57 新たな旅、魔界深底部『タルタロス』
紅汰と風魔、ハサンの三人は全力で林を抜けペンドラゴン王国に向かっていた。
だが明らかに紅汰に疲れが出ている。
風魔は鍛えた足腰で、涼しい顔をしている。
ハサンも鍛えてあるのか、風魔と同等に早い。
「紅汰、俺が背負う。乗れ。」
風魔が急停止し、しゃがむ。
「あ、いや、でも……。」
「いいから、早く。」
ルーシャ達が戦っている今、一分一秒が惜しい。紅汰は諦め、女体風魔の背中に触れる。
両手を風魔の首に回す。
「飛ばすぞ!掴まれ!」
そこからは速すぎてあんまり覚えてない。ただ覚えてるのは風魔のめっちゃ長い銀髪が顔に掛かってめっちゃ痒かった事と風魔がジャンプして着地する度に紅汰の両手がずれ落ち風魔の豊満な胸に触れる度に風魔が
「てんめっ!?次触ったらブッ殺すぞ!!」
マジ怖かった……。
でも別に怒るほどの事じゃないんじゃね?風魔中身男なんだし
別に減るもんじゃないし。
そう思ったら風魔に投げ飛ばされた。
着地時に足からグギッ、って聞こえたが折れていなかった。
だが俺達が見たものは想像を超える惨劇だった。
ペンドラゴン王国を囲う大理石の壁はバラバラに崩れ、巨大な門も完全に崩れ落ちていた。
「何が…あったんだ……?」
「………行くぞ。」
風魔の言葉に頷き崩れた壁を乗り越えようとした瞬間、ペンドラゴン城入口が爆発した。
「!急ぐぞ!!」
「あぁ!」
「お供します!」
皆、無事でいろよ。
紅汰は心の中で願い、三人は爆発があった方向へと向かった。
ペンドラゴン城入口
「姫様!早くお逃げください!」
「私とガウェインが食い止めます!」
「何を言っているのですか!私は絶対に助けますよ!」
三人の騎士達の前に立つのは透明に輝く巨大鎌を持ち、顔は緑色の仮面に隠れていた。まさにその姿は死神。
ルーシャ、ランスロット、ガウェインは剣を構え死神を睨みつける。
「エクスカリバー、何か策は?」
ルーシャは自分が握る黄金の剣、神聖剣エクスカリバーに問う。
「無い。はっきり言ってあの者の力は神同等またはそれ以上だ、人の身である君達が勝てる確率は零だ。」
その時だ、死神が動いた。
高く跳躍し、空中から鎌をルーシャに向かって降り下ろした。
「「姫様!」」
二人が叫んだ。避ける力もなければ受け止める力もルーシャには残っていなかった。だが死ぬわけにはいかない。
帰りを待っている人がいるのだから。
エクスカリバーを構え、受け止めようとした瞬間、
紅い光が巨大鎌を弾いた。
銀色の残像が死神を吹っ飛ばす。
「ルーシャ!大丈夫か!?」
そこには自分の想い人がいた。
「紅…汰……来てくれたのですね…………………。」
「ったりめーだ。仲間のピンチに駆け付けねぇ馬鹿なんざいねぇよ。」
「そうそう。自分の嫁さん助けねぇと夫失格だもんな。」
「風魔!」
風魔は一言言って紅汰とルーシャに背を向ける。その隣には骸骨仮面の男性。
「ハサンさん、are you raedy?」
風魔は英語でハサンに呼び掛けた。
なんかうぜぇ…。
「ok.」
ハサンはそれだけ返事すると、影となり死神に向かっていく。
風魔も銀色の影になって死神に突っ込む。
死神は巨大鎌を凪ぎ払うように振るうが、二人はジャンプで避ける。
「遅い遅い遅い遅い遅い遅いィィ!そのような速さでこのハサンの姿を捉えられると思ったか!」
ハサンが死神に数本の杭を投げる。
が、死神は鎌を振るって杭を弾く。
弾けなかった杭が死神の肩に刺さった。
「おらァッ!!」
杭が刺さった痛みで少し動きが止まった死神の顔面に風魔の飛び蹴り。
見事命中し、死神は吹っ飛ぶ。
が、死神は地面を転がりながらも態勢を立て直した。
死神の着けていた仮面が割れ、カラン、と音を立てて地面に落ちる。
「なん……だと……!?」
風魔は死神の顔を見て、驚愕を露にした。
紅汰も目を凝らし、顔を見る。
「なっ…そんな……亞李奈!?」
死神の正体は紅汰と風魔が昔助けた少女、亞李奈だった。
「●▼▼▼▲◆◆■◆●▼◆■▲!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
亞李奈は声にならない叫びを上げ、鎌を振り回す。
「なんで…亞李奈が……。」
その時だった。
紅汰と風魔の視界が途切れた。
「「なっ!?」」
何かする暇もなく二人は意識を失った。
「おーい、起きてくれ。一大事だよ。」
軽々しい声が二人の脳内に響く。
紅汰は魔界神の声だと思いだし、起き上がる。まだ寝惚けるが、ベッドに紅汰と風魔が横たわりベッドの隣に椅子に座る魔界神がいた。
風魔は一向に起きない。
魔界神はそれを見て、
「うーん、起きないか。ならこうしよう。紅汰、そっちの方よろしく。」
魔界神がゆっくりと風魔の胸に手を伸ばす。自分も触れ、ということだろう。紅汰と魔界神は遠慮なく風魔の胸を強く揉んだ。心地よい感触に思わずニヤリ。魔界神はさらに目に止まらぬ速さで何十回と揉んだ。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?!????!!?!??!?!?!?!?!?!!??!?」
風魔は飛び起き、二人を殴った。
「ぶべらっ。」
「まかろんっ。」
クリティカル!紅汰に9999999999999999999999999999999999999999ダメージ!!
紅汰は吹っ飛んだ!
クリティカル!魔界神に9999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999ダメージ!!!!
魔界神は首の骨が折れた!!
「まったく、本気で殴る事ないじゃないか…減るもんじゃないんだし。」
魔界神は折れた首を左右に曲げ、修正する。
死なないのだから流石魔界神だ。
風魔は涙目で二人を睨みつける。
可愛い。
「…うぅ……次やったら鼻フックデストロイヤーで鼻へし折るぞ…。」
「分かった分かった。さて、満足したので本題に入ろう。」
反省してねぇ…この変態神。
「実は魔界深底部にある牢獄『タルタロス』が最近脆くなってね、封印しているクロノスの力が強まってきたんだ。クロノスはそのお蔭で人間に干渉したそれが亜李奈。タルタロスが補強される前にクロノスは亜李奈に解放してもらおうとしているのさ。僕が君達を呼んだのはタルタロスの補強だ。僕が行きたいとこだけどウィルから呼ばれてね、君達に行ってほしい。」
「なんで、俺達?」
紅汰は疑問を口にする。
魔界神はウィルと知り合いっぽいからLとか使えばいいのに。
「今は皆忙しい時期でね。動けるのが君達しかいないんだ。大丈夫、案内に僕の愛用の魔狼の子供の魔狼を遣わせるし、念のためルシファーとアスモデウスも護衛に行かせるよ。」
「拒否権は?」
風魔が聞いてみる。
「無い。」
ですよねー。
「亞李奈の方はサタンと忌羅とハサンに任せてあるよ。じゃあ行ってらっしゃい。」