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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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クールな第6王子

明けましておめでとうございます!

【※注意】生理表現有り

 冗談を言わなさそうな彼がぼくの性別について明言するなんて……思ってもいなかった。本当は「何を言ってるの?」と言い返さないといけないのに、それもできなかった。ぼくはパニックになっていた。


(ニコくんに女性だとバレてしまった。どうしよう! なんでだ……)


 ぼくは彼の前でバレるようなことをした記憶が断じてない。どこまでぼくの秘密をわかっているのか……怖い。


 でも、こうなったら、ぼくの方も聞くまでだ。


「ごめん、ぼくも見てしまった。ニコくんは……()()()なの?」

「そうだな、一応。君と同じでオレも隠し事をしている」


 ぼくの目線に合わせて、彼はしゃがみ、冷静に淡々と回答する。ぼくと同級生なのに……なんか大人びているし、全く動揺していないのだ。

 

 いや、感心してる場合じゃない! ぼくは王子様に女性であること――いや、それよりも()()()()だとバレるわけにはいかない。


 しかし、ぼくはずっと考えていて気づいていなかった。

 知らぬ間に彼はぼくの手を引っ張った後、軽々と持ち上げて、椅子に座らせてくれた。


「ありがとう……」

「男にしては華奢(きゃしゃ)すぎると思っていたが、ここまで細いとは……やっぱり()()()なんだな」


 そう言いながら、ぼくの腰に手を回す彼。触られると思っていなかったので、「きゃあ!」と悲鳴を上げてしまった。


(これ以上触られるのはマズイ……。女性ってバレてしまう、いやもうバレちゃってるのか……)


 なんでわかったのか悔しいだけでなく、彼に触れられたことが恥ずかしくなって、色んな意味で震えながらも聞いてみることにした。


「なんでぼくのこと……いつから気付いたの?」

「最初から気付いていた。その匂いで……まぁ普通の吸血鬼なら全然分からないだろうけど。オレ自身、魔力が多い吸血鬼だから、鼻が利くんだ。その……女性は色々あるだろう」

「えっ、何それ? 鼻が利くって、そこまでわかるの? ぼく、くさいの?!」

「くさくない。でも、オレは君がメガネを掛けた男子生徒に相談しているところを見た……。その時、生理の血で汚れた椅子を持って来てただろう。そこから女性の匂いがしていた」

「うぅ……」


 あの時、アダムさんが「見られたらまずい」と機転を利かせて、すぐぼくの部屋へ案内したけど、そのわずかな間に椅子が汚れているところを見られてたんだ……。

 

 ぼくは後悔する。焦ってしまって、周りが見えていなかった自分の甘さに。

 

 それに「()()()()()」の言い方が直球過ぎて、本当の自分は変な匂いをしているのではないかと怖くなってきた。どんな匂いなのか深掘りすることにした。

 

「くさくないって……いい匂いではないってこと?」

 

(ショック……。生理期間特有の匂いが出てるってこと? あとでオーちゃんに相談してみよう……)

 

 下を向いて落ち込んでいるぼくの姿を見て、彼は嘘偽りなく、追い討ちをかけるようにまっすぐな表現でこう告げた。


「そういうわけではないさ……。甘くて、美味しい匂いだ。吸血鬼は血に貪欲だからさ」

「甘くて美味しい匂い?!」


(何それ、ぼくは食べ物とかエサってことなの? 恥ずかしい……)


 もっと言い方をオブラートに包んでほしかったけど、火の玉ストレート並みのキレッキレな回答をされてしまった……。


 そうだ、今のは聞かなかったことにしよう。それに口止めをしないといけないと思い、彼にお願いをする。


「あっ、話変わるんだけど。その誰にも言わないで……ぼくの性別のこと! ぼくもニコくんのことは誰にも言わないし、内緒にするから!」

「あぁ、誰にも言うつもりもない。でも気をつけろ……吸血鬼でオレより強い人物に会ったらバレると思った方がいい」

「わかった! ありがとう、教えてくれて。なんか……お互いに大きな秘密を抱えてたんだね。これからも仲良くしてね! とりあえず、ぼくをここから出して……って言いたいところだけど……」


 ぼくは詰んでしまった……なんと腰が抜けてしまって、立つこともできなさそうである。なぜなら、「()()()だろう」なんて堂々と対面で言われたことが一度もなかったから、言われた時は雷が落ちたように衝撃を受けてしまった。

 

 一方、彼は「歩けないのか?」とキョトンとした顔をして、ぼくに聞いてくる。


(ニコくんのせいで、こうなったのに……)


 すぐには動けなさそうなので、「先に教室へ戻って……ぼくは、しばらくここにいるから……」と彼の顔を見ながら、ちょっと不服そうな顔をして伝える。


 彼はぼくを置いて一人で戻るだろうと思っていたけど、予想外な対応をされた。


 なんとぼくを担いだ――()()()()()()で。


「ニコくん、ダメ! この姿を誰かに見られたら勘違いされちゃう!」

「今授業中だから……。それにオレが君をこうさせた。責任は取る――今から保健室に連れて行く」


「いやだー!」と抵抗したけど、そのまま彼に抱っこされたまま、保健室の入り口まで辿り着いてしまった。

 でも、運が良いことにこんな恥ずかしい姿は誰にも見られずにここまで来ることができた……。


「ここで降ろして!」と言ったけど、ニコくんは思いっきりドアを開けた。そして、目の前にはオーちゃんがいた。オーちゃんはコーヒーを飲んでいたけど、ぼくたちを見て、そのコーヒーを吹き出してしまった。


「あぁ……! 見ないで……!」と思わず、自分の手で顔を隠す。オーちゃんは「サラちゃん! どうしたの?」とタオルで汚れたところを拭いてから、すぐにぼくのところへ来てくれた。


「実は腰が抜けてしまったんだ……」と正直に伝える。


「あなた……サラちゃんをここまで連れて来てくれて、ありがとう。私がおんぶするから……ここで大丈夫よ?」

「いや、大丈夫です。軽いんで、オレが()()をベッドまで連れて行きます」


(えええええ! ニコくんってば、ぼくのことを『彼女』って言った……?!)


 オーちゃんは無言だ……。

 だけど、とても圧を感じる……これはまずいかもしれない。

 

「あなた! サラちゃんに何したの? 腰が抜けるって言うのは、大きなショックを受けると起きるのよ! それに()()と言ったわね。サラちゃん、何をされたの?」


 どうしよう――オーちゃんが怒ってしまった。


 どこから言えばいいんだろう? 「更衣室で鍵を掛けられて、閉じ込められそうになったんだ!」なんて言ってしまったら、大噴火してしまう……。それにぼくは彼に壁ドンだけでなく、キスもされそうになったことを思い出す。思い出した瞬間――顔が林檎の如く、真っ赤になってしまった。


「きゃー! サラちゃんが真っ赤な顔をしているじゃない? どこを触られたの……?」


 オーちゃんによる怒涛の質問攻めが始まる。ぼくもパニックになり、目がバツマークになってしまう。なんてカオスな状況なんだろう。

 それにまだ抱っこされた状態だった。オーちゃんがぼくの腕をさすろうと手に触れる直前、なんとニコくんの方が先にぼくの腕をギュッと握ってきたのである。


(どうして〜?!)


「先生、サラが困ってる。オレはこのままでもいいけど、横になった方がいいんじゃないか?」

「確かに、あなたの言う通りね。お気遣いありがとう、教室に戻って大丈夫よ。私が面倒を見るから、安心して? 私はサラちゃんがこの学校に来るまで一緒に住んでいたから、家族のような関係なのよ」

「家族なのか……? あんた」


 ぼくは驚いてしまった。ニコくんがオーちゃんのことを「()()()」と言っている。どうして怒らせるような言い方をしちゃうの? それにお互い譲らないから、緊張した状態が続いている……。


「あんたじゃないわ。私には『()()()()』という名前があって……ここの学校医よ?」

「んじゃ、オウレン先生。聞きたいことがあるから、理由を言うんだ。なんで女の子に男の恰好をさせているんだ?」

「あなたッ……! サラちゃんの身体を見たの?」


 とうとう二人は火花を散らし始めた……。

 ぼく自身、ケンカなんてしたことがない。それどころか、誰かが言い争うのを見るだけでも息苦しくなるほど苦手だ。


(最悪だ……。それに、ぼく……なんだかフラフラする。貧血かもしれない……二人が何を言い合っているのか、全然頭に入ってこない……)


 目の前で交わされる言葉がだんだん遠のいていく中で、ぼくは少しだけ、前向きに考えることにした。


(ニコくんの言い方だと……ぼくの秘密、性別のことしか知らなさそうだ。それなら、まぁ……まだマシかも)


 性別のことだけなら、まだいい。もし、ぼくが【第一王女】だということまで知られてしまったら……それだけは絶対にダメだ。


 18歳になるまで、絶対にバレてはいけない。

 それが亡くなったお母さんとの約束であり、おじさんたちと家族として一緒にいられる条件なのだから。


 そんなことを考えているうちに、ぼくの視界はどんどんぼやけていった。疲れと安心感が重なり、気がつけば、ぼくはすっかり眠りに落ちていた――まるで赤ん坊みたいに、ニコくんに抱っこされたままで。

オウレン先生「ウソ……! 寝ちゃったわ?! 私たちの声量にもめげずに寝れるなんて……天才ね」

ニコ「天才じゃなくて、才女の方が正しいのでは?」


今年もよろしくお願いいたします。

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