28 親の目を盗んで投稿した結果がこれだよ!!
なんとか更新できそうです。
月詠が死んで一週間が過ぎた。
妖怪と人間の戦争は、勝ち負けのないまま終戦した。
妖怪も人間も被害は大きかったが、私や天魔、乱季にとって月詠が死んだことが一番の被害だった。
月詠が死んだ次の日、私は一日中自室で涙を流した。
だが、泣いている時に、頭に考えが浮かんだ。
この悲しみを紛らわすための方法が。
私は遠くに出かけ、街の人間共を片っ端から殺した。
女も子供も、皆、全て。肉片残さず。
それが、月詠に対しての償いだと思ったからだ。
愚かな人間達への復讐。
それが今の私に唯一できることだと思っていた。
思っていたのだ、私は。
そして月詠が死んで二週間が経過した。
血まみれで帰ってくる私を見ても天魔と乱季は何も言わなかった。
私は、手に付いた血を舐め、自室に向かう。
「良いのかい?それで。」
「…………貴様か。」
背後から聞き覚えのある声がした。
振り向くと、ずっと昔に会った自称天人の男だった。
「いやぁ。月詠が死んでから、随分と変わり果てたね。」
「……何の用だ。」
天人は私に近寄り、壁に背を預けた。
「いやさ。アークがさ、月詠が死んでから君と同じように人間を殺してるんだよね。まったくくだらない。」
私と同じ行動をしているアークをくだらない呼ばわりするということは私も同じなのだろう。
「くだらない、だと?」
「月詠の意志を理解できないのかい?」
月詠の意思?私は月詠ではないから分かるはずもない。
「彼女は守りたかったんだよ。君も天魔も乱季も妖怪も人間も。」
天人のくだらない言葉を侮辱するかのように私は笑う。
「ハッ、人間だと?月詠が人間を守りたかっただと?笑わせる。月詠は、風魔月詠は私達妖怪の為に自らの命を奉げたのだぞ!?」
「そうかな。じゃあなんで彼女は君を何度も説得したんだい?」
言葉が詰まる。この男、何故そこまで知っている?何故私に言うのだ?
「彼女は争いを止める方法があれしか無かったから自らの命を使ったのさ。」
「なら何故私に相談しなかった!!私が無力だったというのか!?私が……愚かだったから……月詠は死んだのか……?」
叫ぶ私はあの時の光景を思い出し、自然と涙が溢れていた。
「違うよ。彼女が君に相談すれば君は彼女を必死に止めるだろう。だからだよ。彼女は君に人生を変えられ、色んな人に会って幸せだった。彼女だって言っただろう。十六夜や君には自分よりも幸せになって欲しいって。それが彼女の、風魔月詠の意思だ。今の君に出来る事は、彼女の意志を繋いで、その意志を穢す者を裁き、月詠の意志を風魔十六夜に教えることだ。」
「……出来るのか?私に…?」
「彼女は君に十六夜の未来を託した。彼女が信頼したんだ。出来るさ。」
男は泣きじゃくる私の頭を優しく撫で、指をパチンと鳴らすと、消えた。
「良いかな。忘れないでくれ、彼女の、風魔月詠が神己刹那に託した意志を。」
そして私の身体は自然に動いた。
月詠の意志を守るため。
次回で過去編終了です。