6 ヤンデレって見てみたいね。ツンデレも。
「何で、俺達がこんな目に会わなくちゃいけないんだー!!」
紅汰は昼の暗い森の中叫んだ。
「いや、1006%俺が原因だけどな。」
「二人とも急いでください。」
ルイナが急がせる。慌て落とした速度をあげる。
何故、こんな事になったかというと……
数分前……修羅邸に修羅の姉である刹那が現れた時、
「忌羅、希殺羅。」
修羅は自分の兄弟に名前を呼んで用件を分からせる。
「よかろう。丁度、体を動かしたかったところだ。」
忌羅の両手から日本刀が出現し、忌羅の両手に収まる。
「きゃっはー!刹那お姉様だー!」
希殺羅も喜ぶように拳を構えた。
「ルイナ、二人をあの町へと連れていけ。」
「修羅様、私も、」
「ルイナ、お前にこんな事は言いたくないが、命令だ。頼む。」
ルイナは数秒黙り、紅汰と黒雨の肩を叩いた。
「行きましょう。」
「「え?」」
ぼーっとしている二人の手をルイナが強引に引いて森の中へと消えた。
「さて、姉上。何のようだ?」
修羅は鎖をかえし付きの物に変えた。
「決まっている。ここに月詠の魔力を感じた。だからだ。月詠が生き返ったかと思ったがまさかあの黒雨とか言う小僧が孫とはな。」
「で?黒雨をぼうするつもりだったのだ、姉上?」
刹那の赤い目が忌羅の紅い目を捉える。
「決まっている。私の物にする。」
「この兄弟の中で最も恋愛経験が多い私から言うと黒雨は絶対姉上の物にはならない。」
「ならば殺すまで。」
その飛躍した発言に三人は言葉を失った。
「月詠は昔から私の物だった。ならその孫も私の物だ。私の物にならないなら他の者の物になる前に殺す。」
狂気に染まった目が三人の動きを止める。
「姉上、それはもう愛情ではない。ただの所有欲だ。」
修羅が軽くジャンプし、屋根に着地する。
「ならばお前が正しいと証明してみるか?修羅。」
「姉上に証明したところで無駄だろうな。だから少し足止めさせてもらう。」
希殺羅も忌羅も屋根にジャンプして同じく着地する。
「貴様ら、私の能力を忘れたのではあるまい。無謀だな。」
刹那の体からありえない量の妖力が溢れ出す。そして、
刹那が相手を貴様と呼ぶときは必ず怒っている。
もう逃げられない。修羅は第六感を集中させる。
次の瞬間、三人の視界が金色に染まった。
こうして、現在に至る。
「刹那様は珍しい多重能力者なのです。」
「能力があるんですか?皆。」
紅汰の問いにルイナは首を振る。同時にルイナの猫耳に付けてある鈴のピアスが優しい音を奏でる。
「能力を使いたいならば覚醒することです。刹那様の能力は百以上ありますが、代表的なのは『弱肉強食』、『魂狩り(ソウルイーター)』の二つ。『弱肉強食』は殺した相手の体の一部を食べることでその相手の能力、知能、身体能力、全てを吸収し、自分の物にしてしまいます。『魂狩り(ソウルイーター)』は辺りにさ迷う魂を食べることで『弱肉強食』同様のその者の全てを吸収します。この二つの能力を使い、刹那様は倒した相手を吸収しどんどん強くなっていくのです。」
「そんな人を黒雨の婆ちゃんは倒したのか……。」
「月詠様は『天魔神拳』呼ばれる神拳の使い手で私も直接見たことはないのですが、凄いらしいです。」
暗い森の先に太陽の光が見えた。
「もう少しです。頑張って……」
走っているルイナが突然、倒れた。
完全に動かない。気絶しているようだ。
「ルイナさん!」
紅汰がルイナを呼ぶが、返事の代わりに狂気の笑い声が二人の耳に響いた。
「残念だったな。」
森の光に影が現れた。九つの尻尾を持つ影だ。
「さてガキ共、何をして遊ぼうか?」
二人の瞳に魔神の姿が映った。