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俺と神様の異世界冒険記  作者: サイトゥー
第一部 始まりに至る物語
24/113

27 恋愛って結局は性欲が弱小した物だと思う

誠に申し訳ありませんが、多分今日から更新がメッチャ遅れると思います。

理由は言えません。


私は久しぶりに殺気を漂わせ、天魔の部屋に向かっていた。

月詠が結婚だと?

別に反対などはしない。月詠がその男を選んだのだからな。

だが、もし相手が月詠を守れなかったら?

だから私は保険をかける。

「天魔、入るぞ。」

ノックもせず、天魔の部屋に入る。

「やっぱり目が月詠様に似てますね~。」

「本当です。髪の色も銀だったら良かったのに、黒だったのが残念です。」

天魔の部屋には天魔と黒髪の男がいた。

しかも天魔の腕の中には黒い髪の幼い人間の子供が抱かれていた。

私はさっきの会話からして男が月詠の婚約相手で、天魔に抱かれている幼児は月詠の子供だと察する。

「あら、思ったより早くいらっしゃい ましたね。」

天魔が幼児を男に優しく渡す。

男は私を見ると身体を一瞬硬直させた。そして私に一礼する。

「こ、こんにちは。俺はアークという者です。月詠の婚約者です。」

「私は神己刹那。よろしく頼むぞ、アーク。」

試しにアークに軽い『妖魔波動』を飛ばす。

もちろん幼児には当たらぬようにアークの頭を狙う。

そして『妖魔波動』がアークに触れた瞬間、

『妖魔波動』が消滅した。

「刹那様、アーク様に魔力、妖力、神力は効かないのですよ。」

「何?」

特に『妖魔波動』を飛ばされても怒らないアークは私に説明する。

「俺の能力は『対力魔神(アーク)』俺に対して魔力、妖力、神力が干渉した場合、自動的にそれらは崩壊します。」

「なるほど、『神狩り』か。」

私はアークに近寄り、アークから子供を受けとる。

その子供の顔は月詠にとてもよく似ていた。髪の色を除けば。

「名前なんですけど……刹那さんに名付け親になってほしいんです。」

「私が……月詠の子供の名付け親………………。」

無意識に子供を優しく抱きしめていた。

どうやらアークに保険は必要なさそうだった。




そして、私は月詠の子供に『風魔十六夜』と名付けた。

振り返ってみれば、十六夜は月詠の孫ではなく、息子だったのだ。

何故、最初に会った時に気付かなかったのか、自分でも不思議だった。




































そして一年後、

人間と妖怪の間に戦争が起きた。

原因は人間による妖怪の領土への侵略、攻撃、ゴミの不法投棄などだ。

最初に鬼神達が怒り、鬼神から他妖怪へ、そして最後には天狗や私達、九尾の狐にまで怒りの炎は広がった。

しかし、月詠だけは戦争に反対した。

私は月詠に何度も説得された。

私も天魔や乱季に説得を試みるが、天魔達は最後の日まで首を縦に振らなかった。

私の兄弟の忌羅は戦争を楽しみ、人間達の兵器を力の限り破壊し、時には街に侵入し人間達を殺戮していた。。

最初は睨み合いだったこの戦争も最後は人間達が優勢となっていた。


そして運命の日が訪れた。


その日の夜、妙に明るかった。

まるで昼間のように。


私は月詠に妖怪の山のとある丘に呼び出された。

その丘は天狗の館よりも低い位置にあったが、それなりに高かった。


「月詠、どうした?」

「刹那、今は……夜なのに昼間に明るいな。」

月詠が空を見上げる。

釣られて私も空を見上げる。

やっぱり明るい。

その時、私の腹部に激痛が走った。

「がはぁっ!!?」

地面に倒れる。

二秒後に月詠が私を殴ったのだと認識する。


「月詠……何、の…………真似だ?」

倒れる私を月詠は重なるようにして抱きしめた。

「ごめんなさい…………。」

月詠は弱々しく私の胸に顔をうずくめる。

月詠の両目から透明な液体が流れる。

「月詠?」

「貴方がいなければ私は私ではなくなっていた……。天魔様や乱季様、アークも十六夜にも会えなかった。

こんな幸せ一生ありがとうを言っても足りないわ。だから……………刹那、今度は貴方が幸せになって。あの場所に、皆が笑っているあの場所に貴方が行って。私はもう十分、幸せになったわ。」

月詠は唖然とする私から離れ空を見上げる。

「こんなにも空が明るいのは、人間達が『核』を撃ったからよ。あと三十秒程度で、妖怪の山を死の土地へと変えるわ。」

月詠はなんとか起き上がった私を笑顔でみる。

その笑顔は月詠が最初に見せた時の笑みとまったく変わらなかった。

「もし……私のわがまま、聞いてくれるなら……………十六夜をお願い。あの子には、私の何十倍も何百倍も幸せになってほしいの。」

「何を…言っているのだ?」

月詠にゆっくりと手を伸ばす。

だが、その手は届かなかった。

月詠が浮いたのだ。

正確には月詠の背中から白銀の翼が出現し、月詠は軽く宙に浮いた。

「皆に……よろしくね。」

「待て、一体何を…」

私の言葉は月詠の頬を流れる大量の涙を見て止まった。

そして月詠は私に一言、言った。

「さようなら、お母さん。愛してる。」

月詠はそれだけ言うと白銀の翼を羽ばたかせ、空へと翔んでいった。

「月詠ィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

そして一線の白銀の光が空越えたとき、銀色の光が空を覆い尽くした。



気付くといつの間にか空はいつもの黒い夜空になっていた。

ただ、白銀の羽が空から落ちてきた。

私は目の前に落ちてきたひとつの羽を右手で軽く握った。

開くと月詠が展開した翼の羽だった。

羽は光を発し、消えた。

私の両目から熱く、透明な液体が流れる。

止めようにも止められない。月詠が生きた証拠が消えた。

思い出だけになってしまった。

私と月詠を繋ぐ物が。













































『風魔月詠』は死んだ。

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