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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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甘い毒の受容〜黒い翼は蜜の味〜 ※第一王女→第5王子視点【※】

【※注意】身体的な接触表現あり(R-15:背後注意!)

前半は第一王女・サラ視点、後半は第5王子・シアン視点で進みます。

「もう、男装なんて、しなくていいの……?」


 縋る思いで問いかけると、第5王子は満足げに目を細め、ぼくの頬を優しく撫でた。


「あぁ。今日からドレスを着よう」

「じゃあ、ぼくは……女の子として、生きていける?」

「もちろん。君は普通の女の子じゃない。王妃になれる王女様だ……」


 甘い毒のような言葉に、体全体の力が抜けて、意識まで溶かされそうになった。

 

 目の前の青い薔薇を受け取れば、ぼくは楽になれる。


 そう信じていた。


 ――カランッ……。

 

 指先の感覚を失った弾みに、手から離れた木刀が乾いた音を立てて転がった。

 その響きに、ぼくはハッと我に返った。


(危ない! このままだと、本当に王宮に連れて行かれる!)


 いつの間にか、辺りを覆っていた霧は無くなっていた。

 すぐそばに、ぼくが大切にしてきた木刀が落ちていることは一目で分かった。

 

 急いで手を伸ばそうとしたけれど、第5王子は無慈悲にも、その木刀を爪先で遠くへ蹴り飛ばした。


「あぁ! なんてことをっ……!」

「木刀なんていらない。これから必要なのは、王女としての礼儀作法を学ぶことだ。まずは『ぼく』っていう一人称をやめるところから始めようか」

「えっ……」


 さっきまでは怖くて、泣くことしかできなかった。でも、今は違う。


 ぼくの体をまじまじと見つめてくる彼の、その傲慢で泰然とした態度に、ぼくの堪忍袋の緒が切れた。

 

「お前を娶る」だの、「俺の花嫁」だの……。

 上から目線で好き勝手な事ばかり言われて、ぼくが必死に築いてきた人生を全否定した挙句、支配しようとしてくる。

 

 本当に、本当に、嫌な感じだ!


(でも、どうしてここまで執拗なプロポーズを? もしかして……)


「ぼくのことが、す、きなの?」

「なっ!」

「あっ……!」


 しまった。あまりに不可解で、つい口に出してしまった。

 けれど、第5王子は予想外の問いだったのか、少しだけ頬を赤く染めて固まっている。


(案外、ウブなところがあるんだ……って、いけない! 今がチャンス!)


 隙を見てバイクと壁の間から抜け出そうとしたが、第5王子は不敵な笑みを浮かべ、再び、逃げ道をなくすようにぼくの手首を捕らえた。


「小悪魔な王女だ……。尚更、気に入ったよ」

「ぁっ!」

 

 手首を強く握られ、身体がピクリとも動かない。


「お願い、離して!」

「ううん、離さない」


 第5王子は眉を顰め、不思議そうな顔をして、ぼくに理由を聞き出した。


「どうして俺の言うことを聞かない? 普通、俺と結婚したくてもできないと嘆く娘の方が多いというのに……」

「結婚は無理だって、何度も言ってる! ぼくはまだ15歳だっ!」

「だが、この国の法律では、女性は16歳になれば結婚できる」

「それでも、ぼくは貴方と結婚しない! お付き合いのステップさえ飛ばして、好きでもない殿方と結婚なんて!」

「話にならないな。恋愛小説のように甘い考えだ。王族にそんな常識は通用しない」

「むっ!」


 ダメだ。冷静でいられない。

 

 相手はぼくよりひと回り年上の王子様。

 

 理屈では、到底太刀打ちできない!

 

(まずい! 今度こそ、本当にダメかもしれない……!)


 そんなぼくの内心は筒抜けだったようで。


「ようやく大人しくなった。さあ、この薔薇を受け取ってくれ……」


 恍惚とした表情で、彼はぼくを後ろから抱きすくめるように、腰に手を添えた。

 

 あぁ、囚われた……もう自由がきかない。


 でも、ぼくは諦めが悪い!


「ぼくは、同じ過ちを犯さない! 自分の身は、自分で守るんだ!」


 顎を引き、首を固め――ぼくは思いっきり、自分の後頭部を相手の額にぶつけた。


 渾身の頭突きだ。


「くっ……!」


 呻き声が聞こえた。


(ヤッター! これで逃げられる……?)


 心の中ではガッツポーズ。

 

 けれど、身体が悲鳴を上げた。


 勢い余って視界がぐらり、ぐらりと揺れて、足元が定まらない。

 

 視界が真っ白に塗りつぶされ、火花が散ったような衝撃が走り、奈落の底に突き落とされた。


 ぼくはそのまま、意識を失った――。


 * * *


 路地裏にて。


 俺はとうとう手に入れてしまった。


 第一王女を。


「予想外だったな。まさか頭突きをしてくるとは。だが、残念。俺は自他共に認める石頭なんだよ……」


 腕の中でぐったりと意識を失った彼女を見つめる。

 さっきまでの怯えた瞳も、怒りに燃える表情も今は見えない。

 

「おや、脳震盪かな?」

 

 柔らかくほんのり桜色の頬に触れる。体温がじんわりと指先に伝わってきた。

 襟元から覗く肌は、透き通るように白い。


「この感じ……君は小悪魔じゃない。本物の天使族だね」


 ドレス選びは後回しだ。


「先に王宮へ行こう。魔王様にご報告をしなければ――」


 あなたのお嬢さん――()()()()()()()()()()()()()、と。


 結婚できれば、俺は父から解放される。


 そして、この愛らしい娘を妻にできる。


「俺、結婚できるんだ……あぁ……」


 深く、熱い溜息が漏れる。


 夢にまで見た第一王女が、今、俺の腕の中にいる。


 叶えたかった夢だ。


(嬉しい。俺の妻は、母さんと同じ天使族……)


 喜びを抑えられない。

 無意識のうちに、俺の背中から悪魔族特有の黒い翼が現れ、パタパタと小刻みに揺れていた。


(魔王様に報告したら、どうしようか。新婚旅行の前に、温泉地に連れて行くのもいいな……)


 幸せな想像が止まらない。


 だが、不運にも、そんな俺の妄想を止める人物が現れてしまった。


「へぇ。悪魔族は喜怒哀楽の感情が溢れ出ると背中に羽が生えるって聞いたことがあるけど、本当だったんだ?」


 背後から、聞き覚えのあるバイク乗りの声がした。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました! 拝読させて頂いてました。 語彙力がなくて申し訳無いのですが、続きを楽しみにしてます♡素敵な作品を読ませて頂きありがとうございました。
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