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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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今日はクラス全員、健康診断?

 今日は健康診断日。

 ぼくは特待生枠でお昼休み中に、健康診断を受けることになっていた。

 1枠かつ保健室でオーちゃんが付きっきりで診察してくれるため、女性だとバレる心配は皆無である。


(本当に特待生で良かったぁ……)


 ちなみにぼくの所属する1-A組の場合、午前中は男子、午後は女子と決まっていた。

 なので、同じクラスのアダムさんやニコくんは午前中に受け終わったようだ。

 アダムさんは戻ってきた後、口元がニヤリとしていた。どうやら検査結果で嬉しいことがあったのかもしれない。ぼくは軽く聞いてみることにした。


「アダムさん、嬉しそうだね! 無事終わった?」

「あぁ。健康診断の参加で王位戦のエントリー条件をまた1つ達成できたからな……」


 思い出した!

 アダムさんは今回の健康診断を通して、王位戦というイベントに参加する際、必要な提出書類を発行できるようになったんだ。

 

「そっか! それは良かった」

「後な……能力装置機(のうりょくそうちき)を用いて、どのくらい魔法を使えるのか能力値を測ってもらったんだけど、最大(マックス)値の100だったんだ」


(能力装置機? 初めて聞いた……)


 ぼくはイマイチ、どんなものなのか理解できずにいた。それを察したのか、アダムさんが丁寧に説明を補ってくれた。


「つまり、人間として魔法の才能があるかどうかを判定できる装置のことさ。まさか俺自身、そんな才能を持っているなんて、思ってもいなかったからさ……」


 その発言から、アダムさんは自身の才能が判明して、純粋に嬉しかったんだと思う――。ぼくも彼と嬉しい気持ちを共有したくなり、率直な思いを口にする。


「すごい! アダムさんは研究だけじゃなく、魔法もできちゃうなんて! いつも助けてくれてありがとう!」

「こちらこそ、サラ。君が剣術部で頑張っている姿を見るのは励みになるよ。それと――お昼休みの健康診断、忘れずにな」

「うん! 頑張るね!」


 アダムさんと温かい言葉を交わした後、昼休みになったため、ぼくは保健室へ向かった。ドアを開けると、オーちゃんがすでに椅子に座って待ってくれていた。


「オーちゃん! お昼休み中にごめんね」

「サラちゃん、大丈夫よ。健康診断はすぐ終わるから、終わったら残りのお昼休みは一緒にこのサンドイッチを食べましょう?」

「本当? じゃあ、健康診断頑張るね!」

「えぇ。その間、誰にも邪魔されないように鍵を閉めて、結界も張っておくわね」


 そう言いながら、オーちゃんは手際よく鍵をかけ、魔法で保健室全体に淡い光を放つ結界を張った。保健室の窓から射し込む陽光が、結界の光に反射して少し幻想的な雰囲気を作り出している。


「じゃあ、始めるわね。まずは身長から……165cm! 大きくなったわね、サラちゃん。でも……痩せすぎよ。ちゃんと食べてるの?」

「うぅ……食べてるよ?」


 そう答えたものの、運動量が多い剣術部では、食べても太りにくいのだと自分に言い訳する。オーちゃんは心配そうに眉をひそめながらも、優しく微笑みかけてくれた。


 検査は次々と進んでいく。

 オーちゃんの手際の良さと温かい言葉に、緊張していたぼくの気持ちも少しずつほぐれていく。


「血液検査は……天使族って結果が出るだろうけど、私の方で人間として処理しておくから安心してね」

「手間取らせてごめんね……」

「いいのよ! 次は心電図の検査だから……申し訳ないけど、サラシを外してもらえる?」

「うん……」


 お風呂に入る時以外で、人前でサラシを外すなんて……10歳の頃、オーちゃんから巻き方を教わった時以来だ。しかも、あの時よりも胸は大きくなっていて、なんだか恥ずかしい。


(今はサラシを巻いてもまだ余裕があるけど、これ以上大きくなったら苦しくなりそう……)


 そう思いながらも、そんな個人的な相談をオーちゃんにするのは少し気が引けた。


「オーちゃん、外したよ……。お願いします……」


 恥ずかしくて、胸は脱いだワイシャツでつい隠してしまう。


「早く終わらせるから、少しだけ我慢してね」


 そう言って、オーちゃんは素早く装置を取り付けてくれた。


「ちなみに……そのアザを使えば、サラちゃん自身の魔力を測定できるけど、試してみる?」

「え、測ってみたい! アダムさんが最大値だったって言ってたよ?」

「そうね。ただ、能力装置機は人間用だから、私たちエルフや天使族が測ると、数値が100を超えて壊れてしまうの。だから、アダムくんに何か聞かれたら、『100』って答えておけば問題ないわよ」

「そっか……! でも、どうやって測るの?」

「私たちはね、『魔力検知検査』っていう別の方法を使うの。これなら、魔力の強さを正確に測れるのよ」


 初めて聞く話に、ぼくは思わず目を丸くした。


「能力装置機で100以上ってことは……ぼくたち、やっぱり人間よりずっと魔力が強いんだね?」

「その通りよ。じゃあ、早速測ってみましょうか。アザの部分が少しひんやりするかもしれないけど、大丈夫?」


 そう言うと、オーちゃんはぼくの左胸のアザに金属製の検査キットを静かに貼り付けた。続けて、ぼくが寒くならないように、その上から優しく毛布を掛けてくれた。


 ぼくは普段からあまり魔法を披露しないタイプだ。実を言うと、声に出さなくても魔法を発動できるけど、人間として生活する以上、それを隠すために授業や人前では、小声で魔法を唱えるふりをしていた。そんなこともあって、自分の魔力が実際どのくらいあるのか、数値として確認したことは一度もなかった。


(ど、どうなるんだろう……!)


 心臓がドキドキと高鳴る中、オーちゃんが測定結果を見て、驚いていた。


「まぁ……! サラちゃん、あなた……ニコくんよりすごいのね!」

「えっ、本当?」

「えぇ。魔力は0から100の5刻みで表示されるんだけど、女性の場合、多くても40くらいが普通なの。それが、あなたは75もあるわ! 男性並みの数値よ」

「えっ、それってつまり……強くなれるの?!」


 ぼくは思わず目を輝かせてしまった。


「そうね……女性でこれほど高い数値は、ほとんど前例がないから断言はできないけど。男性の場合、75くらいの魔力量は、上位の王子様しかいないレベルよ。もしかすると、彼らも貴女(あなた)と同様に『獣魔』を所持しているかもしれないわね」

「ルル以外にも、獣魔がいるの?」

「えぇ。魔力量が50を超える場合、獣魔を持っていることが多いみたい。でも、この分野は詳しくないから……あとで調べてみるわ」

「ぼくも調べてみる! ……ハックション!」


 勢いよく声を上げた拍子に、大きなくしゃみが出てしまった。

 話が盛り上がりすぎて、体が冷えていたことにようやく気付いた。


「ごめん、オーちゃん! とりあえずサラシ巻くね!」

「こちらこそごめんなさい。検査は終わったから、一緒にご飯を食べましょう。結界も昼休みが終わるまでこのまま張っておくね」


 ぼくは急いでサラシを巻き直した。その間にオーちゃんが、ぼくの分のホットココアも用意してくれていた。

 

「オーちゃんありがとう!」

「どういたしまして。あら、ぬいぐるみのルルちゃんも一緒だったのね」


 オーちゃんはぼくがズボンのポケットに、キーホルダーになったルルを入れているのを見つけて、優しく気遣ってくれた。


「せっかくだから、ルルちゃんもサンドイッチ食べない?」


 すると、ポンっと音を立てて、ルルが獣魔の姿に戻った。そして、「ぜひ! 食べるわ!」と目をキラキラさせながら嬉しそうに答えている。「いただきます!」とぼくも声をかけ、3人で和やかに食事を始めた。


「ツナと卵のサンドイッチでとても美味しい! どこのお店にあったの?」

「実は……理事長先生がいっぱい作ったみたいで、持ってきてくれたの」

「理事長先生といえば、水曜日のカレーで有名な!」

「そうよ。確かに、美味しいよね」


 オーちゃんが少し照れている。ぼくは心の中で察した――もしかしたら、理事長先生はオーちゃんのことを想っているのかもしれない。でも、そのことにはあえて触れず、オーちゃんと穏やかに話を続けた。家族のように近しい存在だからこそ、オーちゃんと一緒にいると、不思議と心が落ち着いて、ありのままの自分でいられる気がした。リラックスしたひとときが心地よかった。


 だけど、楽しい時間もそろそろおしまい。寂しさを感じつつ、ぼくはお昼休みが終わる前に教室へ戻ることにした。


「えへへ! オーちゃん、ごちそうさま。また、いつでも誘ってね」

「もちろん!」

「午後も頑張ろうね!」

「あら? サラちゃんもね」


 そう掛け声を合わせながら、ぼくは教室へ戻った。

 そして、ぼくが席に着くと、タイミングを見計らうように担任の先生がアンズちゃんとケイちゃんを保健室へ案内した。

 先生はすぐ教室に戻り、その後は男子生徒だけで1コマ授業を受けることになった。


 健康診断は30分前後で終わるはずだから、授業終了のチャイムが鳴る前に、二人は戻ってくるだろうと思っていた。


 だけど――おかしい。二人が戻ってくる気配が全くしない。

 窓側の席にいるぼくは、外を何度も確認したけれど、二人の姿はどこにも見当たらない。


(どうして……?)


 胸の奥がざわついて、どうにも落ち着かない。

 嫌な予感が、冷たい風となって脳裏をかすめる。


(ダン先輩が言ってた……『悪魔族には気をつけるんだよ』って。まさか――!)


 その胸騒ぎは、無惨なほど正確に的中した。

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