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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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「第一王女様」と呼ばれてしまった夜【※】

【※注意】第2王子によるスキンシップ表現あり(R-15:背後注意!)

 打ち上げが始まった。

 

「カンパイ――!」

「乾杯ッ!」


 おじさんたちがビールを勢いよく飲み干すと、会場は早くも宴会の熱気に包まれた。


「ダンくんはさ、本当に初心者なんだよね?」

「はい。わたしが本格的に始めたのは――」


 今日のヒーローであるダン先輩は、おじさんたちに囲まれて、質問攻めに遭っていた。

 一方で、ぼくはクロくんと一緒に、会場の端っこの席でオレンジジュースを飲んでいた。


「サラちゃん、オウレン先生とキハダ理事長は?」

「二人でお出かけしたみたいだよ」

「残念だなぁ……」

 

 元々、オーちゃんはこの打ち上げ会に参加しない予定だった。

 男性が多い環境は苦手だと言っていたから。


「んじゃ、俺とシロ、サラちゃんの三人で話すかぁ〜」

「そうしよ! お疲れ様〜!」


 クロくんの隣に、シロくんが腰を下ろした。

 お風呂上がりなのか、シロくんは首にタオルを掛けていた。


「シロくん、お疲れ様!」

「あれ、サラちゃんは温泉に入らなかったの?」

「ぼくは裏方がメインだったし、そんなに汗もかいていないから……。後でお部屋で入るよ」


 周りを見回すと、ぼく以外は全員浴衣姿だった。

 

 本当は温泉につかりたかったけれど、浴衣姿になるのはまずいと思って、ぼくは頑なに制服姿でいた。

 

(浴衣って……生地が薄いし、体のラインが出やすいから。絶対に性別がバレてしまう)

 

 でも、いいんだ。

 おじさんが気を利かせて、ぼくのために半露天風呂付きの個室をおさえてくれた。


(この打ち上げが終わったら、一人の時間を堪能しよう!)

 

 オーちゃんには「打ち上げが終わった後、男の人と二人っきりになったらダメよ!」と口を酸っぱくして忠告されたから、ちゃんと言うことを聞いて守り通すと心に決めていた。


 そのまま、ぼくはクロくんと、シロくんの恋愛話を聞いていた。

 シロくん曰く、カフェデートをした後、初めて彼女と手を繋いでドキドキしたらしい。


「とても素敵なデートだね……!」


 微笑ましい話に一人でキュンキュンしていると、次は双子がニヤニヤしながら身を乗り出してきた。


「サラちゃんに聞きたいことがある!」

「医務室で部長と何かあった?」

「へっ!?」


 ダン先輩の名前が出た途端、ぼくは顔が真っ赤になってしまった。

 

 忘れられない。医務室で、おへその覗き見(あんなこと)をされたから……!


「いやー、サラちゃん可愛いもんなぁ〜」

「ニコくんもサラちゃんに心を開いてるし! サラちゃんは王子様マスターだね?」

「そ、ソンナコトナイヨー!」


 双子が笑い合う中、ぼくは目をバッテンにして、わたわたと必死に否定した。

 そのあとは三人でたわいない話をしていたものの、双子は眠たくなってしまったようだ。


「ふわぁ……」

「眠たいけど、あっちはまだまだ飲んでるもんな……」

「シロくん、クロくん! 大丈夫だよ、みんなで部屋に戻ろう!」


 ぼくの方から提案してみた。

 なぜなら、そろそろ個室に戻って、一人で露天風呂を堪能したいと思ったからだ。


 ぼくはおじさんグループに声をかけた。


「おじさん、みなさん、おやすみなさい!」

「イェイ――! サラちゃん! ツインズ!」

「おやすみ〜! フォ――!」


 おじさんたちはお酒を飲み過ぎていたようで、明らかにテンションが高かった。


 けれど、ぼくと双子は深入りせずに、すんなり打ち上げ会場を後にした。


「俺とクロはこっちの棟だ」

「ぼくと違う棟だね、じゃあ!」

「じゃあな、サラちゃん〜!」

「うん! また明日ね!」


 双子とも別れて、ぼくは大急ぎで()()()個室へ向かっていた。


(やったー! この後、ゆっくり浸かって、ルルと一緒におしゃべりしながら、楽しく過ごすんだ! おじさん、ありがとう!)


 ぼくは舞い上がっていた。

 道中、無人売店でミルクチョコレートを買った。

 

 ぼくとルル、ふたりで分け合おうと思って。


 だけど、買った直後。

 ぼくの背後から、低く、どこか切羽詰まった聞き覚えのある声が響いた。


「サラ! それを食べたらダメだ!」

「ダン先輩?!」

 

 振り向いた時には、もう遅かった。


 抗う間もなく、ぼくの体は米俵のように、ダン先輩の頑丈で硬い肩に軽々と担ぎ上げられていた。


「ダン先輩、メッ! おろしてください! ぼくは部屋に――」


 バタバタと足を動かして叫ぶ。

 

 それでも、状況が悪すぎた。廊下には誰もいないし、ダン先輩は聞く耳を持たない。


 そして、あろうことか――ぼくはダン先輩の部屋の前に着いてしまった。

 

 さすがに、ぼくを抱えたままでは鍵を開けられなかったようで、ようやく下ろしてくれた。


(決めた! ここで「おやすみなさい」と言って、別れよう!)


「ダン先輩、おやすみな――」


 ガチャン!


 鍵を開けた直後、ダン先輩はぼくを逃がすまいと、その逞しい手で、ぼくの右腕を強く握りしめた。


「いたっ……!」

「すまない、怖がらせた。だが、話を聞いてくれないか。打ち上げの時、このチョコレートを差し入れでいただいたんだ。これを食べてから、わたしの体が熱いんだ……」


 もう片方の手で見せてくれたのは、しわくちゃになった銀紙。

 そこには――【チョコレート()()】と記されていた。


「これって……!」


 ぼくはすぐに理解した。

 ダン先輩は、お酒入りのチョコレートを食べてしまったんだ。

 

 普段はあんなに高潔な先輩が、今はラム酒の熱に浮かされ、トロンと潤んだ瞳で、ぼくを見つめていた。


 こうなってしまったら、まずは部屋で寝てもらうのが一番だ!


「ダン先輩、中に入ってください! こういう時は――きゃぁ!」


 とろけた顔でダン先輩がぼくに迫り、そのまま部屋の中に引きずり込まれてしまった。


(オーちゃん、ごめんなさいいいい!)


 心の中で叫びつつも、ぼくは覚悟した。

 

 早く横にさせて、ここから脱出しないと!


「ダン先輩、とりあえず横になって休んでください!」


 機転を利かせて、なんとかダン先輩を布団の上へ誘導して横にさせた。


 すると、ダン先輩はすぐに寝息をついた。


(良かった……。あっ、喉が渇くかもしれない)


 脱水にならないよう、冷蔵庫から水の入ったボトルを取り出して、布団の隣に置いた。


「ここにお水を置いておきます。それでは、おやすみなさい」


 できることは全てやった。

 

 一刻も早くこの部屋から抜け出そうとしていた、その時。


「行かないでくれ……っ!」

 

 昼間の医務室よりも、ずっと強引で、大きな右手が、ぼくの手首を捕らえた。


 抵抗する間もなく、引き寄せられるままに、ぼくの体はダン先輩の広い胸板の上へ倒れ込む。


 柔らかな布団のパサリとした音。

 

 それだけなら良かったのに。


 ダン先輩が、ぼくの首筋に顔を寄せた。

 鼻先をかすめるラム酒の甘い匂いと、熱い吐息が、かすかに触れた。


「ぁっ……!」


 らしくない、裏返った高い声が出てしまった。


 ぼくの声を聞いて、ダン先輩は一瞬だけ目を見開いた。

 けれど、その瞳はすぐに、底知れない熱情を孕んで、再びトロンと潤んでいく。


「お花の良い香りに、砂糖菓子のように可愛らしい声。あぁ、お会いしたかった……第一王女様」


 薔薇の棘が心臓を貫いたように、脈動が鋭く、速く跳ね上がる。


(ぼくのことを「第一王女様」って……?)

 

 ぼくは今、男装してここにいるのに。

 

 尊敬しているダン先輩――いや、鬼族の第2王子に、呼ばれてしまった。


 第一王女――決して知られてはいけない、ぼくの本当の正体。


「ち、違う……! 違うから、離してっ……!」


 慌てて否定し、持てる限りの力を振り絞って逃げ出そうとしたけれど、岩のような巨体はびくともしない。


 むしろ、もがいたせいでダン先輩の浴衣の胸元がはだけ、熱を帯びた逞しい胸板が、ぼくの体に容赦なく密着していた。

 

「あぁっ……! だめ……っ!」

「行かないでください、王女様……。今のあなたは、わたしの腕の中にいる。わたしは、あなたを見つけ出すために、ずっと、ずっと頑張ってきたんだ……」


 うわ言のように囁きながら、ダン先輩はぼくのお腹――昼間に執着していた、おへそのあたりに、熱い手を這わせた。


「証明させてください。あなたが……わたしの運命の相手であることを……」


 ぷつり、と。

 愛に飢えた優しき王子様の理性を縛っていたタガが、完全に外れる音が聞こえた。

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― 新着の感想 ―
 きゃーーーーーーーー!!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆  ダン先輩、ダメーーーー!!  見てられない!!ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘  と、読んだ後逃げだしま…
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