56 終決、一難去ってまた一難
短いよ~。
シーゼ・ディスト診療所 受付前
この場所に紅汰、風魔、忌羅、白音、ディル、大剣少女、ナイフ少女、シーゼ、セナ(シーゼの助手)の計九人が今回の事件のまとめをしようと集まった。
忌羅が淹れられた茶を飲んで一息吐く。
「さて、関係ない者が若干二名いるがまぁよかろう。まず殺人鬼ことそこのナイフ女について説明する。」
忌羅がチラッとナイフ少女を見ると少女は肩をビクッと震わせた。
「率直に言う。この女は人間ではない。」
『!!?』
忌羅の言葉に全員が驚く。
忌羅はその姿を見て邪悪に笑い続ける。
「あの骸骨男に調べさせた所、ここ十五年あの街で子供の死者が増えている。死亡原因は主に餓死、親に棄てられたのだろう。死んだ子供の数は約千二百人、私の能力でナイフ女のナイフを食した所非常にまずい。まぁそれはおいといて能力で使い主の詳細もそれなりに分かる。そして最近人斬りが現れた。街の人間共は殺人鬼が現れたと勝手な妄想をした。さらに丁度さっき言ったようにその女は人間ではない。十五年という年月を得て、死んだ子供共の魂達が人間共の勝手な妄想によって肉体を得てこの世に現界した千二百殺されないと死なない夜霧の幻想殺人鬼、人間ではない正体不明の女だ。まぁ、私の見る限りリッチに近い存在だな。」
大半が首をかしげた。
ただ風魔とシーゼだけが理解しているらしい。
シーゼが指を立てて説明する。
「つまり、この女の子は人斬りの登場と人々の妄想によって産まれた十五年間の子供の魂が集合し肉体を得て現界したリッチに限りなく近い存在、人ではない正体不明の女の子、という事でしょう。ご理解しましたか?」
それでも理解できない馬鹿二人。
「…つまり、この女の子は幽霊が体持ったそのリッチとやらに近い存在?」
「この女の子は……人じゃない?」
紅汰と大剣少女が言ってみる。
何人かが頷く。
「ところで、俺をしつこく追い回した上に右肩切断したこの馬鹿少女は誰だ?」
風魔が聞いてみる。
当然、答えられるのは当人だけで他全員が大剣少女に視線を向けた。
「あははは…えーと私は、龍崎籃創界の鍵竜殺しグラムの所持者です。」
苦笑いで答える籃。
「グラム…最強の竜殺し剣か。何故俺や風魔を狙った?」
風魔の問いに籃は笑顔で答えた。
「欲しかったんです。」
「は?」
「だって創界の鍵って皆グラムさんみたいな人がいるんでしょ?私、仲間が欲しくて貴方達の鍵を狙ったんですけど……ところで、この縄ほどいてくれませんか?」
籃の両手は縄できつく縛ってあった。
風魔が邪悪な笑みを浮かべる。
「知ってるか?縄を使って手首を縛ると血が回んなくなってどんどん腐ってくんだぜ。日本の拷問術ってすげぇよな。」
「おぉ……最近の若者は随分と激しいプレイがお好きのようですね怖い怖い。」
そうして時間はあっさりと過ぎて行った。夕方頃、紅汰は風魔に聞いてみた。
「なぁ、その女の子どうすんだ?」
「住む場所がねぇしな…ルーシャに預けるか。」
「ん?私が貰っても構わんぞ。拷問相手を探していたLに高く売れるだろう。」
「よし、一回ルーシャのとこに戻るか。」
忌羅の話を一切無視して二人は会話を続ける。その時だった。
「紅汰殿!風魔殿!大変ですぞ!」
紅汰の背後に骸骨の仮面を着けた男が現れた。驚いた紅汰が前に飛び退き風魔の豊満な胸に顔をぶつけた。風魔の顔が一気に紅くなる。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?!!?!???!」
二度目の平手打ち。
クリティカル!紅汰に9999ダメージ!!
「ぶぎゃらばっ!!」
紅汰は気絶した。
「なんだって!?王国が大被害!?」
突如やって来た骸骨仮面の男、ハサン・サッバーサによって事が伝えられた。
ペンドラゴン王国が突然何者かの襲撃を受け、今も円卓の騎士達が戦っているらしい。
「一難去ってまた一難か。紅汰、急ぐぞ。」
「分かってる!!」
二人(+ハサン)は何か叫ぶシーゼ達を無視して二人は診療所を飛び出した。
その後を追う籃と忌羅。
運命はこれを初めに狂い出す。