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第12章 自己の人格形成における文学と哲学の関係性


修一のここまでの人生の基本的な精神構造や人格と言う布地を織りなして来たもの。

縦の糸が哲学系からの学問で培った体系的知識と思考技術。即ち、方法論や価値観、認識論の習得。

横の糸が近代小説と随筆からの思想と知恵と具体的な生き方。そして映画鑑賞の総合芸術から得られた西洋的な知見と知識。

しかしながら生きて行く上での智恵と言えれば恰好良いのだが、哲学の習得には苦労の連続であった。

家庭的な事情で工業高校への進学を余儀なくされた修一。母を説得し、大学に進学した。

講義が始まると枯れた砂に慈雨が降るが如く、教養過程から知識の吸収の学習に邁進した。

懸命に学問に明け暮れた一年間だった。倫理学、心理学、社会学、論理学、哲学の人文教養科目の授業には特段に力が入った。

しかし太宰文学に触れて堕落を経験。それが契機で聖書研究部と学生YMCAに所属することに。そこの活動を機に文学の研鑚に弾みが付いた後半期の学生時代。


哲学という学問への個人での取り組みは、用語と文章が難解過ぎて実際困難を極めた。授業の内容と個人的に買った哲学に関する著作物は、小説類に比較すると数十分の一程度。

しかもこの書籍は読んだがよいと勧められて買い読んでみたが、難解過ぎることと自分の考えと合わないと感じて中断した本の数も多かった。

僅かな読書量と勉学から結果的に哲学系から得られたものは次の通り;

・サルトルの「実存主義哲学」のから実存の神髄と実存的に生きる方法とその実践法。

・ヘーゲルの「小論理学」からの、思考力と読解力、そして概念化能力。

・パスカルの「人間は考える葦」であるからの人間性の断片的な智恵と知識。

そして思考力。

・ボーヴォワールの「第二の性」からの女性のジエンダーの課題。

・アドルフ・ヒットラーの「我が闘争」からの多面的な人間性と組織の作り方。

・ニイチエの「ツアストラはかく語りき」は完読をはたせずに。

・武谷光男の「弁証法の諸問題」からの武谷三段階論法という問題の本質を解明解決する思考技術。

・丸山眞男の「日本の思想」からは、日本人の集団主義の良さと悪さについて学んだ。


上記の通りの作家と学者。その中の一部の小説から受けた総体的な印象。

人間としての根源的な知識の要素、すなわち存在観、認識論、価値観の重要性、および知識に関する体系や整理法を教えてくれたものである。


修一にとっては、哲学系の書籍に比較すると、読んで来た近代小説の書籍は大変に多い。小説や随筆から得られた知識や影響や恩恵は各章に述べている通り。

ただ無数に有る世界中の作家が書いた小説から自分が読んだ本は、ごく僅か百冊から二百冊台である。

このように読書した中から芸術性を感じたり、生きることへの影響を受けたり、印象に残っている代物は少数に限定される。

これら選択した書籍は、自分の強い意思で選んできた積もりであった。しかし選択した要素は、生まれ持っている遺伝子や、身のまわりの境遇からの影響を大きく受けていると考えるようになった。


「記憶は過去のものではない。それは、すでに過ぎ去ったもののことではなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。とどまるのが記憶であり、自分のうちに確かに留まった、自分の現在の土壌となってきたものは記憶だ。」

詩人;長田弘(記憶のつくり方)からの一節。

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