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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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夏休み初日、最高で最悪の再会

 テスト期間を終え、ついに夏休みが始まった。

 みんなと切磋琢磨した結果、1-A組は一人も赤点を出さずに済んだと、キーちゃんが嬉しそうに話していた。

 しかも、実技試験の対策を頑張ったおかげか、キーちゃんの担当科目である『魔法家庭学』で、なんとぼくは満点を取ることができた!


(いや、本当に良かったー!)


 せっかくの夏休みだし、アダムさんたち実験部のみんなと遊びたいところだけれど……。

 70点未満の科目は十日間の補習が必須。アダムさん、アンズちゃん、ケイちゃんの三人は、魔法家庭学で引っかかってしまったらしい。ニコくんは補習対象外だけど、今日はあいにく外出予定があると言っていた。


 そこで、おじさんの家に帰ろうかな、なんて名案が浮かんだものの、おじさんは趣味の草野球大会の合宿中。オーちゃんも学校医の仕事で忙しいみたい。


 そうなると、最後に思いついたのが、剣術部の活動だ。

 部室に向かい、ホワイトボードのスケジュール表を確認したところ、双子のシロくんとクロくんは実家に帰省中。ダン先輩も『王族子女会議のため不在!』と力強い筆跡で書かれていた。


(ニコくんの外出って、この会議のことだったんだ!)


 腑に落ちたと同時に、結局、剣術部の部室には誰もいないことが判明した。


「残念……。あっ、せっかくだし、掃除でもしていこうかな!」


 しっかり戸締りを確認し、部室を清掃することにした。


 それから、一時間が経過した頃。


「やったー! 終わったー!」

 

 綺麗にした達成感と共に、どうしようもない空腹感を覚えた。


(お腹空いちゃった……。お昼、どうしようかな?)


 部室から出て、空を見上げる。


 今日は晴れ。

 驚いたことに、フライドポテトみたいな形の雲がぽっかりと空に浮かんでいる。

 

 その雲を見て、ぼくはあるお昼ご飯を食べたいと心に決めた。


「そうだ! ポテトとハンバーガーを食べよう!」


 思い立ったが吉日!

 学校を出て、商店街のファーストフード店へ向かった。


 本当はルルの分も合わせてテイクアウトするつもりだったけれど、お店に入ったところで、後ろからトントンと肩を叩かれた。


「えっ?」

「サラちゃん、だよな? 久しぶり!」


 振り向くと、目の前にいたのは、特別科の制服を着たエルフの青年――第8王子のエバスくんだった。


「エバスくん、お久しぶり!」

「よっ! サラちゃん、ここで食べる予定?」

「うん!」

「それなら一緒に食べようぜ。オレが奢る!」

「えぇっ?!」


 エバスくんがぼくの両肩に手を置いて、「この前、姉ちゃんを助けてくれただろ! そのお礼!」と、立て板に水の如く、捲し立てる。


「本当にいいの?」

「当たり前だろ?お互いテスト頑張ったもんな!」


 エバスくんはドヤ顔でモニターのメニュー画面を見つめ、どれにしようか悩み始めた。


 その間に、ぼくは、ベルト通しのルルキーホルダーに軽く触れて、心の中で謝る。


(ルル、ごめん。あとでテイクアウトするから、待ってね……)


 すると、ルルは羽を一度だけ横にパタリと動かして、「いいわよ」と承諾してくれた気がした。


「おーい、サラちゃんはどうする? 好きなの選んでいいぜ。 遠慮するなよ!」

「じゃあ……」


 ぼくが頼んだのは、スパイシーチキンバーガーとLサイズのフライドポテト、それにオレンジジュース。

 エバスくんの言う通り、テストを頑張ったご褒美として、ポテトは奮発してワンサイズ大きくしてみた。


 二人で二階のテーブル席へ移動し、出来立てのハンバーガーセットをテーブルに広げる。


「わーい! エバスくん、ありがとう!」

「気にしないでくれよっ! 食べようぜ」

「いただきます!」


 早速、お気に入りのスパイシーチキンバーガーを一口パクリ。

 ブラックペッパーが効いたチキンにシャキシャキのレタス。その上にピリ辛のソースが絡み合って、口の中で絶妙なハーモニーを奏でている。


「うーん! 美味しい!」

「だろ?」


 無言でバクバクと食べ進めていき、気づいた時には、お互いドリンクだけが残っていた。


「すげぇ。サラちゃん、結構食べるんだな!」

「だって、ぼくは普段、剣術部で活動してるからね?」


 手を紙ナプキンで拭いた後、ソファに置いていた木刀袋を見せると、エバスくんは「あっ!」と思い出したようにポンと手を打った。


「そういや、剣術部ってダン先輩と同じ部活か。今日会議で会ったけど、相変わらず忙しそうだったぜ。第2位ともなると大変だよなぁ。その点、オレは第8位っていう、最高に気楽で、なんだかんやで美味しいポジションだから、ラッキーなんだけどさ。それにしても、あの会議はだるいけどな!」


 エバスくんが愚痴をこぼし始めた、その時。


「あれ? エバス、お疲れさん」


 背後から、感情のこもっていない声がした。

 

 聞き覚えのある、けれど一番聞きたくない声。


(あぁ……嫌な予感しかしない)


 心臓の音が耳元まで響き、指先がサーッと冷たくなるのが分かった。

 

 恐る恐る後ろを振り返ると、そこには、ぼくやダン先輩にひどいことをした、あの王子様が立っていた。


(うわぁ……目が、合っちゃった!)


「おっと、君は――」


 彼はニヤリと笑うと、逃げる隙も与えず、グイッと距離を詰めて、ぼくの隣に座った。

 同時に、鼻につく煤臭いタバコの匂いが、ツンと押し寄せてきた。

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