109 大地の神様の過去
今回も!短いですよ!そろそろ長いの投稿するつもりですが。
妖怪の山
「迷った……。」
風魔は見事に迷った。窓から飛び降りて森の中の中を走り回ったのは良いが完全に迷った。
「どうする……ッ!?」
一瞬、気を抜いた。その隙に誰かが風魔に攻撃を食らわせ気絶させた。
風魔の能力も反応できず、気を失った。
「阿修羅……あの龍神神話の大地を創ったとされる、あの阿修羅ですか?」
白衣の青年は座禅を組んで精神統一をする修羅に問いかけた。
「あぁ、兄上は私達と違って数千年の歳の差がある。私もここ何万年かは会っていないがな。」
修羅は袖から札を取り出し、地面に貼り付ける。
「私達の危機を聞き付けやってきたか……。」
修羅は短くため息を吐いた。
何故なら、阿修羅がくると必ず数千人単位で人が死ぬからだ。
紅き九つの尾と体中に刻まれた紅き紋章、阿修羅は妖怪の山に入った。
「哀しきことだ。私が参じると多くの命が散る。哀しい。実に哀しい。」
阿修羅は目から鮮血の涙を流し、天を仰いだ。
そして彼自信の過去を思い出す……
北極
「やぁ、阿修羅。今日は友人を連れてきたよ。」
そう言って私の質素な家に入り込んでくるウィルと……。
「お、お邪魔します……。」
私の呼吸が止まった。私の家にウィルと共に入り込んできたのは、北極の夜の闇の中でも月のように輝く銀髪。幼き顔立ちを残しながらも、大人さを帯びた美貌。雪よりも白い肌。大自然の中にいるような癒しと初々しさを感じさせるエメラルドの瞳。豊満な肉体を押し込めた幽玄で、妖艶に輝く白銀の着物。
この世のどんな女性よりも美しいと言えるほどの美貌を持つ少女がそこにいた。
彼女を見て唖然とする私。少女は私が見つめているせいか、頬を赤らめ助け舟を出すようにウィルを見た。
「あぁ、彼女は刹那の子供の風魔月詠。仲良くしてくれ。」
ウィルの声で我に返った私は月詠から視線を逸らし、ウィルを見た。
「刹那の子供?何処からどう見ても人間ではないか。」
疑問を投げかけた。
「わ、私は……お、お母さんに拾われて……その、い、一応娘と言うことに……なってます……ごめんなさい……。」
何故か謝る月詠。私は瞬時に彼女と刹那の関係を理解した。
「なるほど……刹那が……で、何用か?」
「君の手当て。」
「ゑ?」
「いや、君この前人間と戦争したでしょ。一対五千の。結構怪我したでしょ。手当てしなきゃ。月詠。」
「は、はい……し……失礼します……。」
月詠は私の前に正座する。間近でその顔を見るとやはり美しい。見惚れている私を無視して月詠は私の袖を捲りあげた。小さな悲鳴が聞こえた。
私の腕は焼け爛れていた。戦争で全身に破片が突き刺さり、大して熱くもない火炎放射を浴びせられたりといろいろされたが私の命に別状はない。破片は全て取り除いたし、火傷は水に浸かれば問題ないからだ。
「な、何をしているのだっ!?」
私の素肌に触る彼女を振り払おうとしたが、この少女を傷付けてはならないと何故か本能が告げ私は叫ぶだけにした。
「え、て…手当てですけど…。」
月詠はウィルが差し出した箱を開けると、そこから液体が入ったビンを開け中身の液体を布に掛けた。何か嫌な匂いがする。月詠はその布を私の腕にあてた。痛い。傷口が焼けているかのように熱い。布で私の腕を拭いた月詠は清楚な布を取り出し、腕に巻きつけた。なんだかぎこちない作業だ。そもそもウィルの力があれば私の傷などすぐ完治するのでは?
そう思っている内に、月詠は布が巻き終わったのか、次は私の服に手を掛け止めた。
「あのぅ…脱いでいただけませんか?」
何故そうなる。大体、私の体に触れること自体普通の人間なら精神が汚染さ数分で廃人化するのだが……この少女はまったく異常がない。
「駄目だ、君が穢れてしまう。」
「彼女は大丈夫だよ。君の『この世全ての悪と罪』の汚染効果は彼女には一切効かないんだ。」
ウィルが勝手に暖炉に火を灯して、温まっている。しかし、彼の言うことは疑問だ。私の能力は神であろうと誰であろうと『心』と『罪』がある限り対象となる。月詠は心がある。罪はなくとも心があれば能力の対象となるはずだ。
「簡単だよ。彼女は天魔神拳の後継者なんだ。」
「何!?それは信かっ!?」
「うん。どんなモノも天魔神拳の前では通用しない。だから君の能力も彼女には効かないのさ。」
私は驚愕するしかなかった。あの、伝説の風魔詠う終焉の刻を扱えるものがいようとは……改めて月詠を見る。この幼き少女が…………。
「さ、取り合えず脱いだ脱いだ。傷が悪化するよ。」
ウィルはこの少女に何をさせたいのだろうか。いつもこの天人の考えることは意味不明である。黙っていると月詠が睨んできたので、本心嫌々ながらも破れかけた服を脱ぐ。
「し、失礼します…………。」
何故か月詠の手に注射針があったのかは私にはよくわからなかった。あの後何故か気を失って、目覚めると体中が布だらけで寝かされていた。その隣には小さな寝息を吐いて眠る月詠。
「この寒さの中、君の手当てで疲れたのさ。起こさないでくれよ。」
ウィルは暖炉のすぐ近くに座り、火を眺めていた。
「月詠を君に合わせた理由はただ一つ。月詠が君に会いたいと言ったのさ。」
「何?」
「修羅から君の事を聞いてね。いつも一人ぼっちなのは可哀想、というなんとも年頃の純粋な女の子の意見だろう?だから彼女の要望に答えて連れてきたけど、どうだい。彼女は?」
私は月詠の寝顔を眺めた。そして言葉を紡ぐ。
「私には眩し過ぎる。この少女が。あまりに高貴で、純粋で……。」
「うんうん。そうだよね、なんたって修羅と天魔が教育しているだからその辺には気を配っているんだろうねぇ……。」
「ウィル、此処は冷える。彼女を連れて山へと戻るが良い。」
「あれ?この後雑談タイムか北極の氷をも溶かす熱い夜を。」
言いかけたウィルの顔面に黒い液体が飛んでいく。しかし、結界を張っているのかガードされた。
「私はその手の冗談が嫌いだ。」
「そうだったね。なんでだろ、骸だって結構性欲が」
今度は睨みつけて黙らせる。ウィルは苦笑いし、立ち上がった。
「じゃっ、お言葉に甘えて帰るよ。じゃあね。阿修羅。」
ウィルが指を鳴らすと月詠とウィルが消えた。
「風魔……月詠……か。」