55 夜霧の幻想殺人鬼
更新遅れてすいません………
「ぐ……あぁっ!!」
痛みに耐え風魔は少女を突き飛ばす。
その内に『再生速度』の限界を超え、腹に空いた巨大な穴を再生する。
「くそ………。」
「フフフ…痛いでしょ?でもね、私達が受けた痛みはこんなモノじゃないんだよ。だから…………じっくり、殺してあげる。」
少女がナイフに付いた鮮血を細い舌が舐める。
その瞬間、少女が五人になった。
「なっ!?」
少女達が風魔にナイフに切っ先を向け、突っ込んでくる。
瞬時の判断で跳躍する。
四人の少女がぶつかりそうな所で、急停止する。
四人だと!?
その時だった。
風魔の左肩にナイフが心臓近くまで食い込んだ。
意識が吹っ飛ぶ。
そのまま、地面へと落下する。
下では四人の少女達がナイフを構えている。
落下と同時に八つ裂きにされるのは目に見えている。
意識が吹っ飛んだ風魔にはどうにもならない。
風魔は地面に叩きつけられる。
衝撃で風魔は一気に覚醒する。
だが少女達はいつまで立っても風魔を八つ裂きにしようとはしなかった。
おそるおそる目を開けると、
四人の少女達はナイフで自らの首を突き刺していた。
四人の少女達の顔が驚きに変わり、絶命した。
「な…………。」
驚きと痛みが重なる。
また意識が薄くなっていく。
その時だった。
誰か風魔の前に座り込んだ。
「やれやれ、困った女だ貴様は。姉上に似すぎだな。」
誰かの細いが風魔の肩傷に添えられる。傷が瞬時に塞がった。
『体力回復』の限界を超えて、意識を回復させる。
目を開けて、自分を助けた相手の顔を見上げた。
「忌羅、さん!?」
自分の師匠である神己刹那の弟の神己忌羅だった。
刹那と同等の美貌が月光を浴びて輝く。
すぐに起き上がる。
忌羅は回復した風魔を見ると、立ち上がり動かない少女達の四本のナイフを死体から引き抜きその内の一本の刃を、
喰った。
「え!?」
ガリガリと強靭なナイフの刃が忌羅の歯に砕かれ、飲み込まれた。
続いてもう一本、飲み込むとさらに一本、これも飲み込むとさらに一本。
しかもナイフの柄まで噛み砕き、これも飲み込んだ。
「……………なるほどな、殺人鬼の正体はこれか。つまらん。」
忌羅は吐き捨てるように言うと、風魔に向き直る。
「貴様も、その姿でなければ圧勝だったろうに。」
風魔の胸を見詰めながら忌羅が言う。
「え、どういう事ですか?…………………!!」
風魔は自分の体を見ると、顔を紅潮させ忌羅に背を向けた。
さっきの肩への攻撃と地面の落下の衝撃で帯が外れ、下着のサラシも斬られた事によってサラシがバラバラになり、豊満な胸が露出していた。
そんな風魔を忌羅は笑い飛ばす。
「フ、安心しろ。貴様の全裸は既に見た。初めて、という訳ではない。」
「い!?いいいいいいいいつ見たんですか!!?」
「貴様が結晶を使い着替えていたあの時だ。」
「でもあの部屋は窓もなければ隠れる場所なんて何処に、」
「狐は昔から人を化かす、というではないか。気の抜いた貴様達に幻術を掛けるのは容易だったぞ。貴様、姉上よりも良い体だ。我が尊敬に価するぞ。」
つまり、忌羅は最初から二人を幻術で付けていた。風魔の着替えも幻術で見ていたという事だ。
忌羅、後で殺してやる…。
ん?さっき誰かいたような……。
「さて、殺人鬼の方は良い玩具になるが弱すぎてつまらん。」
忌羅は唖然としている五人目の少女の前に座り込むと邪悪な笑みで少女に囁いた。
「貴様、死にたくないか?」
ビクゥッ!!と少女の肩が震え始める。少女の瞳が絶望の色に染まっていく。
「あ……あぁ…………………………………たくない……死にたくない…死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!」
震える少女の姿を見て忌羅の笑みがさらに邪悪になる。
「ならばどうする?私の足でも舐めて命乞いでもするか?態度次第では見逃してやるぞ?」
「舐めますなんでもします奴隷になってもいい…お願い……殺さないで……………………死にたくない……………………。」
「ほぉ?その言葉、偽りはないな?」
「はい…お願いです殺さないで…………………なんでもしますから……。」
「ならば、貴様の四股でも千切って胴体と首と頭しかないオブジェにでもして闇市でも売るか?」
「そ…そんな………………お願いしますやめて……私達はただ……」
「ただ……なんだ?」
「普通の…人間として生きたい…………。」
忌羅はその言葉を聞くと、笑いを抑えきれないのか肩が小刻みに震えている。
「ククク、ハハハ!やはり人間というモノは面白い、生にそこまでこだわるとはな。私の心を充分に奮わせてくれる!………まぁ貴様には玩具として興味があるが今は人斬りが優先だな。」
忌羅は少女持っていたナイフを奪い、少女の心臓に突き刺した。
「ごはぁっ!?」
「これで貴様は一回死んだ。この場は見逃してやる、精々あと千を超える人生を楽しむのだな。」
忌羅は少女の心臓からナイフを引き抜き、地面に落とした。
風魔は驚愕と忌羅の邪悪さで動けなかった。
「風魔、その女は任せたぞ。焼くなり煮るなり煮込むなり炒めるなり切るなり炙るなり好きにするがいい。私は人斬りの所へ行く。」
忌羅はそれだけ言うと、月光の街の闇に消えていった。
夜霧は晴れていた。
「あぁ、いい忘れていたがその女については明日辺り、説明してやろう。」