33 能力開花
刹那の部屋
「うむ、今日は楽しかったぞ。風魔。
時間があれば次も頼むぞ。」
「あ、はい。失礼します。」
一礼して笑顔の刹那が居る部屋から脱出する。そして自室へ向かう。
この四時間と五十二分、刹那の質問攻めにあった風魔は疲れきっていた。
しかしそんな苦労もなんとなく報われたような発見をした。
一つ目 刹那は案外『豆腐メンタル』だと言うことだ。
泣いている刹那を慰めるのに二時間も掛かった。風魔が慰めの言葉をかけるとプラスな反応をするのだが、たまにマイナスな発言をすると、また泣いてしまうのだ。
質問攻めより、慰めに疲れた。
二つ目 泣いている姿が『可愛い』
いつもは恐ろしい刹那の涙目が可愛いかった。上目使いも。まるで小さな小狐のようだった。
つい、三十枚ほど携帯で写真を撮った。反省はしていない。
三つ目 『案外良い人だった。』
会話といい、態度といい、最初に会った時とは大違いだった。
口調も穏やかになっているし、いつもの殺気溢れる目で見てこない。
まぁ三つだけだったけど大きな収穫だった。
と、そんな事を読者の皆様に説明している内に自室に着いた。
ドアノブを回し、自室に入った。
「おかえりなさいです。ますたー。」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」
状況を理解するのにたっぷり二分掛かった。
メイド姿のグングニルがいたからだ。
「やぁ。こんばんは。」
ついでに変な人が椅子に座っていた。
グングニル、風魔が持つ『創界の鍵』天魔槍オーガ・ザ・グングニル、に宿る『武霊』つまり神であり、自分をマスターとして慕ってくれる可愛い美幼女だ。
そのグングニルが現在メイド服を着ている。
風魔は木製の椅子に座り、グングニルが木製のテーブルの上に置いた紅茶を口に含み、向かいの男性を不思議な目で見る。
「はじめまして、風魔十六夜君。僕はグングニルの前マスターのウィル。よろしく。」
肩まで伸ばしきった輝く黒髪に銀の瞳、身長は百八十センチメートルぐらいだろうか。結構高身長だ。
「はぁ、それでえーと、グングニルに会いに来たんですか?あとあの服はなんですか。」
「今日はグングニルに会いに来たし、君にも用がある。あとそのメイド服は僕の趣味だ。あ、ナース服の方が良かった?」
「どっちも嫌です。」
「そうかい…………。あと、」
心底残念そうに紅茶を飲むウィル。
すると懐から赤い液体が入った注射器を取り出し、机の上に置いた。
「これ、打ってみ、」
「嫌です。」
「…………まだ中途半端にしか言ってないよ。」
「俺にこの注射器を打てって事でしょ。」
「うん。そうだね。」
「嫌ですよ!これTーウィルスだったらどうするんですか!バイオハザードですよ!」
「違う違う。これは僕が作った薬品で、ウィルスではないよ。」
この人頭大丈夫か。
大問題だ、大丈夫じゃない。
会って数分の青年に正体不明の注射器打てとかおかしい。
とりあえず落ち着くためにカップにある紅茶を飲み干した。
「あぁ、言い忘れていたけど、その紅茶にこの薬品入れたよ。」
「?」
「いや、本当に入れたよ。はっきり言うと今君は能力を手に入れようとしている。この薬品は君の能力を作る為の物だ。早速使ってくれないか。」
ウィルスではないと分かると一安心する風魔だが、その能力にとてつもない悪寒を感じた。今体が冷たいからだ。
「?どうやって。」
「グングニルを襲う。」
「嫌です。」
即効で拒否する。
「ま、ますたーが、わた、わたしを!!!????」
顔を赤くして騒ぐグングニル。
「じゃあグングニル、風魔に抱き付いてくれ。」
「え……りょ、りょうかいしました!ますたー!」
ウィルの言葉に従いグングニルが風魔に抱き付く。
「よし、じゃあ次はキ●スだ!」
「伏せ字になってねぇ!」
突っ込む風魔の顔に自らの顔を近付けるグングニル。
「グングニル!止めろ!絶対後悔するぞ、好きでもない男にんな事するなんざ、」
「すきです!」
は?……………今何て言った?
スキヤキ?違う。
「わ、わたしはふうまいざよいさんのことがだいすきです!!」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………マジ?」
「はい!」
その時だった。
風魔の体が急に暖まり、変な感じがした。
「俺もだよ。グングニル。」
「ふぇ!?」
「発動したね。」
風魔はグングニルをお姫様抱っこし、耳に唇を近付け、
「でもな、キスはまだ早いよ。」
そう言った瞬間、グングニルの顔が真っ赤になり、遂には気絶してしまった。
「ハハッ、もうお休みの時間かな。」
グングニルをベッドに置き、再び椅子に座る。
「で、俺のこの口調はなんなんだ?」
「フフフ、それこそが君の第二の能力、『究極紳士』だ。」
「詳細は?どんな能力ですか。」
今、口調が戻った。
「えーとね、『性的に興奮すると発動。全てのステータスが二十倍になり女性に対して優しくなり格好良くなる。『限界突破』のデメリットが消える。』かな。」
「なんで……性的に興奮すると発動するんですか?」
「いや、昨日緋●のア●アを見てさ。」
「……………………………………………………………………。」
「あと君には二つ能力があってその一つ目が『究極紳士』、二つ目が『限界突破』だね。まだ開花してないけど。」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………で、それだけですか。」
「あ、あと君にはもう一回発動してもらうためにLからAVを借りてき、」
「んなもん誰が見るだよ!あとLって誰だ!糖分大好き天才探偵か!?」