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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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18/19

解き放たれたもの

夕刻、ダンジョンから戻った真央たちは、門番亭の窓際で食事をとっていた。

窓際の丸テーブルには大皿が並び、そこからそれぞれが自分の皿へ取り分けて食べている。


イチゴは、この世界で生き返って三度目の食事。

ガツガツと飯をかき込んでいる。


「昨日もっ・・・思ったけど・・・ここのぉ・・・飯はっ・・・サイコー!」


真央と彩乃は、その様子を見て苦笑した。

真央が口を開く。


「イチゴ、飯は逃げないんだから、ゆっくり食べろよ・・・」


イチゴはスプーンを止め、真央を見る。


「バカだな真央~、焦って食ってるんじゃない。

これは~、料理に対するリスペクトだよぉ~!!」


そう言って振り返り、


「ね~、コロナさん!!」


コロナに向けてスプーンを差し出す。

困ったように手を振るコロナ。


その時、窓の外の路地裏からガシャガシャと音がして、ウッディコが走ってきた。

真央が気づいて声をかける。


「ウッディコさん!!」


ウッディコは立ち止まり、窓際へ近づく。


「マオ! アヤノ! 迷宮探索は進んでるか?

ん?」


テーブルに三人いることに気づき、視線を向ける。

真央が答える。


「イチゴです。」


「イチゴ・・・マオとアヤノの前日に来ていた来訪者か?」


「そうです。 それで、何を急いでたんですか?」


「そうだ。 のんびり話してる暇はないんだ。

新しい来訪者が現れたらしいんで、教会裏に急いでるんだ!

じゃあな」


ウッディコはそう言うと、来た時と同じようにガシャガシャと走り去った。


「え・・・?」


真央はウッディコの言葉に固まった。


「どうかした?」


彩乃が尋ねる。

真央は眉をしかめ、言葉を探す。


「先日、エルミダさんと話したこと覚えてますか?」


彩乃が頷く。


「あの時・・・1本のゲームが渡り歩いてるって言ったでしょう?」


「そうね・・・」


「その前提が・・・今崩れようとしています。

ゲームはオレの自宅にあるはずなのに、来訪者が来てしまった。」


真央はテーブルに肘をつき、口を覆うように顎を乗せ目を閉じる。

額に汗が流れる。


彩乃も思い出しながら口を開く。


「ほら・・・そのゲームって渡り歩くんでしょ?

もう別の所に行ったってことじゃない?」


真央は目を開け、彩乃を見る。


「オレの前・・・慎吾さんの両親がゲームを捨てるまでに30年かかったんです。

ウチの両親が、もう整理したとは思えないですよ・・・」


「そうね・・・早すぎる・・・」


二人の話を食べながら聞いていたイチゴが、フォークを止めて入ってくる。


「ねえねえ~

それ、何の話してるの~?」


「あー、そう言えば、

あの時イチゴくんは、ガルシアさんに宝箱の罠を教えて貰ってたわね


エルミダさんとの話は聞いてないか・・・」


彩乃がエルミダとの会話の説明を終えると、イチゴがフォークを振りながら確認する。


「そのゲームが~、渡り歩いてこの世界に誘っているってこと~?」


「理由は分からないけどね・・・」


「で、さっきのウッディコさんの~、話につながるって訳か~」


黙って聞いていた真央が、つぶやくように口を開いた。


「・・・考えがまとまらない・・・な・・・

オレ達の世界にあるゲームと、このアクトリア・・・ノクサリウス・・・

そして、オレの部屋にあるはずのゲームが次の来訪者を送り込んだ・・・」


「でも、真央と柏木さんは学校からやってきたんだよね~?

それってどういうこと~?」


イチゴの問いに、真央は“ハッ”とした。

背中がゾクリと冷たくなる。

体が震え、冷たいのに汗がドッとあふれた。


(ヤバい! ヤバい! ヤバい!・・・・)


二人は固まった真央を見つめる。

彩乃は立ち上がり、右手を恐る恐る差し出す。


「・・・真央君・・・?


どうか・・・したの・・・?」


真央は両手で顔を覆い、天を仰いだ。


「やらかした・・・」


「え?」


「オレが・・・アクト・・・

――アクチュアリーをFDDから解き放ってしまったんだ・・・」


ガックリと肩を落とし、太ももに手をつく。

丸テーブルの足を凝視したまま、動かなくなった。


「え? なに?なに~?」


彩乃とイチゴは意味が分からず、

お互いを見ては真央を見る動作を繰り返した。


彩乃は立ち上がり、椅子を持って真央の横へ回り込んで座りなおした。

そして、真央の太ももにそっと手を添え、やさしく言う。


「ねえ・・・詳しく説明して・・・」


その声に、真央は顔を上げた。

彩乃を見て、イチゴを見る。

イチゴもうんうんと頷いている。


真央は、懺悔するように口を開いた。


「オレが手に入れたゲームは・・・1本しかないはずだったんだ・・・

たった1枚のFDDが世界を渡り歩き・・・少しずつ人を召喚していた・・・


それをオレは・・・いつでもどこでもプレイしたいがために・・・

インターネット上のサーバーにコピーしてしまった。」


「それが・・・なんなの・・・?」


彩乃の問いに、真央はゆっくりと顔を向ける。


「わからない・・・?


もし、FDDが・・・この召喚システムそのものだとしたら、

オレがコピーしたゲームは・・・召喚しないはずなんだ・・・


でも、ネットで動かしたゲームは・・・

オレたちを召喚した・・・」


二人に衝撃が走る。

彩乃は口を押さえ、イチゴは持っていたフォークをテーブルに落とした。


「そ・・・それって・・・」


真央は曲がった体をゆっくり起こし、二人に向けて指を二本立てた。


「考えられることは・・・二つ・・・」


一本の指を折り、眉をしかめながら続ける。


「一つは、オレのVPSがハッキングされた可能性。」


そして再び二本の指を立て、今度は真剣な顔で力強く言った。


「もう一つは・・・オレの机に残ったタブレットだ!」


「じゃあ、これからも〜来訪者が・・・?」


「来る! ――間違いなく来る!」


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