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短編

ナチュラルジオ人種差別

作者: 月蜜慈雨
掲載日:2026/08/27



 アジア人はよく他人種に、目を釣り上げられバカにされているが、異世界にも中々堂の入った差別表現がある。

 エルフだったら、耳の前で手のひらを広げてエルフのバカ広い耳を表す差別表現がある。

 ドワーフだったら、鼻の前に握り拳を置いて、他人種より幾分か丸い鼻をバカにする表現がある。

 このように多種多様な人種差別表現があって、知ってたら喧嘩になり、知らなかったらそのこともバカにされ、やはり喧嘩になる。



 ゆえに罵倒の語彙も豊かだ。

 聞くところによれば、各種族の罵倒語録集なんて本も売っている。しかも結構重宝されている。

 ブラックジョークもさかんだ。

 人間は知らない内に五倍に増える、とか、オークは味覚がないとか、そういう人種の印象に応じたブラックジョークが百はくだらない。



 今日も酒場で、人間の冒険者たちが獣人族の悪口を肴に酒を飲んでいた。

 おいおい、ここに人間しかいないからいいものを、大胆すぎやしないか、などと思っていると、どうやら客の一人に獣人族の家族がいたらしい、案の定喧嘩になった。



 うわって思いながら見ていると、テーブルの破片がすぐそばを横切った。

 横切ったは可愛い表現だった。

 当たったら即死だった。

 そこでなんかもう酒を入っているし、理性なんか振り切りれて、プツンと怒りのスイッチが入ってしまった。



 気がついたら、喧嘩していた二人を叩きのめして、酒場の外に放り投げてた。

 周囲にパチパチと拍手される。

 気分がいい。

 こんな酒場で評価されてもって話だけど、評価されないよりよっぽどいい。

 お代も半額になったことだし。



 空を見上げると、地球とは比べ物にならないくらい星がたくさん輝いている。

 天文学の知識があれば、ここがどこの星系なのか、分かったりするんだろうか。

 もしくは本当に異世界であることが、証明出来るんだろうか。

 詮無い話だ。



 涼しい風が吹き抜けて頭を撫でる。

 異世界に来て6年、なんとか明日食う飯を考えなくてもよくなってきた。

 それでも未来は不透明で、たまに怖くなる。

 今でも義務と権利が明確だった、日本に帰りたい。

 それでも今は、ここで生きてゆくしかない。

 


 ため息をこぼしながら、今日も帰路に着いた。







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― 新着の感想 ―
面白いです。 定番の異世界転生とファンタジーを舞台にしていながら、視点は文学的。 新宿センター街、夜の一場面みたい。 読者受けを狙うなら、叩きのめすシーンを細かく描写すべきなのかもしれないが、作品と文…
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