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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第1章:お母さん、ぼくたちを信じて
5/100

大人の心配事 ※オーちゃん視点

【※注意】主人公ではなく、オウレン先生視点です。

 私と血は繋がってないけど、大切に育ててきた子がいる。

 その子を男の子として育ててきたけど、彼いや彼女の本当の正体は……第一王女様。


 兄さんが出かけた後、第一王女様ことサラちゃんは、私と二人っきりになったタイミングで私に「相談したいことがあるんだ……」と深刻そうな顔をしながら、声をかけてくれた。


 私は「サラちゃん、どうしたの?」と彼女が気軽に話しかけられるよう、リラックスできる環境を整えたいと思い、ホットココアを用意する。彼女は「ありがとう」とすぐ私にお礼を言った。


(なんて素直で、かわいらしい子だろう)


 彼女と一緒に一口飲んでから、話し始めるのをゆっくり待つ。


「あのね……実は……その……」


 なんだか本人にとって、とても言いにくいことだと察した。この雰囲気は、サラちゃんが初経した時にアダムくんから「相談した方がいい」と言われた時と同じ空気感だと思ったものの、心配でつい私から切り出すことにした。


「もしかして……アダムくんに、王族ってバレた? それとも天使族だと言われたの?」


 サラちゃんはすぐ否定した。

 

「違うよ! その……胸を隠した方がいいって言われた……ぼくの胸が膨らんでいるから。オーちゃん、ぼくはどうすればいいんだろう?」


 『なるほど……そういうことだったのね』とすぐ思う。やはり本人にとっては、恥ずかしいという認識があるみたいで、顔がリンゴのように真っ赤になっている。でも、これから学校に進学することを考えると解決しないといけない問題である。私は考えついた答えを彼女に提示する。


「そうね……。心配しないで。例えば……私の職業柄、包帯がいっぱいあるから、これで胸を巻く感じになるかしら……?」

「やっぱり、それが一番いいよね。アダムさんもそう言ってたんだ……そうするよ。その、包帯ってもらっていいの?」


 私の回答を聞いて、確認している。


「もちろん。それに……巻き方なら、私が教えるわ! さあ、一緒にやってみましょう」


 早速実践することにした。

 大丈夫だろうけど、誰かに見られて彼女の正体がバレるわけにはいかないから、念のため鍵をかける。


 サラちゃんは視線を泳がせながら、少し頬を赤らめてもじもじとしていた。


「どうしたの?」

「変じゃないか心配で……」

「大丈夫。私は仕事で、多くの患者さんを診てきたから、怖がらないで?」

「わかった……脱ぐね……」


 私に背中を向けて服を脱ぐ。やはり照れがあるのか脱いだ服で胸を隠していた。

 彼女の背中は細くて、くびれもあり、肌が透き通っていて綺麗だった。天使族のお姫様――まさに彼女に相応しい表現だ。


「サラちゃん、ちょっとごめんね」


 そう言って、彼女の胸にサラシを巻いてみる。

 ふと彼女の胸に視線が入ってしまう。


(あら……! 私より胸が大きい?!)


 彼女の身体は、この数ヶ月で驚くほど成長していた。これまではボーイッシュな服装で、身体付きが隠せるようなデザインを着させて、男の子として育ててきたものの……我が家ではあまり男だから女だからと、性別で何かを決めることはしない方針だった。そのこともあり、兄さんだけでなく、私も「サラちゃん」と呼んでいた。

 

 本当はウサギとか可愛いものが大好きで、最初は剣術も行きたくないと号泣する泣き虫さんだったけど、一生懸命通い続けて今は剣術検定1級保持者という天才になってしまった。王女様として育っていたら、剣術なんてやることなく、素敵なドレスを着て、優雅な生活を送れていたと思う。彼女にそういう選択肢をさせなかった……いや、遺言でそうせざるを得なかった……。この子の運命を変えてしまったことに深く後悔してしまう。


 ぼんやり考えているうちに、上手く巻き終えることができた。

 

「オーちゃん、いいかも! なんかサムライみたいでカッコいい!」

 

 サラちゃんは本当にカッコいいと思っているのか、嬉しそうにしていた。

 しかし、私の顔が優れていないと察したようで「どうしたの? オーちゃん……元気ない?」とむしろ心配かけさせてしまった。


「大丈夫よ……。なんかいろいろ肩身狭い想いをさせてごめんね……」

「えっ?! 大丈夫だよ。その、ぼくは今の生活がとても楽しくて、好きなんだ! ずっとこんな感じで、日常を過ごして行きたい! 両親がいないぼくのことを支えてくれたおじさんとオーちゃんには感謝しきれないよ……。本当にありがとう」


 私の心配事に気づくだけでなく、むしろ感謝してくれるなんて……。彼女は人間ではなく、天使族の子だけど、人として性格が出来上がっている。一生ついて行きたいと思った私はある決心をする。


「サラちゃん、私も決めてることがあるわ。あなたがザダ校に受かったら、同じ学校に行くわ――学校医として」

「えっ。そんな、ぼくのために……? そんな無理しちゃダメだよ?」

「違うの……臨床のお仕事は、楽しいよ。でもね、ずっと続けてきた症例発表も終わりが近づいてきて、やり切ったと思ってる……。そうね、私ちょっと燃え尽き症候群になってたの。だから、気にしないで」

「そうだったんだ……おじさんも『組織で働くのは大変だけど、オウレンは頑張って偉い!』って言ってたよ。いつも頑張ってるから、ぼくはオーちゃんが進む道を一緒に応援するよ! ぼくもザダ校の受験勉強、頑張る!」

「えぇ。一緒に頑張りましょう。私はあなたの味方よ。私もあなたのこと、ずっと応援してるわ」


 私は彼女がニコニコしている様子を見て、一緒に微笑む。すると、ふと彼女が本音を言う。


「オーちゃん。その……もしぼくが誰かから正体がバレて、王宮に連れて行かれて、今後王女になったとしても……ぼくのこと、応援してくれる?」


 彼女自身、やはり王族のアザがあるから、バレない保証はないと思っているようだ。


 確かに先ほどサラシを巻いたとき、王族特有のアザが左胸にあったのを見た。それを隠すためにも、サラシはとても良いアイテムだと再度実感する――彼女が将来どうなっても私の決意はただ一つ。


「もちろん。あなたが、どんな人生を歩むことになっても――私は一生支えていくわ」


 私は男の人が苦手だから、将来結婚したいとは思っていない。

 彼女と、兄さんが幸せになってくれたら、それが一番いいと思いながら、彼女と一緒にホットココアをおかわりした。

<余談>

この頃のオウレン先生は病院で勤務していました。

(呼び出しが多くて、大変だったみたい...)


<もっと余談>

※先生のバストサイズはファンタジア・サイエンス・イノベーション:第一部の最終回で判明しております。

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