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第8章 言葉の海へ還るとき(文学人生の回帰)


白水修一が、現在の境遇から自己の人生を振り返ってみると、壮年期十年間の生き様が人生として最も充実した期間であったと思う。

おどおどとしたナイーブな弱い人間でしかなかった修一は、大きなトラブルを解決する機会ごとに知識と自信を身に付けて行った。

新しい対処法を機会のたびに会得した。解決のための技法の向上を果たしていたと思う。

このような技法に磨きが掛かり、さらに原因究明する姿勢と、弁明法にも自信が付いていった。

経験が増すとともに社交性が身に付いて、説得力が増し、みずからの言動に自信が湧いた時期である。

そして白水はこの部門長となると、六十名ほどの技術者、アシストたちを指揮・指導することになった。

その場面で行なうべきことは次の通りであったが、ここで役立った能力は、小説の登場人物から学び、記憶に残っている登場人物の気質、性格、能力、行動力に関する知恵と知識であった。


ここの十年間。人間とし職業人として、連続し同一環境での仕事が出来たことは、

コマ切れの継ぎ合わせ人生模様でなく、大きなひとつの布地を織りなしていく充実した生き方が出来たと思う。

大変な辛い仕事ながら幸いな期間だったと、修一は思うようになった。

これらの事柄の仕事が達成出来た土台こそが、各章に記述した様に大学での専攻の

理工科系の学問を研鑚することと並行して、文学と哲学という人文科系の学問を友人らとの協同作業でもって築き上げた能力だと思う。

そして学生YMCA活動による広い体験から身に付けた知見と洞察力の能力を使いながら、大学の講義とは別にみずから誠心誠意、時間を掛けて、毎晩、真夜中までの人文科系の学問に一年と半年、打ち込んだことにあると振り返る。

そして、それらの能力を現実の世界で応用できるレベルまで習得出来たことにあったと、遠い昔の行程の記憶から修一は甦らしている。

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