107 巨神
そろそろ、長い話を投稿するつもりですよ。
オケアノス島 海岸
翡翠色の少年は海岸に立ち、黄金の甲冑を身に付け、変わった形状の剣を持った親友を見つめていた。
「良いのかい、ギル。」
名前を呼ばれた親友は彼に振り向きもせず、閉じていた赤い唇を開く。
「言うな、友よ。我とて流石に心配でならぬ。」
翡翠の少年は親友の手を見た。そして目を見開く。彼の手が僅かながらに震えていたのだ。
傲慢で強欲、最強にして最悪、かのバビロニアの王である『ギルガメッシュ』は震えていたのだ。
彼やギルガメッシュはオケアノス海に眠り、そして戦争が始まった今目覚めようとしている龍神神話の大巨神オケアノス神を打ち破る為にやって来た。一方地上では大怨帝が復活するらしい。問題は場所だ。大怨帝が復活する場所はなんと彼やギルガメッシュの故郷であるバビロニア王国なのだ。バビロニア王国には彼らの家族がいる。
だから、ギルガメッシュは家族を失うことが怖いのだ。それは彼とて怖い。
本当は地上班に参加して大怨帝を打ち向かえたかった。しかし本部長のアーサーの願いで海上班に回った。ギルガメッシュは当然、反論した。しかし、HFIの中でオケアノス神を打ち倒せる力を持つのはギルガメッシュしかいないが故に、ギルガメッシュは承諾するしかなかった。
「なら、ど「確かに心配だ、だがな…我はアーサーを信頼しておる。あの男とて我との約束を破るほど愚かではない。故に、我はアーサーに委ねよう。我が故郷の命運を…!」
「ギル……………。」
「案ずるな、友よ。我は王の中の王。頂点にして神。たかが大男に負ける道理もなかろう?」
翡翠の少年は親友がいつも通りの調子に戻ったことに微笑んだ。いつも唯我独尊の彼に。
「さて、エンキドゥ。ヘリを下ろせ。」
「へ?」
「我の宝物庫の書物には巨神達は強烈な電磁波を発するらしい。機械等は飛ばすと落ちるぞ。」
エンキドゥと呼ばれた翡翠の少年はギルガメッシュの知識に感心しつつ、海上班にヘリを下ろすよう言った。
「この天地をも乖離する『開闢剣レア』なら、オケアノス神を倒せるとアーサー、お前はそう思っているのであろうな。まったくもって正解よ。」
ギルガメッシュは剣を天に向けた。暗雲が太陽を遮り、オケアノス海を暗黒の海へと変えた。
波が荒くなって行く。
「……エンキドゥ、全員退避せよ。」
「全員退避!山の上まで走れ!機器は使うな!」
エンキドゥの指示で二人以外の隊員達が仲間を先にと走らせ、二人に深々と頭を下げ、走って行った。
「エンキドゥ、全員と言うのはお前を含まれておるぞ?」
「……僕は、一応…神に造られた人形。その空虚な僕に生きる素晴らしさを教えてくれたのは君だ、ギル。僕は君は恩人であり友達だよ。友を助けるのに理由はいらない。そう言ったのは君だよ。」
エンキドゥの優しげな微笑みに、ギルガメッシュも笑みを溢す。
「…そうだな、我が失敗するとそなたも死ぬと思ったが…間違いであった。我が失敗することなど有り得ぬ。」
ギルガメッシュは頼もしい不敵な笑みを浮かべ、暗雲が覆うオケアノス海を睨み付けていた。
一方、地上は夜となっているが、大怨帝討伐班は………
「如真、こんなところでチョコレートを食べないでくれるかい……。」
「かくいうアーサーもメロンパンをかじっているではないか。」
「ふぁぅむぅふぁんふぉぅふぁい!!」
「口に食べ物を含んだまま喋るな如真、行儀が悪い。」
「やれやれだぜ…………。」
地上班の隊員達は何故か世界規模の危険が迫る中、遠足のように皆で集まって食事を摂っていた。しかし、
本部長のアーサーは巨大メロンパンを食べ、前線に出る真田如真は巨大チョコレートなどの巨大な甘い菓子を口の周りを汚しながら食べ、同じく前線に出るディルムッド・オディナこと麗美な女性は人の胴体ぐらいある肉に喰らいつき、アーサーの召集で集まった青年、『渕星闢乱』は子供の頭ぐらいの大きさのパンをちびちびと食べている。
そしてHFI隊員で、後衛で魔術師のジル・ド・レェ、情報調達で暗殺者のハサン・バッハーサ、双剣の一条迅、前衛の槍使いクー・フーリン、前衛で勇者のヘラクレスの五人は鍋を囲って仲良く雑談となっていた。
「君達、やる気ある?」
流石にこの主力メンバーに本気の焦りを抱いたアーサー。すると、
「アーサー殿、緊張しては力が出せませんよっ!この日本の料理、『ONIGIRI』を食べてリラックスしましょう。」
と言って僧衣の袖をまくって綺麗に形が整えられたおにぎりを差し出すジル・ド・レェ。
「ジルの言う通りだ。相手はいつ目覚めるかわからない。しかし緊張状態では力は出せません。」
と、口についた肉の脂を指で拭う黒い甲冑のディルムッド・オディナ。
「ふぁっふぁふぉーっ!」
意味不明な事を言う武者鎧を着た真田如真。
「リーダーのアンタが落ち着かねぇんじゃ、皆落ち着かねぇよ。」
正論を言って、制服姿で横になり星を眺める渕星闢乱。
「アーサー殿!我ら山の翁が見張っておりますので御一緒にこの『ODEN』を食べませんか?」
と、こんにゃくを差し出す骸骨仮面ハサン・バッハーサ。
「安心しな、いざと言う時は俺の『死を穿つ魔の棘』が巨人の心臓を貫いてやんよ。あ、一条テメェ!それ俺の卵!」
その槍で卵を突き刺す青き槍兵クー・フーリン。
「フン、貴様が落ち着かぬでどうする。我が国には、『戦いとは始まる前から既に決定している』と言う言葉がある。貴様がいるのだから敗けはしまい。死ぬかもしれぬが。クー・フーリン、槍で具を突くな。」
と、ワイシャツにジーパンと言う一番空気が読めていない装備の女性、一条迅。
「心配するな、俺を誰だと思っている。かのヘラクレスだぜ★」
と、余裕ぶった笑みを浮かべちくわを皿に盛る上半身裸で肌黒のヘラクレス。
「本当に………大丈夫かなぁ……………………皆!!」
アーサーは緊迫した声で全員が武器を取る。今までの緩みきった表情ではなく、それは英雄達の表情だった。
大地が悲鳴を上げ、揺らめく。山々は崩れる。アーサー達が見張っている山が崩れた。山の頂上は雲を越えていたが、それは悠々と見上げる程巨大だった。
「…………これ、無理じゃね?」
「なんのぉ!真田の魂に大きさなど関係ないわぁっ!」
「お前のその馬鹿が時々羨ましいよ。」
「まったくだ。クー・フーリン、自慢の槍はあたるか?」
「無理。」
「ありゃペガサス使った方が良いな。」
「暗殺者たる我等には、ちと……難しいですね…。」
「やれやれだぜ………。」
英雄達の先頭にアーサーが立つ。暗雲が覆う空でも彼が掲げた黄金の剣は太陽の如く輝いている。
「さぁ、行こうか。皆。」
さらにオケアノス海
此方も海が割れ、見上げる程の巨大な巨人がいた。
ギルガメッシュとエンキドゥの口元には笑み。
「行こうか、ギル。」
「あぁ、良い開幕だ。精々我を楽しませろ?巨人。」
戦いが始まった