表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と神様の異世界冒険記  作者: サイトゥー
第一部 始まりに至る物語
52/113

55 集う武霊

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「遅い!」

碧光の刀と邪悪なオーラを放つ大剣がぶつかる。衝撃波が辺り一周を吹き飛ばす。

忌羅は二メートル越えの大剣を片手で軽々しく振るう。

ディルは一本の刀で受け流していく。


だが、今の状況が不利だと判断したのか大剣を弾き後退した。

忌羅は再び構えの態勢を取る。

ディルは肩越しの白音をチラリと見て、

「白音、お前の刀を貸してくれ。」

その言葉に今まで硬直していた白音が覚醒し、トボトボとディルに長刀を渡した。渡し際に一言、

「怒って…いますか…?」

白音の問いにディルは首を横に振った。白音の目に驚愕が表れる。

「怒る?お前に怒るのはお門違いだ。俺が怒っているのは世界だ。悪ばかりが弱者を糧とし生きる、お前の綺麗な手をどす黒い血で汚したこの世界に俺は怒っていた。でもな、」

ディルは言葉を区切って、白音の目を真っ直ぐ見つめた。

「お前を止める命知らずの馬鹿がいるこの世界、悪ばかりじゃないんだな。それならまだ捨てたもんじゃねぇ。」

ディルは碧光の刀を鞘に納め、白音から受け取った長刀を腰に差す。睨みつけるように忌羅を見る。

「東方の武神よ。その剣撃、見事だった。お前は我が原点刀を使うに値する。」

ディルの腰が碧光を放つ。すると、ディルの腰左右に四本、計八本の刀が現れた。

「我ら一族が八つの試練を乗り越え、軍神から授けられし一騎当千の刀。これこそ原点刀『我流真ガルマ』!!貴様にこの軍神の剣撃を超えられるか!!」

忌羅はディルの八本の刀に驚くどころか、笑っていた。その笑顔はまさに武神の笑み。戦いを糧とし戦いに生きる武神だった。

忌羅は大剣を消失させると今度はさっきとは違う凄まじい覇気が感じられる大剣を出現させた。

「貴様のその長刀、武霊が宿っているな。私のこの大剣は『孤独なる武神レギ』と言ってな。面倒な武霊が宿っている。」

忌羅が言うと忌羅の大剣から声が発せられた。

『軍神か。相手にとって不足なし』

どうやら忌羅の武霊も忌羅に負けない戦闘狂らしい。

「武霊同士の戦い、というわけか。面白い。」

ディルは両腕を左右の刀の鞘にゆっくりと置く。おそらく八本同時に抜刀するつもりなのだろう。


百戦錬磨の東方の武神、一騎当千の原点の軍神。


どちらが勝つか、今ぶつかる。


ディルが一歩、踏み出す。


忌羅が一歩、踏み出す。


その時だった。

「紅汰!危ない!!」

突然、何所からか聞き慣れた声が聞こえた。風魔だ。康太は何所ぞと辺りを見回すと背後に、大剣を紅汰に向かって振り下ろす蒼髪の少女がいた。

レーヴァテインが手元に無い今、紅汰に避ける術はない。

死ぬ、直ぐそう思った。だが、突然何かが紅汰を突き飛ばした。そのときの康太の視界に映ったのは闇になびく銀髪、血だらけの羽織と見る者を魅了する美貌、見覚えがあった。

「風魔!?」

風魔は一瞬だけ、紅汰の顔を見て美しく笑った。

瞬時、血が舞った。

風魔の右肩から先が切断された。どうやら、体を反らして直撃は防げたようだ。風魔は意識が飛びかけた目で紅汰を見た。

「風魔!!」

紅汰は叫んだ。友の名前を。

「風魔!!」

「俺を、誰だと思ってる?」

二度目の紅汰の叫びに風魔は覚醒し、一瞬で態勢を取った。

そして一瞬で、少女に接近し顔面に空中回し蹴りを決めた。少女は悲鳴すら上げる暇もなく吹っ飛ぶ。コンクリートの地面を何回か転がって少女は昼間会ったときは別人のような動きで受身を取った。

だが、目の前に風魔がいると流石に驚いた。大剣を振ろうとしたが風魔の胸に輝くペンダント、グングニルが風魔の左手に現れ大剣を弾いた。大剣が弧を描いて闇夜に舞う。風魔は苦しそうな表情の中、全ての力を注ぎ込んで少女の顔面に飛び膝蹴りを決めた。

少女はコンクリートの破片を幾つか散らし、柱にぶつかって静止した。頭から血が流れているが、少女の頭の上には幾つものお星様が回っていた。


「はぁ…はぁ……ッ、いてぇな…。」

風魔は妖しく笑うと、糸切れた人形のように地面に崩れ落ちた。コンクリートの地面が赤く染まる。

「ますたー!ますたー!」

現界したグングニルが自分のマスターの体を揺する。紅汰も急いで風魔の駆け寄る。

「まずいな、出血が多い。シーゼさんに治してもらわないと。」

紅汰が呟いたその時だった。

ギィィィンッ!!背後で巨大な衝撃波が発生した。

武神と軍神が交差し、互いに背を見せる。

戦いを征し、勝利したのは





























































「私の勝ちだな、軍神よ。」

「俺の負けか……武神。」

ディルの体に十字の傷が刻まれ、血が噴出する。

ディルの八本の刀が宙を舞い、地面に突き刺さる。

その内の一本、白音から受け取った長刀が光を発すると、黒髪で長刀を帯刀し紫の胴衣を着た長身の武士が現れた。あれが、白音が所持する武霊だろう。武士はディルの傍らに寄り、

「フ、見事な負けだな。相手は傷を負っておらんぞ?」

「…俺の実力不足だ。」

「そうか。しかしだ、貴様は我が主の手を汚した。いや、汚したに等しい、貴様がいなければ主の手は汚れる事はなかったろうに。主がいなかったら、貴様死んでいたな。」

「…そうかもな。」

「…貴様が主に罪悪感を抱くならば、貫いてみせよ。お前の悪・即・斬、とやらをな。」

武士は光となって一本の刀になった。


ロンドの街にもうすぐ夜明けが訪れる。



























あの後、重傷怪我人一行(+首が血だらけの女の子)は忌羅と俺によってシーゼなんとか(忘れた)診療所に運ばれ五分間の治療を受けた。治療は見せてもらえなかったが、すっぱり切断された風魔の右肩を綺麗にくっつけたのだからやっぱり、神の腕なのだろう。


とりあえず全員目覚めるまで、俺達は待つことにした。

窓の外から暗雲が見えた。




























北極 悪の崖

荒々しい波に削られた崖、その崖の先に阿修羅像を思い出させる服を着た一人の男性が立っていた。凍りつきそうな気温の中、男性は寒がる様子もなく、海の彼方を見つめる。

血を想像させるほど赤い髪、頭には狐らしき耳、腰の下辺りには九つの赤い尾。そしてなんといっても特徴的なのは、顔や手、服までにも赤い刻印が刻まれていた。

男性は踵を返し、向こう側にある自分の家に戻ろうとした。

数歩先に男性が立っていた。

「やぁ、五千年ぶりだね、阿修羅。」

「…貴殿か。このような穢れの異境に何用か。」

阿修羅、と呼ばれた男性は男性の姿を見る。五千年前とまったく変わってない。

「…近いうちに戦争が起こる。君に力を貸してほしい。」

「我は戦を好まぬ、無駄な血が流れる事無意味である。」

「その言葉、月詠から教わったよね。彼女の子供、十六夜って言うけど、彼も戦争に巻き込まれる。」

「…我は無力。余計な血を流してしまう。」

男性の頼みを断り続ける阿修羅に男性は吐き捨てるように言った。

「君は、そうやって逃げるのかい?」

「我は見ることを止めた。聴くだけにしたのだ。」

「…どうしても嫌かい?……………………………………だとしても?」

男性の言葉に阿修羅の目が少し開く。

「何?それは…本当なのか…?」

「もちろん。本当だよ。」

阿修羅は数秒黙りこんで、男性が望んだ言葉を口にした。

「分かった。この阿修羅、この世全ての悪を受け止めてみせよう。」

レーヴァテイン「解せぬ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ