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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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疑惑と殺意

「真央~! 真央~! 起きなさい!」


母親が部屋のドアを叩く音で、真央は目を覚ました。


「警察の方が来られてるわよ。 早く起きなさい!」


真央は眠そうに体を起こし、頭をボリボリと掻きながらぼそりとつぶやく。


「なんか、懐かしい夢を見てた気がする・・・」


真央が戻ってから二日目。

父親が警察へ連絡したことで、未解決だった「神隠し事件」が再び動き出し、担当刑事がすぐに訪ねてきた。


――自宅 応接室


来訪した刑事は二人。田中刑事と笹田刑事。

田中刑事は年配で目つきが鋭く、笹田刑事は若く、上下関係が一目でわかる。


田中刑事が口を開いた。


「立花さん。

息子さんが無事に戻られて、本当に良かったですね。」


父親が丁寧に頭を下げる。


「ありがとうございます。

これも、皆さんのご尽力のおかげかと・・・」


「いえいえ、真央君が自分で戻られたわけですから、我々の力では・・・」


田中は真央に視線を向けた。


「さて、戻ったばかりで悪いんだけれども、

3年前の失踪事件に尋ねたい事があるんだが、良いかな?」


「いいですよ。

僕が分る事なら」


笹田がボイスレコーダーを取り出す。


「真央君、この会話は録音させてもらうけど良いかな?」


「いいですよ。」


笹田はレコーダーをテーブルに置き、田中へ小さく合図を送った。

田中は事前に用意していた“質問事項”が書かれた手帳を開き、ページをめくる。

内容を一度確認し、ゆっくりと視線を上げて真央をまっすぐに見つめる。


「では、

3年間どこに?」


真央は予想していた質問に、心の中で苦笑する。

(いきなり答えられないヤツきたね・・・)


「分かりません・・・

三日前に意識が戻って・・・

それ以前の記憶がないんです」


(記憶ないってのが、一番ごまかしやすいよな・・・)


そこへ母親がコーヒーを人数分お盆に乗せて入ってきた。

膝をつき、刑事二人と父親、真央に丁寧に配っていく。


田中は軽く会釈し、質問を続けた。


「つまり、戻った以前の記憶がないと?」


「はい。」


田中は間髪入れずに次の質問を投げる。


「その・・・

記憶が戻った場所はどこだったのかな?」


「学校の教室でした。」


「それはどの教室?」


「3-Cです。」


「3-Cと言うと

真央君が消えた教室?」


「親から“消えた”って説明を受けましたけど・・・

記憶が戻った時、僕がいたのは、自分のクラスで、自分の席のところでした。」


「それは・・・消えたって認識してないってことかな?」


「はい、消えた記憶はないです。」


田中は渋い顔をした。


「――ん~・・・

では、君の前に“佐伯彩乃さん”が消えたのは覚えているかな?」


「消えるのは見てません。

クラスのみんなが『消えた』って騒いでたのは覚えてます。」


「真央君が戻った時、西洋風な古着を着てたとか・・・?」


「はい、着てました」


「見せて貰っても良いですか?」


父親が答える。


「それが・・・

朝には消えてて・・・」


田中は驚き、声を上げた。


「ええっ! き、消えた!? ど、どういう風に?」


「いえ、普通に干してたんですが・・・次の日の朝には・・・」


笹田も驚き、声を震わせる。


「た、田中さん・・・

人間が消える現象と、お、お、同じでしょうか?」


田中は手帳を持つ手に力が入る。


「そ、そうかもな・・・」


真央はコーヒーを飲みながら、二人の刑事の反応を観察していた。


(この様子なら・・・大丈夫な感じだな・・・)


田中が真央に向き直る。


「真央君、

最後にもう一つ聞きたいんだが・・・」


「え? あ、はい。」


「記憶が戻った時は学校だったと、さっき言ったが・・・」


「え? はい。」


「他に・・・14人・・・

誰か見当たらなかったかな?」


「え? 14?」


真央はその数字に心当たりがなく、眉をひそめた。


(え? 14人? どういうことだ??)


田中はその反応を見逃さない。


「・・・何か気になる事が?」


「あ、いえ・・・オレ以外には誰も・・・」


「・・・そうですか」


真央は“14人”という数字を頭の中で転がす。

その横で、父親と刑事たちの会話が続いていた。


「戻ったのは真央君だけのようですね・・・

期待したんですが・・・」


「他の家族の方々には、説明されるんですか?

ウチだけ戻って・・・申し訳なくて・・・」


「そこは気にせずとも・・・

逆に戻る可能性が出たわけですから・・・」


「はあ・・・」


「では、今日はこの辺で・・・

お忙しい所、ありがとうございました。」


田中は最後に真央へ向き直った。


「真央君

何か思い出したら

必ず連絡をください。」


その目は、何かを探るように真央を見つめていた。


「は、はい・・・」


「では、これで失礼します。」


そう言うと二人は立ち上がる。

父親と真央もその動きに合わせて、立ち上がった。


玄関へ向かう途中、笹田が母親に声をかけた。


「おかあさん。

息子さん戻って本当に良かったですね。」


「は、はい。

ありがとうございます。」


靴を履き終え、二人は向き直る。


「では。」


田中と笹田は軽くお辞儀し、玄関を出ていった。

扉が閉まる音が家の中に響く。


田中はすぐに胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。

紫煙がふわりと立ち上る。


笹田は門を閉めながら話しかける。


「いやあ、田中さん

一人だけですが、戻ってよかったですね・・・


3年間、まったく進展がなかったですから。」


田中は煙を吐きながら、質問を質問で返した。


「なあ、笹田。

あの真央って子、どう思った?」


思わぬ問いに、笹田は田中を振り返る。


「え?

どうって言うと?」


「普通に感じた事だ」


「感じた事って・・・

田中さん、まさか!?」


笹田は田中が疑っているのではと焦り、慌てて否定する。


「た、確かに・・・

記憶がないってのは、ウソの可能性もありますけど!


彼は同級生の目の前で消えてますし、神隠し事件の当事者ですよ。」


田中は落ち着いた声で返す。


「落ち着けよ。

“犯人じゃねえか?”って考えは、俺にだってねえよ。


そんなことじゃなく・・・

お前・・・あの子が大学生に見えたか?」


「・・・見た目の話ですか?」


「ああ・・・

俺には高校生にしか見えなかったな」


「大学三年って言っても、高校生みたいな子は割といますよ。」


「そうかあ?

その割に体はかなり鍛えてただろ・・・」


笹田もその点には同意した。


「あ、それ!! 自分も思いました。

あれ、相当鍛えてる体ですよ。」


田中は煙草をゆっくり吸いながら、真央の姿を思い返す。


(それと・・・あの目・・・

あの目が一番気になる・・・


あの落ち着き方・・・


自分のことで刑事が来てるのに、あれで平常心でいられるかよ。

無関心・・・?


いや・・・一度だけ反応したな・・・

あれは何に反応した?)


黙り込んだ田中に気づき、笹田が声をかける。


「田中さん? どうかしましたか?」


田中は煙を吐きながら、ゆっくりと口を開いた。


「なあ、アイツ・・・

行方不明者数の所で変に反応したな。」


「え? そうでしたか?」


「一度帰って、レコーダー確認してみてくれ。」


「あ、はい。」


―――


真央は自分の部屋に戻り、ひとつため息をついた。


机の椅子に腰を下ろし、頭の中を整理し始める。


「とりあえず、向こうの世界の事は話さずにすんだけど・・・」


が、田中刑事が口にした“行方不明者数”がどうしても引っかかっていた。

真央は時系列を整理することにした。


(まず、オレが向こうに送ったのは、オレを含めて7人・・・

たしか、GW明けの5月17日だったか・・・


その後、二週間程度経った頃から、数人ずつ合計8人

――約二カ月の間で送り込まれてきた。 ここまでが15人。

(*向こうの世界時系列)


その後、ピタリとやんだが、その5か月後ぐらいから、再び送り込まれ始めた・・・

オレがコッチに戻るまでに、12人が送り込まれていた・・・


再開までに送られてきた15人は全員が同級生、

再開後のまったく知らない年上の12人・・・)


田中の言葉が脳裏に蘇る。


『他に・・・14人・・・

誰か見当たらなかったかな?』


(あれは、その後送られてきた12人の事を知らない・・・)


真央は椅子にもたれ、腕を組んだ。

眉間に自然と力が入る。


(どういうことだ・・・事件になってないのか?)


当時、“神隠し事件”は連日テレビで報道されていた。

“柏木彩乃”と“立花真央”が大勢の前で消えた事実は、全国の視聴者の好奇心を刺激し、

ワイドショーでも毎日のように取り上げられた。


(まてよ・・・警察の管轄外ってことじゃないか・・・?)


真央はPCを立ち上げ、全国の行方不明者を調べ始めた。

だが、膨大な数にすぐ諦める。


次に、VPSのログを確認する。

真央は向こうの世界にいた頃から、来訪者が現れる原因を予測していた。


――それは、VPSに接続可能なタブレット。


段ボールの中にタブレットがなかったことで、その予測は確信に変わった。

誰かがタブレットを手に入れ、ロックを破ったのだ。


「家の固定電話の番号をパスワードにしてたのがマズったよな・・・

同級だと調べようと思えば、調べられるもんな・・・」


ゲームに“名前を打ち込まれた人間”が、“この世界から消える事“を、知ってる人間の仕業。

理解してやっている。


――それは、完全な殺意。

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