第2話 満月のだし巻き卵
夜の山里は、虫の声に包まれていた。
くこ庵の庭では、月明かりが白く石畳を照らし、川のせせらぎが静かに響いている。
くこは囲炉裏の火を見つめながら、ひとり湯呑みを手にしていた。
湯気の向こうに浮かぶ月は、まんまるで、まるで誰かの笑顔のようにやさしい。
「くこさまーっ!」
元気な声とともに、ふーちゃんが戸を開けて駆け込んでくる。
その手には、小さな紙包み。
「これね! 人里でおじさんにもらったの! “鶏の卵”だって!」
くこは目を細め、ゆっくりとそれを受け取った。
「まぁ……きれいな色ねぇ。まるで月そのもの。」
「ねぇ、くこさま、これでなに作るの?」
「そうね……今日は“だし巻き卵”にしましょうか。」
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狐のまかないレシピ②:満月のだし巻き卵
材料(2人分)
・卵……3個
・だし汁……50ml(昆布とかつおの合わせだし推奨)
・砂糖……小さじ1
・醤油……小さじ1/2
・みりん……小さじ1
・油……少々
作り方
1.ボウルに卵を割り、白身を切るように混ぜる。
2.だし汁、砂糖、醤油、みりんを加えてよく混ぜる。
3.卵焼き器を中火で熱し、油を薄くのばす。
4.卵液を少し流し入れ、半熟になったら手前に巻く。
5.残りの卵液を数回に分けて流し入れ、巻き重ねていく。
6.巻き上がったら形を整え、しばらく冷ましてから切る。
くこのひとこと:
「焦らず、慌てず。卵は“なでるように”動かすと、まるくまとまるんだよ。」
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「ふーちゃん、見てごらん。」
くこがまな板に置いた卵焼きは、ふっくらと黄金色に輝いていた。
切ると、じゅわっと出汁の香りが広がる。
「すごい! ふわふわだぁ……!」
ふーちゃんは尻尾をふりふりしながら、箸を伸ばした。
「いただきますっ!」
一口かじると、やわらかい甘みとだしの旨みが口いっぱいに広がる。
思わず頬を押さえて目を閉じるふーちゃん。
「くこさま……これ、幸せの味がするね。」
くこは笑って、ふーちゃんの頭を撫でた。
「そうね。きっと、月も同じ気持ちで笑ってるよ。」
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その夜、庵の外では、満月の光が山を照らしていた。
静かに流れる川面に、金色の月がゆらめいている。
そしてその隣には、ふーちゃんの寝顔――
ほんのりと口の端に、だし巻き卵のかけらをつけたまま。
くこは小さく息をつき、囲炉裏の火を見つめながら呟いた。
「……あの子の笑顔も、月みたいだね。」
庵の外で、またひとつ狐火が灯った。
その光は、まるで夜空に浮かぶ卵のように、温かく揺れていた。
第3話「雨の日のきつねうどん」
――雷鳴の中、庵を訪れた“濡れた猫の妖”。
湯気の向こうに、あの日の記憶がよみがえる。




