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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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貴女は亡き王妃様と瓜二つ ※第一王女→第三者視点

 今日は日曜日。

 今のぼくは、おじさんの家にいる。

 午後4時から剣術部の打ち上げがあるけれど、その前に、お昼過ぎから一人で自主稽古をしようと決めていた。


(ぼくの身体じゃ力がなくて、王子様たちには敵わなかった……。魔法は好きだけど、得意なのは()使()()ならではの回復魔法。人間だと偽っている今は使いづらいし、そもそも攻撃には向いていない……。でも、剣術なら――! 剣術だけは、絶対に裏切らない!)


「ごめん、おじさん! 今から学校に行くね。ごはん、すっごくおいしかったよ! また食べに帰ってくるから!」


 そう言って、バスで出かけようとしたそのとき、おじさんに声を掛けられる。


「待って、サラちゃん! せっかくだし、車で送ってあげるよ!」



 ――そんなわけで、今のぼくは車の助手席に座っている。

 おじさんが運転席でハンドルを握りながら、ザダ校の正門へ向かって走ってくれているところだ。


「おじさん……ありがとう」

「いいんだよ。珍しいね。今日は何かイベントがあるの?」

「うん、剣術部で稽古して、そのあと打ち上げがあるんだー!」

「楽しそうだね?」

「楽しいよ! 面白い双子がいるし、あと……」


 あぁ……思い出してしまった。

 この前、ウェディングドレスを着たとき、ダン先輩に、あのベールを外されそうになったことを。


(そうだ……。今日の打ち上げ、ダン先輩も来るんだ。なんだか、ちょっと怖い……)


「……サラちゃん、大丈夫?」


 おじさんが、ちらっとこちらを見ながら、心配していた。


「あっ……!」


(ダメだ、こんな顔してたら、また心配かけちゃう……!)


「ごめん、おじさん。えっとね、剣術部にすごく強い先輩がいて、まだ一度も勝てたことがないんだ。でも、好きなことだから、コツコツ頑張れば、きっと勝てると思うんだ。だから、稽古、頑張ってくる!」


 前向きな言葉を口にしながら、自分自身を鼓舞する。

 けれど――おじさんは、尚更、心配そうな表情をしていた。


「サラちゃん、無理してない? 剣術が好きで続けてるなら、それでいいんだ。でももし、“頑張らなきゃ”って思い詰めているようだったら、少し肩の力を抜いてもいいんだよ。どんなサラちゃんでも、僕はずっと応援してるから」

「おじさん……。うん、ぼくは剣術が大好きだから、大丈夫。きっと……」


 おじさんの優しい言葉に、胸が軽くなる。

 それなのに――なぜだろう。

 おじさんはぎゅっと、ハンドルを握りしめていた。


「やっぱり、サラちゃんはレンゲに似てるね」

「……え?」

「ごめん、変なこと言って。でも……サラちゃん、お母さんにそっくりだよ。まっすぐで、頑張り過ぎちゃうところ」


(お母さんと、似てる……?)


 そういえば――あのとき、花嫁姿になったぼくを見たキーちゃんも、「王妃様の娘だ」と言ってくれた。

 最近、ぼくのお母さんのことを知っている人たちは、みんな、口をそろえて「似てる」と言うようになった。ぼく自身は、どんなお母さんだったのか、日記と写真でしか知らない。


(だけど、お母さんがぼくを産んでくれて、おじさんとオーちゃんが育ててくれたおかげで、こんなに楽しい人生を送れている。ぼくは幸せ者だ……)


 そう思いながら窓外の景色を眺めていると、ちょうど雲の切れ間から陽射しが差し込み、その光の中から目的地が見え、無事に辿り着いた。


「着いたよ。気をつけて、行っておいで〜」


 おじさんは穏やかに話しながら、助手席のロックを外してくれた。


「うん、ありがとう! おじさん、またねー!」


 ぼくは勢いよくドアを開けて、笑顔で手を振った。


「おじさん、行ってきまーす!」

「サラちゃん、行ってらっしゃい」


 おじさんも窓を開けて、ぼくと同じように、にっこりと手を振ってくれた。

 その親切心で、胸がいっぱいになる。

 

(ぼくは、おじさんの家で育ってきて、本当に良かった!)


 でも、気づいていなかった。

 そんなぼくたちのやりとりを、じっと見つめていた“誰か”の存在に……。

 


 

 ――校舎のレンガ塀の角に、ひとりの青年が立っていた。


 ザダ校の正門近くで、1台の車が止まった。日曜の学校にしては……珍しい光景。

 不審者の可能性も考慮して、距離を置きながら様子をうかがう。


 運転席の窓から顔を出したのは、穏やかで人がよさそうな中年の男性。

 教師という感じではない。車からは降りず、誰かに手を振っていた。


 その視線の先――校舎へ向かう一般科の男子生徒。

 剣術袋を背負い、ウサギのぬいぐるみのキーホルダーを揺らしながら、同じように手を振り返していた。


「おじさん、行ってきまーす!」


 ――()()()()


(ん……? “お父さん”ではないのか?)


「サラちゃん、行ってらっしゃい」


 その中年男性は、彼のことを「サラ()()()」と呼んでいた。

 親戚なのかもしれない。けれど、彼と全く似ていない……。

 それに、“ちゃん付け”で呼ぶのは、どこか不自然に思えてしまった。


 そういえば、彼の生い立ちを詳しく知っている生徒は少ない。

 剣術部だけでなく、一般科でも話題に上ることはほとんどない。


 いつも優しくて、天真爛漫な後輩。

 でも……あの笑顔の裏に、誰にも言えない事情があるのかもしれない。


(何かを隠しているのか、()()……)


 青年は珍しくため息をつき、視線を落とした。

 だが、その直後――スマートフォンの着信音が静寂を破り、その青年の意識を現実へと引き戻した。

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