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第6章 聖書研究部と学生YMCA


修一は、このように太宰治が戦後に書いた晩年期の小説を読んでいる内に、微々たるレベルであるが頽廃的かつ堕落的な生活へ落ち込んで行った。

今振り返ると、太宰小説を読み堕落するという体験が、修一の人生を大きく変えて行く転機となった。

それまでの真面目一筋の生き様に悩みと疑問が生じたのである。

悩んで暮らしているときに、友人貝島が聖書研究部への入部を勧めた。

そして聖書研究部が或る都市の学生YMCAに所属して居たことが、みずからの人生の大きな躍進の契機となったと、修一は振り返る。

聖書研究部での諸々の活動を、同じく生きることに悩みを持った仲間と共有したことが今有る人生の契機であり、確かな礎を築けたと当時を振り返りながら修一は考えている。

太宰文学の恐ろしさと感謝の気持ちが詰まった太宰治の文学であった。


学生YMCAの読書会や合宿などを通じ、活動を共に行なっているうちに、読書家の友人らと文学を通し人生の悩みを語り合えるということは、修一にとり幸運であった。

一人で読書を通じて人生の諸問題を考えるよりも、多くの学生仲間と語り合うことに依る深みと言う良さが直ちに理解できた。

そしてこの様にして、神について、文学と人生について、語り合うことが出来るような環境が出来て、修一は文学の世界を学びながら、多様性に富んだ価値観を吟味、選択しながら生きることが叶った時代である。

その結果として、みずからの人格が飛躍的に豊かになった背景であると思っている。


この学生YMCAと言う組織は不思議な集団であったと修一は振り返る。

知り合ったばかりの者が読書会と合宿を通してであったが、神について、キリスト教について、人間について、そして自分の生き方について、牧師のレクチャーも受けながら数十人の男子と女子の学生が一同に介し、キリスト教を基盤にしながら個人的、かつ根源的なことをさらけ出し、討論し合うという学びの場であった。

特に宿泊施設が有る教会を利用した合宿時は、文学誌のテキストが決まって居り、皆で共通の本を読んで参加する仕組みであった。

それゆえに議論が深まる仕組みであり、徹夜して小部屋でこれらのテーマを議論しあった。

昭和40年(1965年)当時の学生は、この様に真面目な、オープンな、そしてよく読書する優秀な学生が多かった時代であった。

この雰囲気が変わったのは、70年安保に絡む大きな学園紛争であり、究極は連合赤軍に拠る72年頃に起きていた色な事件が発覚。

それが、ニュースとして広く学生に知れ渡ったことであると思う。

これ以降、学生たちの気質や流れを変えた大きな要因だと修一は思っている。


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