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白衣の灯台

作者: 霜月希侑



 医師には二つのタイプがあると聞いたことがある。一つは生まれつき容姿が整い、スポーツも得意で、誰もが惹かれる輝きを持つタイプ。もう一つは医師という肩書をまとい、その光で人を引きつけるタイプ。

 彼は後者だったが、そのことを忘れさせる不思議な魅力があった。外科医でありながら、体育会系の粗野さはなく、内科医のような穏やかで温かな空気を漂わせていた。ある当直の夜、不安に駆られ「医者を呼んでくれ」と取り乱す患者のもとへ駆けつけ、そっと手を握り、一時間以上も話を聞いていたことがあったという。その姿は、まるで夜の海に浮かぶ静かな灯台のようだった。


 私はそんな彼の姿に心を奪われていた。患者からの評判も高く、彼は病院中で愛される存在だった。そして、私自身も彼に救われたことがあった。些細な私の変化に気づき、体調を気遣う言葉をかけてくれる。

「看護師さんって本当にすごいよ。いつも大変な仕事を笑顔でこなしてるんだから」

 その優しい言葉は、折れそうだった心をそっと包み、温もりを与えてくれた。


 時が経つにつれ、私の心は彼への想いで満ちていった。ある雨の日の夕暮れ、飲み会の後、彼と二人きりになった瞬間に私は勇気を振り絞って気持ちを伝えた。まるで、私の中にある風に揺れる彼の白衣が、私の鼓動を映しているようだった。彼は静かに微笑み、

「君の笑顔に、僕もずっと救われてきたんだ」

と言った。その瞬間、雨音が遠のき、世界は私たち二人だけになった。



 やがて季節は巡り、私たちは互いの人生を共に歩むことを誓った。教会の小さなチャペルで、彼と結ばれた日のことは、今も胸に鮮やかに残っている。白いドレスに身を包み、彼の手を取ったとき、患者を癒すその温もりが、私の未来を優しく照らしてくれると確信した。

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