるのは紅汰、風魔、クロノス、忌羅、シーゼの五人だけだった。
「まず、今回の事件は農耕の神クロノスによって始まりました。
まずクロノスについて説明しましょう。
クロノスというのはギリシャ神話の農耕の神であり、大地の女神ガイアと天空神ウラノスの子供です。ガイアとウラノスは数々の神を産み出しました。しかしウラノスは乱暴でガイアの腹から出てきた子供を押し戻りたり自分の子供を幽閉したしまうのでガイアは自分の子供達に『誰か父を倒す者はいないか?』と聞きましたすると息子の中でクロノスが手を挙げました。クロノスは授かったダイヤモンドで出来た鎌『アダマスの鎌』でウラノスの……を刈り取ってしまいました。ウラノスはこれによって子作りが出来なくなり去りました。
クロノスは新たなギリシャ神話の王となり、大地の女神エアと結婚し天空神ゼウスや海神ポセイドンなどを産み出します。しかし、自分もいつか王位を奪われるのではないかと怯えウラノスと同じ行動を取ってしまいます。挙げ句息子のゼウスに王位を追われてしまった。これが農耕の神クロノスについての詳細です。
まぁ、この小説では違いますね。この小説の方のクロノスは圧倒的な力を振るっていましたが、何者かの隠謀により魔界深底部の牢獄『タルタロス』に封印されてしまった。
さて、クロノスさんについての説明はこれで終わりです。
事件の続きに戻します。クロノスはタルタロスに封印されていましたが時間が過ぎていくと牢獄が脆くなり微量ですが力を出せるようになりました。
そこで人間界に干渉し、亞季奈さんと契約しタルタロスを壊してもらおうとしました。しかし神の力は人の身にあまるもので結果亞季奈さんは暴走し『狂戦士』となってしまった。忌羅さんとハサンさんが応戦。
しかしハサンさんはダウン、忌羅さんは両腕を吹っ飛ばされ怒りに任せて亞季奈さんに重傷を与えた。怒りが収まらない忌羅さんは現れた七つ大罪のサタンに導かれタルタロスへと行きました。さてここで詳細説明です。
『七つ大罪』というのは人を罪に導くとされる欲望、感情の事を言います。
一つ、暴食
二つ、強欲
三つ、怠惰
四つ、色欲
五つ、高慢
六つ、嫉妬
七つ、憤怒
この七つ大罪にはそれを表す悪魔がいます。
暴食はベルゼバブ
強欲ベルフェゴーレ、
怠惰はマモン
色欲はアスモデウス
高慢はルシファー
嫉妬はレヴィアダン
憤怒はサタン
この小説ではこれらの悪魔達を登場させ悪魔達の世界、通称魔界を創った魔界神の精鋭部隊『七つ大罪』という設定にしてあります。
魔狼、というのは魔界で育った狼の事です。魔狼は魔界の環境に適した生活を送り人の形を持てるようにまで進化しました。結果、魔界神に気に入られて保護区域で暮らしています。
話をまた戻します。
紅汰さん達はタルタロスを補強しようとしましたが、その前にクロノスは封印から解き放たれました。
そして怒り狂った忌羅さんはタルタロスに現れ、八つ当たりで紅汰さん達と激突、挙げ句トラウマ思い出して発狂して突然現れた弟さんに縛られてヤラレチャッタ。
そして事件から数日後、作者お馴染みのキンクリで時間表示を忘れた。
…こんなとこですかね。」
「さっぱり分からん。」
「ですよねー」
シーゼは当たり前、というように肩を竦めた。
「結局、農耕の神に干渉された亞季奈さんが『狂戦士』になって忌羅さんが傷ついたから怒って発散しに魔界の牢獄タルタロスに行きました。紅汰さん達は牢獄の補強を頼まれたけど牢獄に入ってた本人が出ちゃった♪忌羅さんはクロノスさんを殺そうとして止められた風魔さんの言葉にトラウマ?を思い出して『発狂』三人と戦闘。結果クロノスさんと風魔さんを瀕死に追い込んで弟さんにヤラレチャッタ。分かりました?」
一名、唸る。紅汰だ。
事件から数日経った今、状況が混乱しているのは紅汰だけだった。
「さて今日は特に患者はいませんが、邪魔なので皆さんお帰りください。」
シーゼのその冷たい一言で解散になった。
紅汰、風魔、クロノスは一旦魔界にいくことになった。携帯電話で魔界神の番号にコールし、迎えに来てもらう。
一分後 魔界 魔王神部屋
一応、今後の為此処の説明をしておこう。この部屋は魔界神とその嫁の部屋、広さは……例えづらいな。まぁ、一般の部屋よりも遥かに広い、と思ってほしい。床にはレッドカーペット?が敷かれて、壁は全部紅い。家具は部屋に入って真正面に客人用のソファー、ソファーの後ろに魔界神専用の業務用机、その隣にコーひーや紅茶とかの飲み物を淹れるポットの小さい机、真っ黒な植物達、あとは天井に紫色の明かりのランプ。ちなみにこの部屋の左側のドアの奥に寝室と風呂場、トイレがある。
「久しいな、ミカエル。」
クロノスは無表情で魔王神の全身を見て言った。
「久しぶりだね、クロノス。」
魔界神とクロノスは互いに見つめあう。部屋の空気が何故か気まずくなる。
「……………。」
「……………。」
「貴方~、紅茶とコーヒーどっちがいい~?」
空気の読めない魔界神の嫁が魔界神に聞いてみる。
「結婚、したのか…。」
「あぁ。ルシュ、紅茶を頼むよ。」
短い言葉を交わす二人、魔界神の机の上に紅茶が置かれる。
ルシュ、つまり魔界神の嫁の視線がクロノスに向けられる。
「えーと、そちらの方は?」
「水。」
クロノスの短すぎる返事にもルシュは戸惑う事はなくコップに水を淹れて、クロノスの前に置く。
だがクロノスはずっと魔界神を見つめている。
「…お互い黙っていても何も変わらんぞ?」
クロノスがゆっくりと口を開く。
「じゃあ僕はなんて言えば良いんだ?」
魔界神の呆気ない返事にクロノスは深く溜め息を吐いた。
「貴様が堕ちてから何年経った?」
「さぁね。」
「世界は変わったか?」
「あぁ、くだらない世界だ。」
「皆、元気か?」
「あぁ、元気だよ。」
やっぱり会話が続かない。クロノスは呆れ顔で魔界神を見つめるが魔界神は一向に無表情だ。
「君は、怒っているかい?」
魔界神が質問した。クロノスが不思議な表情を浮かべ眉を歪める。
「怒る?何にだ?」
「君をずっと幽閉していた事だよ。」
魔界神が紅茶をすする。
「怒ってなどいない。貴様はこの世界の主だ、貴様にはそれなりの事情があったのだろう。私を解放すると何かまずかったのだろう?」
「まぁね。てっきり、天界が君を恐れて攻めてくると思ったけど攻めてこないね。」
クロノスがやっとコップに口をつけた。冷たい水が一気に喉に流れ込む。
「あやつらも慎重なのだろう。」
「そうかもね……。」
会話が止まった。
だが、それを引き金にクロノスの肩が震え始めた。
魔界神の顔がひきつる。
「あークロノスァ!?」
魔界神が名前を呼ぶ前にクロノスは机を飛び越え、魔界神に抱き付いた。
「会いたかったぞ!この感触!触ったのはいつだったか忘れてしまう程だった!」
クロノスは自らの頬を魔界神の頬に擦り付ける。その瞳は溢れだしそうな程まで濡れていた。そして、
唇を重ねた。
「この味も、貴様の孫と同じだなぁ!!」
「ちょっと!クロノス!?いきなりなんだ!?」
魔界神の抵抗をすらりとかわしてクロノスは魔界神の体を触りまくる。
「私はなぁ!初めて会ったあの時からずっと、貴様が好きだったんだぞ!」
「そんな事言われても、悪いけど僕にはルシュがいるんだよ!!」
そんな二人の絡み合いを唖然として見る三人。男に戻った風魔がボソッと紅汰に囁いた。
「祖父さんと紅汰ってそっくりだな、色んな意味で。」
「どういう意味だよ……。」
風魔を睨みつける紅汰。風魔は暢気に答える。
「そのまんまの意味だ。」
理解できない。
その時、ルシュが涙を流し叫んだ。
「貴方!浮気はしてもいいから必ず戻ってきてね!!」
「いや待て!僕は浮気なんてしてない!!」
「ミカエル、私と結婚しろ!!」
「無理だって!!」
紅汰と風魔は深い溜め息を吐いた。
「「カオス………。」」
次回からちまちまとキャラの過去話、やります。長い奴は二話続くかもね。
今回もありがとうございました。
感想、アドバイス、誤字報告等をお待ちしております。