25 部活の実験でスタンガンを作ってしまった……まぁ、単発式だけどね
感想、誤字報告をしてくれた
『ambulantjail』さん、ありがとうございました。
月詠と部屋に戻った私は椅子に腰を掛け、一息吐く。
まさか天魔と鬼神が人間である月詠を山に住ませる事を許可するとは思わなかった。
「刹那さん、本当に良かったの?」
「構わん。何を言われようが押しきる気だった。」
月詠がベッドに座り、横になる。
「私、どうすればいいのかな?」
私を銀色の瞳で見つめる。
月詠はよく見ると、髪も目も銀色だ。
「知らん。自分で考えろ。」
「……そうだね。じゃあ、刹那さんとお話したいな。」
その後、私は月詠から質問攻めにあったが、退屈ではなかった。
トントン、私の部屋のドアがノックされた。
私はドアの向こうから異様な殺気を感じた。
「月詠、隠れてろ。」
心配そうに私を見つめる月詠だったが、自分には何も出来ないと悟ったのかベッドの下に潜り込んだ。
私はゆっくりとドアに耳を澄ませる。
「誰だ?」
「天狗の幹部でございます。」
天狗どもか。だが、油断は出来ない。
奴等はドアの向こうで武器を構えているかも知れない。
「何の用だ。」
「いえ、大した事ではございません。刹那様、先程の人間に会わせて頂けませんか?」
おそらく月詠を殺すつもりだろう。
だが、私は言ったはずだ。
月詠に手を出せば、魂狩りの真髄を見せてやるとな。
一応ドアを開ける。
「死ねぇ!!」
いきなり刀を持った天狗が突っ込んでくる。
刀の刃を素手で掴み、へし折る。
一斉に武装した天狗たちが私の部屋に押し入る。
私は『魂狩り』で集めた能力の内ひとつ『妖魔波動』を発動させる。
『妖魔波動』は自らの妖力を具現化し、相手を攻撃するという妖怪専用能力だ。
部屋に押し入った天狗達が『妖魔波動』を受けて、吹っ飛び壁に激突する。
「くそ、囲め!一斉に攻撃するのだ!」
リーダーらしき天狗の声で、体制を立て直した天狗達が私に武器を向け突っ込んできた。
「雑魚が。」
『妖魔波動』で吹っ飛ばす。
その時、気付かなかったが、うまく避けた天狗が私に接近し刀を降り下ろした。
「ちっ!」
斬られる覚悟で天狗の顔面に『妖魔波動』を放とうとしたが、天狗の横腹に椅子が投げつけられた。
「月詠!?」
月詠がベッドから這い出し、精一杯の力で天狗に椅子を投げつけたのだ。
「馬鹿!隠れてろ!」
月詠を発見した天狗が月詠に刀を降り下ろした。
私はその時、咄嗟に体が動いた。
ザシュッ!!
グロテスクな音と共に私の腹部に冷たい刃が深く突き刺さった。
激痛で一瞬、意識が途切れる。
口から鉄臭い味の液体が流れるのを感じるが、気にしない。
私は最大級の『妖魔波動』を放出した。
天狗達おろか、部屋の家具や壁、窓ガラスまでもが吹き飛んだ。
「ぐ…………ばはぁっ!」
最大級の力を使った見返りで、口と腹部から大量の紅液が流れる。
気付けば私の部屋があった場所は血と肉片しか残っていなかった。
「刹那さん……ごめんなさい…私の、私のせいで…………刹那さんが………………。」
泣き崩れそうになる月詠を私は優しく抱きしめた。
「良いのだ…………お前が気にする事ではない。」
「刹那さん……私、強くなるよ……いつか刹那さんを守れるぐらい。強くなる。」
その言葉を聞いて私は自然に、目から透明な液体が流れるのを感じた。
(そうか……これが………………涙というものなのだな。)
誰かに守ってやるなど言われた事もなかった私は『守る』という言葉を聞いて自然に安心したのだろう。
私は孤独だった。
これからも、永遠に。運命なのだな、と思った。
しかし、その運命はたった一人の貧弱な子供によって変えられてしまった。
彼女、『風魔月詠』によって。
私の意識はそこで途切れた。
私はあの後、駆けつけた天魔によって治療された。
天狗達は私が仲間を殺害したことを追及したがっていたが、乱季と天魔によって止められた。
そして十一年後、月詠は成人、つまり二十歳となり、私と同じぐらいにまで身長が伸び、一層美しく、強くなった。
頭も天魔からの教育で良くなり、体力も鬼神の乱季に鍛えられ最初に会った時とは見違えるほどになった。
ただ、足だけは良くならなかった。
私も天魔に頼ってみたが、どうにもならないと言われてしまった。
途方に暮れた私は無意識に月詠と最初に会った場所に来ていた。
「…………月詠。」
「彼女の足、なんとかしてあげようか?」
突然の声に振り向く。木と雑草しかなかった場所には細身の不思議な格好をした男が立っていた。
「何者だ。」
いつも通りの殺気溢れる目で男を睨みつける。
天魔からは昔と比べて目が穏やかになったと言われたが実感がない。
「天人だよ。」
「天人…………だと?」
天人とは龍神神話上で私達のいる地上よりも遥か高い雲の上にあると言われる天界に住む汚れ無き種族だと天魔から教えられた。
「天人が何の用だ。」
「へぇ、天人ってのは認めるのかい。まぁいいや。さっきの話だけど、月詠の足、僕が治してあげようか?」
その言葉を聞いて刹那の心臓がドクン、と跳ねる。
天魔でも治せない月詠の足をこの男は治せると言っている。話を聞くだけでも聞いてみたい。
しかしその考えは男から発せられる異常な魔力によって警戒へと変わった。
「いやいや、警戒しないでくれ。でも本当に月詠の足を治したいのなら、彼女の強い『意思』が必要さ。彼女が本当に足が良くなりたいと願えば、きっと治るだろうね。」
男はそれだけ言うと、指をパチンと鳴らし、一瞬で私の視界から消えた。
「意思か…………。」
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