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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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王子様たちの目標達成

アダムさん:第10王子とニコくん:第6王子回です。

 ぼくは一仕事をした! なぜなら、二人の王子様の叶えたい目標を同日に達成することができたから。

 二人だけでなく、本当のことは彼らに言えないけど……ぼくにとっても、特別な日になった。

 そんなぼくの思い出深い一日を振り返りたいと思う。

 

 

 ここは1-A組の教室。

 先日、ニコくんとバイクの件で約束をしていたこともあり、お昼休みになり、ぼくの隣に座っているアダムさんへ「ぼくのお友達でバイクを買いたい子がいるんだ! 放課後、一緒にバイク屋へ行かない?」とすぐ誘ってみた。

 この学校では、ぼくと学校医のオーちゃん以外は知らない――アダムさんが『異世界転生者』だと言うことを。彼はこの世界に住む前、生きていた世界でよくバイクに乗っていたようで……「バイク」の単語を聴いただけでも、体全体をぼくの方に向けてくれた。


(この感じ、一緒に来てくれそう!)


 その読みは当たっていて、見に行ってくれるみたいだけど、「16歳にならないと乗れないからその友達は先輩なのか?」と聞かれた。なので、ぼくは前の席に座っているニコくんの背中をトントンと両手でタッチした。

 すると、ニコくんは耳にイヤホンをしていたけど……外してぼくの方を向いてくれた。


「ん? どうしたんだ、サラ?」


 そう言いながら、彼はぼくの机に肘をついて、ぼんやりとしていた。そのため、ぼくから二人が会話できるように説明を始めた。


「ニコくん、バイク見に行きたいんでしょう? アダムさんは詳しいんだよ。聞いたら、一緒について来てくれるって。お互いお話ししたことないでしょ? ご挨拶(あいさつ)して〜」


 するとニコくんの方から、挨拶してくれた。


「オレはニコ。よろしく」

「俺はアダム。よろしく、ニコ」


(そうだ! 二人ともあまり(しゃべ)るタイプじゃないから、簡単な自己紹介で終わっちゃった……)


『どうしよう、ぼくから何か話した方がいいかな?』と思っていたところ、ニコくんの方から話題を切り出してくれた。


「そうだ、アダム。今日は貴重な時間をもらってすまないが、よろしく……」と言って、ニコくんはすぐイヤホンを付けようとしていた。けれど、ぼくはこの機会を逃してはいけないと思い、アダムさんの叶えたい部員集めの話を共有することにした。


「アダムさんって、作ろうとしてる実験部の部員……全員(そろ)ったの?」


「ソロッテナイヨー」とアダムさんは片言かつ真顔で回答している。それはまずい状況だと思い、「ニコくんが幽霊部員で入れる部活を探してるんだって」と急いで伝える。ぼくの言葉を聞いた直後、アダムさんも慌てて、入部届の紙をニコくんへ差し出していた。


「ニコ! 今日、俺がちゃんとバイクのアドバイスをする。だから、幽霊部員でもいい……部活に入ってくれないか?」


「いいよ……その部活にサラもいるのか?」とニコくんはぼくの方を見ていた。


「ぼくも入るよ! 兼部(かけもち)だけど」


(お願い! ニコくんが入ってくれたら、5人揃う。アダムさんは実験部を創設することができるし、王位戦(おういせん)にエントリーもできるんだ)


 ぼくはついニコくんの目をじっくり見つめてしまっていたかもしれない。すると、彼はふーっと息を吐き、覚悟を決めたように答えた。


「わかった、書くさ。人数が必要なんだろ?」と言って、ニコくんは名前を記入し、入部届をアダムさんに手渡ししていた。嬉しすぎて、ぼくは思わず「やったー!」と叫んでしまった。


 アダムさんは実験部の最低人数である5人を集めることができたから、その足で職員室に入部届を提出したようだ。こうして、まずアダムさんの目標である部員集めは達成できた!



 そして、その日の放課後。

 

 3人でバスに乗り、近くの街にあるバイク屋へ向かうことにした。早速中に入ったところ、いろんな大きさや色のバイクがあった。こんなにたくさん見たのは人生で初めてだった。

 一方、ニコくんは入店して一目惚れをしたバイクがあったみたいで、じーっとそのバイクを見つめている。


「ニコくん、このバイクが気になってるの?」

「まぁ……」

「そっか! いいバイクが見つかって良かった!」


 ぼくはつい会話に夢中で、背後にとある人物がいることに気付いていなかった。


「ひゃあ!」

 

 ぼくはお店の中で悲鳴を上げてしまった。なぜなら、その人物がぼくのことを思いっきりギューと抱きしめてきたから。彼女は爆笑しながら、ぼくの顔を(のぞ)き込む。

 

「サラちゃんー! 久しぶり! 相変わらずかわいいね〜」


 聞き覚えのある声……そこには小さい頃におじさん家の隣に住んでいたオオバコお姉ちゃんが立っていた。


「オオバコお姉ちゃん!」


 思わず声を上げてしまった。懐かしい顔を見て、胸がじんわりと温かくなる。久しぶりに会えた嬉しさが込み上げてきた。

 でも……いきなり後ろからハグされるとは思っていなかったため、正直に恥ずかしいと感想を伝えた。

 そんなぼくの感想を聞いて、「本当だ。照れてるねー!」と言いながら、ぼくのほっぺたに触れる。

 

「うわー! もっちもち。何の化粧水を使ってるの?」

「オーちゃんと同じ化粧水を使っているよ?」

「オウレンのねー! だから、すべすべしてるんだ!」

「うん……」


 オオバコお姉ちゃんは、おしゃべり好きだ。だけど、小声でこう質問された。

 

「ところでさ……学校生活は無事に過ごせてるの?」

「なんとか過ごせてるよ? オーちゃんとアダムさんがいるから、色々助けてもらっているけど……」


 真実を言うと――オオバコお姉ちゃんも、おじさんやオーちゃんと同じようにぼくの正体を知っている。


 それが明らかになったのは、ぼくが8歳の時のことだ。おじさんだけでなく、オーちゃんも仕事で不在だったある日、ぼくはお隣のオオバコお姉ちゃんの家に預けられた。お姉ちゃんはいつも優しくて、その日も家の庭で一緒に遊んでくれた。

 だけど、遊んでいる途中で転んでしまい、(ひじ)をすりむいてしまった。お姉ちゃんはすぐに手当てをしてくれて、「服が汚れちゃったから着替えようね」と言って、ぼくに新しい服を着せてくれた。その着替えの途中――左胸のアザが目に入ったのだ。


 そのアザが王族の証だと、お姉ちゃんはすぐに気づいたはずだ。でも、お姉ちゃんは驚いた様子も見せず、いつも通りの明るく優しい笑顔を向けてくれた。その出来事が起きて以降も、何も変わらない態度で接してくれたお姉ちゃんを、ぼくは心から信頼するようになった。


 ただ、おじさんやオーちゃんは、オオバコお姉ちゃんが『ぼくの正体を知っている』とは思っていないようだ。この秘密を知るのは、今のところぼくとお姉ちゃんだけだ――。


「良かった。でもさ、本当に困ったことがあったら、私を頼ってね? 貴女(あなた)と同じ……数少ない天使族だからさ」

「ありがとう、オオバコお姉ちゃん!」

「もちろん。ちなみにアダムはサラちゃんのこと、知ってるの?」

「性別だけ……」

「そっか。そうだ、渡したいものがあったんだ。この手紙の中身は外で見ないで、()()自室で見てね!」

「わかった!」


 実は、オオバコお姉ちゃんもぼくと同じ天使族で、その数は世界にたったの10人しかいない。だからこそ、彼女はぼくを特別な存在として大切に思ってくれているし、まるで本当の妹のように接してくれる。

 ぼくも、そんな彼女の優しさと温かさに心から信頼を寄せ、「お姉ちゃん」と呼ぶようになった。彼女はいつだって、ぼくの味方でいてくれるからだ。

 そんなお姉ちゃんから、手紙を渡されるとは思っていなかった。ぼくはつい、笑みが溢れて、お礼を伝える。


「オオバコお姉ちゃん、お忙しい中、渡してくれてありがとう」

「サラちゃん……学校生活楽しんでね! 一応、アダムがどのぐらいサラちゃんのこと、把握してるのか確かめとくよ〜」


 そう言って、オオバコお姉ちゃんはアダムさんの手を引っ張って、出かける準備をしていた。


 一方、ぼくはニコくんと二人でバイク屋を後にした。

 ニコくんは、お気に入りのバイクが見つかったみたいで、表情にはあまり出していないけれど、なんとなく機嫌が良さそう!

 アダムさんだけじゃなく、ニコくんも自分の目標を叶えたんだ――ついにバイクを手に入れる夢を。アダムさんとニコくん……二人の達成感を共有できた気がして、なんだか嬉しくなった。

 


 さて……夕方だから、どこでご飯を食べるのかニコくんに聞いてみることにした。

 すると、彼は気になっていたお店があったみたい。


「ここが気になる」

「えっと、洋食屋さんね! 行ってみよう」


 早速、ぼくたちはその洋食屋さんの中に入ったところ、店員のおばちゃんがどうやら険しい表情をしていた。


「ごめんねぇ。うちは吸血鬼族の子はお断りしてるのよ」


 ニコくんの顔を見て、すぐにお断りの挨拶を言ってきた。


 ニコくんは、無言だけどいつもより怒りのボルテージが上がっているのか、上から思いっきり、おばちゃんを睨みつけている。

 おばちゃんは悔しいのか、「きゃー! やっぱり吸血鬼なんて、物騒よ!」とわざとらしい大声で叫んでいる。

 

 ひどい――これじゃあニコくんが悪者みたいじゃないか。

 ぼくはそんなおばちゃんの言い方に腹が立ってしまい、思わず声を上げた。


「おばちゃんのイジワル! ぼくの大切なお友達に、そんなひどいことを言うなんて……もう2度とこのお店には来ない!」


 言いすぎたかもしれないけど、どうしても許せなかった。

 周りのお客さんの視線が集まり、誰かが小声で「確かに、吸血鬼族だけで差別するのはおかしいよね」と話しているのが耳に入る。ぼく以外にも味方がいると思うと、ほんの少しホッとしたけれど――このままじゃニコくんに気まずい思いをさせてしまう!

 

 ぼくはすぐに彼の手を握り、「行こう!」と小さな声で伝えて、その場を飛び出した。

 駆け足で通りを抜けるうちに、ニコくんの手の温かさがじんわり伝わってくる。

 

 ぼくたちは、前から一緒に行きたいと思っていたファーストフード店へ向かうことにした。

オオバコお姉ちゃんは、別作『ファンタジア・サイエンス・イノベーション(FSI)』にもたびたび登場しています。ご興味があれば、ぜひそちらものぞいてみてくださいましε(ε^ω^)э

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