2 自分と同じ名前の子供がはしゃいでいるとイラッとして殴りたいと思うのは俺だけ?
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何処かの竹林
天霧紅汰と黒雨十六夜はトラックに引かれ死んだと思ったらいきなり、この竹林に無傷で倒れていた。
すると突然、灰色の巨人、黒雨が言うには『トロール』という想像上の生き物らしい。
二人はトロールの左手にある血が付いた棍棒を見て、即座に逃げた。
しかし、行き止まりになりピンチかと思った瞬間、トロールの頭が吹っ飛び鮮血の雨が降った。
そこに現れたのは、九本の尻尾を持つ美しい男性だった。
「少年、大丈夫か?」
金髪の男性が振り向き、二人の安全を確認する。
男性は金髪で目は水色に近い青、腰辺りに九本の狐の尻尾。その顔は人間離れの容姿としか言い様がない。
「………………………え、あぁ、は、はい。助けてもらってありがとうございます……。」
とりあえず礼を言うと、男性は笑顔を見せた。
「そうか、うむ。駆けつけたかいがあった。…所で、君達は何故、此処にいるのだ?」
言葉に詰まる。
トラックに引かれ死んだと思ったら此処にいましたー♪なんて言ったら、不審者と思われそうだ。
「えーと…死んだと思ったら、此処にいました。」
黒雨があっさり言った。
黒雨バカー!
が、紅汰の予想とは違い、男性は目を鋭くして頷いた。
「……ほぅ、ウィルが連れて来たのは君達か………よし君達、私の家に来なさい。」
「「え?」」
男性は首を振って、付いて来いと示し歩き出した。
慌てて、追う。
十分ほど歩くと、竹林の中に周りが壁で囲まれている巨大な和風の豪邸があった。
男性が豪邸の中に入ると遠慮するように、二人は豪邸内に入った。
「……なるほど、つまり君達は別世界からここに来てしまったのか。」
神己修羅と名乗った男性は湯飲みを木製の机に置く。
現在、修羅に茶の間で話を聞いてもらっていたのだ。
「ところで、」
「「はい?」」
二人同時に返事をする。
「君達はそんなに私の尻尾が気になるのか?」
確かに修羅の腰には九つ金色の尻尾があるのだ。二人はさっきから尻尾しか見ていない。
「すいません、尻尾がある人ってアニメとかゲームでしか見たことないんで。」
紅汰が謝る。
「いや、気にするな。しかし異世界か……。」
目を閉じて考え事をする修羅。
一方、黒雨は何故か落ち着きがない。
「修羅様、失礼します。」
襖を開けて猫耳で黒髪の美女が入ってきた。
「どうした?ルイナ。」
「何者かが結界を破って侵入しました。」
「数は?」
冷静に聞く、修羅。
「二です。」
「いや、三だ。」
修羅が閉じていた目を開けた。
その時、丁度修羅の家の玄関の戸が開かれる音がした。
「修羅様……」
ルイナが上目使いで修羅を見つめる。
その目にドキッとする二人、一方修羅は無表情な目でルイナを見る。
「安心しろ。私の客だ。」
修羅が言った瞬間、襖が勢いよく開かれた。
「修羅おっ兄様ぁ~~!!」
「うおぉっ!?」
襖から現れたのは、金髪の美少女。
しかもいきなり黒雨に抱きついたのだ。
「ええぇぇぇぇッ!?」
黒雨や紅汰はともかくルイナまで驚いている。
「ん?あれ……お兄様じゃない。」
「ほぉ、希殺羅。お前こんな所に男を作っていたのか。やはり私の妹、侮れなんな。」
さらに出てきたのは金髪でこの世の者とは思えない美貌の持ち主。
「ち、違うよ!忌羅お兄様!」
慌てて黒雨から離れる少女。
「忌羅、入るときはノックぐらいしたらどうだ?」
修羅が忌羅と呼んだ者は男らしい。
「何故、そのような事をするのだ?貴様の物は私の物、私の物は私の物だ。」
金髪の美少女は今度は修羅に抱きついた。
「その者達は?」
忌羅は紅汰達の事を言っているようだ。
「彼らは異世界から来たらしい。」
忌羅のの鋭い目が二人に向けられた。
「ほぉ、異界からの人間か。さぞ私を満足させる話があるのだろうな」
この時、二人は忌羅の笑みに悪寒を覚えた。